フランスの南極観測基地は、南極大陸や南極地域の島々に複数存在する。

今回は、そのうちの1つ、南インド洋・南極地域にあるケルゲレン諸島・ケルゲレン島の基地でコーディネーターとして働く久世香哉さんに基地の様子について聞いた。

久世香哉さん
久世香哉さん
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フランス基地のコーディネーター

ケルゲレン諸島は、ケルゲレン島を中心に約300の島で構成されていて、フランスの基地はそのケルゲレン島にあるという。基地には、鳥類や生物の研究者、地震の学者などが常駐して、日々研究している。

久世さんは、こうした研究者が野外活動を安全かつ円滑に行えるよう準備や行動スケジュールを組むなどコーディネーターとしての業務を担っている。

具体的には、基地を出た後、どのシェルターを経由するか、持っていく食材や機材をどうするかなど細かなオペレーションを取りまとめる作業が主な任務だ。

持っていく食材や機材をどうするかなど研究者の野外活動のオペレーションを取りまとめる作業をするという
持っていく食材や機材をどうするかなど研究者の野外活動のオペレーションを取りまとめる作業をするという

豊かな生態系

ケルゲレン島には、アルバトロス(アホウドリ)、セイウチ、キングペンギン、岩とびペンギン、そして島の固有種・ウミツバメが生息しているという。

久世さんが、休憩時間に基地の目の前の海で泳いでいると、セイウチの赤ちゃんが物珍しそうに近づいてくることもしばしばあるなど、動物たちはとても身近な存在として基地の周りに生息しているそうだ。

ウミツバメのひな
ウミツバメのひな

フランス基地の食事メニューは?

日本の昭和基地には、年に1回、日本から砕氷艦「しらせ」が燃料や食料を昭和基地に運んでいるが、フランスの場合は年に4回、本土から基地に補給が行われるそうだ。

基地の人数については、1年を通して越冬するのは45人、南極の夏の間だけ90人に膨らむそうだ。

基地の食事は、もちろんフランス料理とワインが中心だが、時には久世さんが、魚の刺身やラーメンなどといった日本料理を振る舞うこともあるそうで、とても基地の仲間からも好評だという。

ちなみに、醤油は基地の食材の定番として食卓に常備されているとのことで醤油文化がフランスの南極基地まで行き渡っていることに少し驚かされた。

基地の食事は、フランス料理とワインが中心 釣れた魚で料理することも
基地の食事は、フランス料理とワインが中心 釣れた魚で料理することも

基地に1年滞在 悪天候トラブルで…

2021年11月にケルゲルン島の基地に着任した久世さんは2022年12月22日、約1年間の任務を終えてフランスに帰国する。

これまで、印象に残っているのは、『悪天候によるトラブル』だという。

ケルゲレン島の天気は急変するため、野外活動中に、天気予報ではなかった“暴風雨”が急に吹き荒れ、行手を阻まれ遭難しかかけたことがあったそうだ。その後、なんとか無事シェルターに辿り着いたという。

また、土砂降りの雨が降った後、道に大きな穴が空いているのに気づかず、穴に落ちてしまうハプニングもあったとのこと。

ケルゲレン島の天気は急変するという
ケルゲレン島の天気は急変するという

野生化した猫による影響も

南極の島、ケルゲレン島で、地球温暖化の影響や人が持ち込んだ“猫”による被害が見られているという。

久世さんによると、昔は大きかった氷河が、今ではとても小さくなっていて、科学者たちの間でも温暖化の影響が顕著に見えはじめていることについてよく話題にのぼるそうだ。

また、補給船を介して大陸から渡ってきたネズミが、島で繁殖したため、ネズミ対策として猫が島に持ち込まれた。しかし、その後、野生化してしまい、アルバトロスのひなを食べてしまうなど島の生態系にインパクトを与え始めているという。

アルバトロス
アルバトロス

世界で一番遠いところで働きたい

「世界で一番遠いところで働きたい」との気持ちからケルゲレン島での仕事を選んだ久世さん。南極の島での1年に及ぶ暮らしで、自然と調和した生活の素晴らしさを学んだという。

次の仕事はまだ決めていないとのことだが、「日本に帰ったら、居酒屋で美味しいビールを飲みたい。チーズバーガーにかぶりつきたい」と笑顔で話してくれた。
 

〈久世香哉さん〉
東京生まれ。フランス人の父と日本人の母をもち、パリで小中高等教育を受け、カナダのトロント大学を卒業。デンマークの海運会社勤務を経て、2021年10月フランス政府による定期募集で、フランス領ケルゲレン島に鳥類・哺乳類研究のフィールド・コーディネーターとして赴任。