「空飛ぶ救命救急室」ドクターヘリが、秋田市の秋田赤十字病院に導入されてから2022年で10年。ドクターヘリの1日に密着した。
患者の治療にあたるフライトドクターとフライトナースについて伝える。

一刻を争う現場…患者がいる場所が「処置室」

道路下の谷に転落した車。現場で活動しているのは消防隊員だけではない。フライトドクターとフライトナースも「救急隊」の一員だ。

提供 秋田赤十字病院
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崖の下での治療…。命を救うため、一刻を争う状況では患者がいる場所が「処置室」になる。

患者の命に危険が及ぶ状態になってからの時間と死亡率の目安を示した「カーラー救命曲線」を見てみると、心臓が停止してから約3分、呼吸が止まってから約10分で死亡率が50%になることがわかる。

秋田赤十字病院 フライトドクター・栗原茉莉子さん:
限られた資材と医療機器を使って、方針を決めて応急処置をして、各専門医に早くつなげるというのが仕事だと思います

フライトドクターの栗原茉莉子さん
フライトドクターの栗原茉莉子さん

“命をつなぐバトン”専門医に渡すフライトドクター

現在、秋田赤十字病院で「フライトドクター」として働いているのは6人の医師。このうち栗原茉莉子さんは、秋田大学を卒業後、救急医として働き始めた。

患者のもとに駆け付けると、即座に初期治療を開始。「命をつなぐバトン」を専門医に渡すため、ヘリで移動する短い時間に、自身の経験とわずかな情報を頼りに最善の治療方法を考える。

提供 秋田赤十字病院
提供 秋田赤十字病院

秋田赤十字病院・藤田康雄医師:
ヘリコプターの中は音がうるさいので、患者さんと一切会話ができなくなります。ヘリに入ってしまうと、私たちの唯一の頼みはこのモニターになる

声が聞こえない機内、唯一の頼みはモニター
声が聞こえない機内、唯一の頼みはモニター

機内には、医療機器や医薬品が搭載されているものの、病院とは違い、空間も時間も限られる。普段は救急外来で患者の治療にあたっていて、日常の業務で積み重ねた経験が、一刻を争う現場での判断に生きている。

機内での治療は空間も時間も限られる
機内での治療は空間も時間も限られる

フライトドクター・栗原茉莉子さん:
各地域で専門の先生たちが踏ん張って診療しているので、適切な知識を持って、素早く判断して、専門家の先生にすぐにつなげられるような研さんを、もっと積みたいと思っています。そういう医師になりたいです

知識・技術と“患者に寄り添う”心も…フライトナース

フライトドクターとともに、患者のもとへ向かうフライトナース。秋田赤十字病院では、白鳥高広さんをはじめ5人の看護師が交代でヘリに乗っている。

秋田赤十字病院 フライトナース・白鳥高広さん:
最初の治療を要する場所も違いますし、医療者の人数も違いますので、その都度、臨機応変に、最善の方法を展開していくのが大変なときがあります

フライトナースの白鳥高広さん
フライトナースの白鳥高広さん

フライトナースは、現場の状況を素早く把握し、何を優先し、どのように動くか判断する。救命に関する知識や技術、無線に関する資格など高い専門性を兼ね備えているだけではなく、けがや病気に対し不安を抱く患者や家族に寄り添う力も求められる。

フライトナース・白鳥高広さん:
病気でつらい状況にある患者さんが、地上ではなく上空を移動するということに不安を感じていると思います。体をさすったり、手を握ったり、少しでも患者さんに寄り添いながら、安心して着陸まで迎えられるように関わっています

救命は時間との戦い。1分1秒が争われる場面で1人でも多くの命を救うため、時には自らも危険と向き合いながら最前線で患者の命をつないでいる。

ドクターとナースが現場に着くことは、患者が病院に到着し、治療を受けることと同じ意味を持つ。

秋田県は広く、都市部と山間部などでの医療格差が課題となっている。ドクターヘリがこの医療格差を埋める一翼を担い、患者が生活を営む地域で必要な医療を受けられることは、患者・家族の安心にもつながっている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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