8月始めに公開され、全国のミニシアターで話題となっている映画がある。タイトルは「とら男」。
題材となったのは、ちょうど30年前に石川・金沢市で発生して迷宮入りとなった「スイミングクラブ女性コーチ殺人事件」だ。

30年前の未解決殺人を題材に映画化…主演は元刑事
映画のワンシーン 主人公のとら男:
まあこの辺の人は、おそらく知っていると思うんだけど、ちょっとメタセコイアが絡んだ事件があってね…

石川・金沢市の金沢シネモンドで、8月20日に公開された映画「とら男」
かつて担当して未解決となった殺人事件を悔やみながら、孤独に暮らす元刑事。そこへ、東京から植物調査に来た女子大生との偶然の出会いから、忘れられた事件を2人で再捜査していくというストーリーだ。

監督は石川県白山市出身で、この作品が初の長編映画となる村山和也監督(40)

村山和也監督:
小学校の頃にグリーンパークって公園でよく野球をしていまして、そこが殺害現場になった事件があの事件で…不思議だったのは「なんで未解決なのかな」っていうのは、漠然と思っていまして…
監督に「なぜ未解決」と思わせた事件とは?

今からちょうど30年前の1992年10月1日。金沢市で当時20歳のスイミングクラブの女性コーチが勤務先の駐車場の車内で何者かに首を絞められ、殺害された状態で発見された。

石川県警は捜査員のべ6万人を投入し、6000人以上から事情を聞いものの犯人逮捕には至らず、2007年に時効が成立。

当時、石川県警の刑事としてこの事件を担当していたのが、映画の主演も務めた西村虎男さんだ。

映画の根底に貫かれる「執念」と「無念」
村山監督がこの事件の映画化を考え、西村さん本人に会った際、70歳手前でも衰えない、この事件に対する情熱と存在感に圧倒されたと言う。

村山和也監督:
何かえらい「カメラ映え」する方だなと思って…虎男さんが演技しなくてもいいような環境をこっちで周りが固めれば、自分の知っていることは喋れるとは思ってたので、事件のことだったり…というので、西村虎男さん主演ということで作ったっていう感じですね

映画のワンシーン とら男:
私らに訴えたかったんだろうね。殺された場所を教えるっていう形で…

現実とフィクションの境界を曖昧にしたまま、映画は展開していく。
しかし、根底を貫いているのは、被害者のためにどうしても事件を解決したかったという「とら男」の執念と無念だ。

村山和也監督:
何しろ主演の方は、本物の元石川県警の方なんで、石川県警の方が映画に出てまでも、解決はできないにしても、何かを伝えたかったっていう思いがこの映画を作らせたと僕は思っているので、ぜひ石川県の方には見ていただきたいなと思っております

8月20日、金沢市での公開初日。村山監督と主演の西村虎男さんが舞台挨拶に立った。

西村虎男さん:
私の記憶では、監督から「出演してくれ」というオファーを聞いた覚えが無い。私自身は、監督の映画作りには協力したいと言う気持ちはずっと前からあったので、やってみるかと。そういう気持ちで乗っかったというか、決意をした

村山監督は「時効になった以上どうにもならない問題ではあるが、遺族を含めて苦しんでいる人はたくさんいる。この映画を見ることで、『未解決事件』について改めて考えるきっかけにしてほしい」と話している。

(石川テレビ)