警察が飼育する「直轄警察犬」を、鳥取県警が2022年度、初めて導入した。
犯罪捜査や行方不明者の捜索などに欠かせない警察犬。鳥取県内では、年々増加する出動要請に十分応えられていないのが現状だという。
その背景、そして、警察犬をめぐる課題について取材した。

人間の1億倍!犬の優れた嗅覚を捜査に活用

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鳥取市の鳥取県警察学校で訓練を受けているのは、警察犬・ドリー。現在3歳のメスのシェパードで、武器は、そのするどい「嗅覚」だ。

鳥取県警・松塚春輝さん:
このにおいがついていない布を持っていただいて、においをつけていただきます。そのにおいをたどって、ドリーが探し当てていきます。靴の中に布を入れてもらっていいですか?足で踏んでもらうと…

そう促され、記者の靴の中に、布を入れる。

本田航太 記者:
これでにおいがつくわけでしょうか

鳥取県警・松塚春輝さん:
はい

布ににおいをつけ、ドリーから身を隠す。
ドリーがその布を嗅ぎ、においを覚えたら捜索開始だ。

鳥取県警・松塚春輝さん:
探せ!そうそうそう!嗅いで、嗅いで!

本田航太 記者:
うわ、すごいですね。こっち来ましたね。わーすごい!見つかりました!

見事に記者を探し当てた。

人間の1億倍ともいわれる犬の優れた嗅覚を、捜査に活用する。警察犬は「鼻の捜査官」とも呼ばれる。

鳥取県警・松塚春輝さん:
例えば、犯人が現場から逃げた時に捜査する犯罪捜査の分野や、行方不明者の捜索などで効果を上げられるよう訓練している。ドリーの場合は、警察で管理する「直轄警察犬」です

ドリーは、2022年4月に採用された、鳥取県警では初めての「直轄警察犬」。これまでに11回、捜査・捜索の現場に出動している。

警察犬にも種類が…「直轄警察犬」と「嘱託警察犬」

警察犬は、ドリーのように警察が飼育する「直轄警察犬」と、民間が飼育する「嘱託警察犬」の2つに分けられる。
鳥取県警の警察犬はこれまで「嘱託」。6月に引退した「広報犬」のカリンとフーガも「嘱託警察犬」だった。

2022年6月に引退した「広報犬」のカリンとフーガ
2022年6月に引退した「広報犬」のカリンとフーガ

鳥取県内では、2021年に警察犬が出動したのは24件で、ここ数年は減少傾向にある。しかし出動要請の件数をみると、2021年は101件と過去5年間で最多だ。
実は、要請があっても、警察犬が出動できないケースが増えているのだという。

鳥取県警・松塚春輝さん:
高齢者の行方不明も増えているので、そういった需要が増えているのが現状

要請増加の要因のひとつが、行方不明者の増加だ。
認知症などにより、高齢者の「徘徊」が増えているとみられている。今後、高齢化がさらに進めば、警察犬の出動機会も大幅な増加が見込まれる。
ただ、こうした現場に嘱託警察犬が出動するためには、飼い主や民間の訓練士の協力が不可欠で、実際に調整がうまくいかず、出動できなかったり、初動が遅れたりしたケースも少なくないという。

そこで鳥取県警は、2022年度に嘱託警察犬を9頭採用したほか、事件や捜索への迅速な対応を期待して、直轄のドリーも採用。
全国でみると、28の都道府県で「直轄警察犬」を導入している。

費用面での負担が大きく「なり手不足」も

増加する出動要請に対応するため、「嘱託警察犬」をさらに増やすことも考えられるが、それには課題があるという。

鳥取県警・松塚春輝さん:
警察犬の「なり手」も年々減っているし、嘱託警察犬の指導手や警察犬自体も数が減っている。また、大型犬を飼う人が少なくなっていることも「なり手」不足に影響している

警察犬の「なり手」不足。
鳥取県警の「嘱託警察犬」は現在、2022年度に採用した9頭で、5年前の半分近くにまで減っている。

警察犬の育成には通常2年程度かかり、飼育や訓練にかかる経費は年間約60万円。その全額を飼い主が負担している。
鳥取県警の場合、出動すると、日中は1時間あたり3,000円、夜間は4,500円の謝金が支払われるが、費用面での負担が大きく、「なり手」不足の一因になっているという。

鳥取県警・松塚春輝さん:
犬種を特定しているわけではないので、少しでも多くの方に警察犬を目指してほしい

高齢化が進み、出動要請の増加もさらに見込まれる中、頼みの「鼻の捜査官」をどのように確保するのか、早急な対策が求められている。

(TSKさんいん中央テレビ)

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