安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の信者の子供たち、いわゆる“宗教2世”が置かれている現状に注目が集まっている。
「恋愛することすら許されない」。宗教2世として生きる男性などへの取材から、2世が抱える深刻な悩み、そして、公的支援が届きにくい実態が見えてきた。

恋愛や趣味などあらゆる場面で干渉…“宗教2世”が抱える悩み

佐藤さん(仮名)、22歳。両親は旧統一教会の合同結婚式で出会った。生まれた時から信者、「祝福2世」と呼ばれている。

佐藤さん(仮名・22):
まだまだ宗教2世の苦しみは知られていないし、理解もされてない。何なら世間で山上容疑者と同一視して、2世は危険だと言われてしまうことすらあるようなので、それは違うと訴えたくて、今回取材を承諾しました

両親は教団に多額の献金を重ね、ガス代の支払いも滞った。しかし、貧困よりつらい問題があった。

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佐藤さん(仮名・22):
宗教2世が一番苦しんでいるのが、金のことよりむしろ、自由に恋愛ができないとか。普通の人ならしていいことが、ことごとく禁止だったのがすごくつらいこと

両親は教団の教義を理由に、恋愛や趣味など日常生活のあらゆる場面で干渉してきた。

佐藤さん(仮名・22):
母親が勝手に自分の本棚を見て「すごく気持ち悪い内容だから捨てといたよ」と言われて、それがすごくつらかった。母親と父親は好きだが、普通の家庭に生まれたかった

宗教的理由の「虐待」 社会で認識し行政支援を

“宗教2世”の苦しみを、社会がどのように受け入れていくのか。

社会福祉士の松田彩絵さんは、数年前から、仙台を拠点に「宗教2世」たちと行政支援をつなぐ取り組みを行っている。

宗教2世を支援している 松田彩絵さん:
カルト問題、2世問題は既存の制度ですべて対応できる。生活保護や高等教育に関する就学支援新制度という、大学に通うための奨学金もある。住民票や戸籍の附票を誰にも見られないようにブロックをかける方法もあるし、色々な制度を組み合わせていけば暮らせる

松田さんは、同じく仙台で宗教2世の支援を行う、斎藤篤牧師などと連携。佐藤さんに関しても、いわゆる“宗教的虐待”として生活保護の受給に繋げることができた。
しかし…。

日本基督教団 仙台宮城野教会・斎藤篤さん:
佐藤君のように、宗教的理由で、親から虐待を受けるケースは理解されにくい。宗教プラス家族の問題は「それはもう家の問題だから、あなたの家庭で解決すること」と説諭されて、そのまま返されてしまうことがある

宗教2世を取り巻く環境について、自身も元・旧統一教会の信者で、現在は脱会を希望する人のサポートを行う、東北学院大学の竹迫之氏は、次のように指摘する。

東北学院大学・非常勤講師 竹迫 之さん:
基本的に、カルトに対する偏見の目を持たないようにすることは大事。カルト団体に出自を持つとはいえ、普通の子供なわけですから。あの事件が起こって、ますます自分が2世と言いづらくなったと

竹迫氏は、宗教をめぐるトラブルを家庭問題と捉える偏見を、社会全体で改める必要があると強調する。

東北学院大学・非常勤講師 竹迫 之さん:
社会的な偏見がまず無くならないことには、実はこういう団体に巻き込まれて、家族中で苦しい思いをしているという相談そのものが、そもそもできない。
カルトと宗教の適切な知識を、社会全体に普及させることがまずは第一

同じ境遇で生きる人へ 「理解し助けてくれる人はいる」

今回、取材に応じてくれた佐藤さん。いま、同じ境遇で苦しむ宗教2世に伝えたいことがあった。

佐藤さん(仮名・22歳):
誰も理解してくれないと思っていた。だけど実際に理解してくれる人はいて、助けてくれる人がいるので、そこはあきらめずに生き延びてほしい

(仙台放送)