ドクターヘリの1日に密着するシリーズ。最終回は、安全な運航に欠かせない整備士と、ドクターやナースを患者のもとに運ぶヘリの操縦士について伝える。

機体をいつでも飛べる状態に整える

整備士・浅見眞さん:
飛行中に落とさない。アンテナも、例えば折れて地上に落下すると大変な事故につながるので、しっかりと取り付けられているかというのを点検しています

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いつ入るかわからない出動要請に対応できるよう、きめ細かくヘリを点検。整備を担当するのは、運航会社から派遣された専門家で、この日担当する浅見眞さんは、全国各地で20年以上「ドクターヘリ」の安全な運航を支えている。

整備士・浅見眞さん:
時間が勝負なので、効率よくドクターを運ぶということ。要請があって、離陸までの時間をなるべく短縮…ただ短縮すると、今度はミスが発生する可能性があるので、その辺のバランスが大変難しいところです

出動の際もヘリに乗り込み、機内では操縦士の補佐を。現場ではストレッチャーで患者を運ぶなど、ドクターやナースのサポート役も務める。

また、機内に搭載された医療器具の収納ケースは、整備士の手作り。迅速な治療につなげる環境づくりも仕事の一つだ。

整備士・浅見眞さん:
一番大事なのは、機体をダウンさせないこと。年間を通して、いつでも飛べる状態を維持するのが私の使命ですから、そこを確実にやっていくということですかね

天候を把握 安全で迅速な運航をする操縦士

ヘリを安全に運航し、ドクターとナースを患者のもとに運ぶ操縦士。要請が入ったとき、出動できるかどうかを素早く判断するため、常に天候を確認し、出動を指示するCS(コミュニケーションスペシャリスト)と共有する。

操縦士・佐藤康一さん(CSとの会話):
湯沢はランデブーポイントを見てという感じですかね、お願いします。横手・湯沢の手前くらいまでなら、いまは大丈夫かなという感じですね

秋田・能代市出身の佐藤康一さんは、2022年5月からドクターヘリの操縦士として働いている。

操縦士・佐藤康一さん:
人を助けたい・助けるような仕事をしたいと思っていましたので、ドクターヘリのパイロットを目指しました。ドクターヘリの場合は、巡航速度は時速200kmを超えますので、そのスピードで障害もなく真っすぐ飛んでいけると、より早く患者へドクターを接触させることができると思います

そのスピードはというと、男鹿市までは約15分。病院から最も遠い十和田湖の近くまでは30分ほど。患者のもとに着くまでの時間は、救急車の3分の1から4分の1で、距離が遠ければ遠いほど、その速さは明らかだ。

操縦士・佐藤康一さん:
まずは安全に、事故を起こさないように気を付けて飛行することが大前提ですが、気持ちとしては、故郷に恩返しができるという機会を与えてもらって、非常にうれしく思っております。いち早く現場に到着できるように、こちらも準備していきたいと思います

救命救急の切り札ともいえるドクターヘリ。緊急の離着陸を繰り返す運航はリスクを伴うが、専門家の知識と技術によって安全な運航が支えられている。

秋田県内での出動件数は、ここ数年、年間300件ほど。運航が始まってから2021年度までに約2800件の出動があったが、事故は確認されていない。そこには、整備士や操縦士の努力がうかがえる。

3回にわたって伝えてきたドクターヘリの1日に密着。ドクターヘリが、日本の救急医療を支える一つの手段として、私たち県民に安心を与えていることは間違いない。

ヘリの安全な運航は、技術だけでなく、運航に関わるクルー全員が抱く「人の命を救いたい」という意識のもとで成り立っていることを、改めて感じた。

(秋田テレビ)

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