宮崎・綾町が誇る大自然の魅力を紹介する。町民が約半世紀にわたって守ってきた国内最大級の照葉樹林だ。

40年前から行われている復元プロジェクト

光輝く照葉樹の森。
国内最大級の面積を誇る綾町の照葉樹林は、シイやカシなど一年中緑の葉をつける「常緑広葉樹」で構成され、多様な生き物の暮らしを支えている。

この記事の画像(16枚)

植物社会学・植物生態学の専門家 河野耕三さん:
人間は、森と共に何千年と住み続けてきた。そういう本来の森の姿に長い時間をかけて戻していく

約40年前から綾町の自然保護活動に取り組む河野耕三さん(74)。
7月22日、河野さんと息子で役場職員の円樹さん(42)が案内してくれたのは、県道沿いのスギ林。

植物社会学・植物生態学の専門家 河野耕三さん:
(ここは)元々スギがいっぱいあった森

植物社会学・植物生態学の専門家 河野耕三さん:
それを間伐して、まわりからドングリがやってきたり、鳥が木の実を運んできたり、そういったのが自然に発芽して大きくなって、今これくらいになっているんですよ

ここで進められているのは、人工林の一部を伐採し、照葉樹が自然に発生するのを促す照葉樹林の復元プロジェクト。
伐採された場所には、十数年の歳月をかけて少しずつ照葉樹が育ち始めていた。

植物社会学・植物生態学の専門家 河野耕三さん:
スギだけではなく、いろんな種類の植物が生えてくる。そうすると動物や昆虫が入ってきて、非常に豊かな生物多様性が高い森になる。これが今、世界が求めている森

2012年7月にユネスコエコパークに登録

綾町ではかつて林業が盛んだったが、1960年代以降は照葉樹林の保護活動に力を入れるとともに、有機農業など自然の恵みを生かした産業が発展。
こうした取り組みが評価され、2012年7月、綾町を中心とする地域がユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録された。

植物社会学・植物生態学の専門家 河野耕三さん:
自然との共生の地域づくりをしたことによって、憧れている人たちが日本全国から来た。その人たちで、自然減で減っていく人口が埋められて非常に珍しい町になった

綾 ユネスコエコパーク推進室 河野円樹さん:
地元の自然を生かしながら、そこで暮らしていくような形を今後どうすれば続けていけるのかを、みんなでいろんな人が関わって協力しながら、知恵を出しあいながら進めていくことが求められていると思います

綾の好きなところは「自然」

半世紀にわたって守られてきた豊かな照葉樹林を、次の世代に引き継ぐ取り組みも。
7月14日、綾小学校の4年生がやってきたのは、綾神社近くの自然探検コース。広葉樹が生い茂る森を散策しながら、綾の自然やそこに棲む生き物の特徴を観察した。

小学生:
うわ、やば。でかっ。20メートルだってさ。(何て木ですか?)綾のイチイガシ!

児童たちは、授業を通して森の大切さを学んだよう。

児童:
いろんな生き物を見つけられて楽しかったです。手より大きい葉っぱがたくさんあって、びっくりしました

(Q.綾のどんなところが好き?)
児童:
自然。ごみを捨てないとか、植物とか生き物に意地悪をしないとか、森や自然を守っていきたいと思いました

綾 ユネスコエコパーク推進室 河野円樹さん:
人が変わっていく、自然環境も変わっていく中で、昔からそこに住む人たちの暮らしが自然に支えられてきているものだと、しっかりと子どもたちにも伝えていく。その成果が次の10年、20年先につながってくると思います

ユネスコエコパーク登録から10年。自然と共に生きる町は世界のモデルになれるか。
照葉樹林を守る取り組みは未来へと続く。

綾町では、半世紀をかけて照葉樹林を守り、自然と共に生きる礎を築いてきた。
自然と向き合うその取り組みは数十年、数百年の期間がかかる。自然の大切さを学んだ子どもたちが、豊かな照葉樹林をどう引き継いでいくか…将来に期待したい。

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
テレビ宮崎

宮崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。