2022年7月、男性が流されて死亡する事故が2件続けて発生した川がある。岐阜県関市の板取川(いたどりがわ)だ。
板取川は今夏も既に2人が死亡するなど、水難事故が多発している川。専門家と共に調査して原因を探ると、「縦渦」発生やコンクリートブロックなど、特に危険箇所な場所が複数あった。

死亡事故が続発… 14年間で22人が死亡

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2022年7月17日、岐阜県関市の板取川で「友達が川に流された」と消防に通報があった。流されたのは名古屋市に住む30歳の男性で、友人ら約30人と河原でバーベキューをしていたが、ほかの5人と川に入った際に流され、その後行方がわからなくなった。

事故から1週間後の24日、約23キロ下流の美濃市の川原で、釣り人が全裸の遺体を発見し、27日に身元が確認された。

事故当時の現場の板取川は、前日に降った雨の影響で水位が70センチほど高く、流れも速くなっていたという。

また、遺体が発見された翌日の25日には、同じ関市の板取川で「友達が川に流された」と警察に通報があった。通報から約20分後、泳いでいた場所から上流に30メートルほど離れた川底で男性が沈んでいるのが見つかり、その後病院に運ばれたが、まもなく死亡した。

死亡したのは21歳の男子大学生で、大学の友人3人と川に遊びに来ていて、上流の岩場を目指し泳いでいたところ、途中で流され溺れたという。

警察庁によると、2021年に起こった水難事故による死者・行方不明者のうち、河川や湖などでの事故は約4割だ。

河川財団のデータによると、河川や湖などの水難事故は夏休みに集中し、7月と8月を併せた発生件数は、全体の半数以上となっている。

事故があった板取川は関市や美濃市を流れ、長良川に合流する川だが、2021年までの14年間で58件の水難事故が起き、22人が亡くなっている。

水難事故の原因はどこにあるのか、ドローンを使って川の専門家と共に調査した。

【板取川上流・午渡橋】岩やブロックで変化する水流に注意!

名古屋から車で約1時間半、岐阜県の板取川。岐阜県を中心に、消防や警察などに川での救助を指導している「レスキュー3ジャパン」の佐藤孝洋さんにご協力いただいた。

まずやってきたのは、板取川上流の午渡橋(まわたりばし)の付近。ここでは過去14年間で2件の水難事故が発生し、1人が亡くなっている。

ドローンを飛ばし上からその様子を観察してみると、美しい流れだが、危険は潜んでいた。

佐藤さんがまず指摘したのは、岩にぶつかる波だ。

佐藤孝洋さん:
縦渦(たてうず)という独特の、上から下に向かって渦が作られます。よく一般の方が気づいたら水に沈み込まされるのも、縦渦の流れのせいになります

一般的に、川の流れが岩に当たったあとは、左右に避けて流れる。
しかし流れが強いと、ぶつかった勢いで流れが上向いたあと、下に下がる「縦渦」という現象が起き、岩の少し前に白波が立つ。

見た目はさほど大きなものではないが、飲み込まれると沈み込む水流と、重力が重なった強烈な力が働き、ライフジャケットなどの装備をしていなければ、川底に飲み込まれ溺れてしまう危険な現象だ。全国的にもこの縦渦に飲まれてしまう事故が多いという。

さらに川の様子を見ると、佐藤さんがもう一つ危険な場所を発見した。

佐藤孝洋さん:
コンクリートブロックの上流側に流れが当たっている所は、極めて危険です。流れてくる人がコンクリートブロックに当たった瞬間に、流れは隙間の方に押そうとしますので、中に潜ってしまったら場合によっては脱出できないこともあります

流れが集中するブロックの隙間に体が入りこんでしまうと、水流に押され隙間から抜け出せず、さらに沈み込む力も働き溺れてしまうという。

またこの時、ブロックの陰に隠れてしまうため、発見も遅くなる。ブロックのような人工物には近づかないことが大切だ。

【洞戸阿部地区】川の深さに注意!

先ほどの場所から下流に下った洞戸阿部(ほらどあべ)地区。ここでは過去14年間で4件の水難事故が発生し、2人が亡くなっている。

雨が降ってきたためドローンは飛ばせなかったが、道路から見て危険なポイントを教えてもらった。

佐藤孝洋さん:
中州からこちらの川の右岸の浅い所、流れが緩い所でしたら楽しく遊べるんじゃないかと思います。中州から左岸に近い方になってきますと、急に深くなったりとか急に流れが速くなる

水質が良い場合は色の違いで深さがわかる。川の右岸は茶色く底が見えているが、左岸は底が深いため緑色に見える。

水難学会が公開している実験映像をみると、濁っていて一見わからないが、川の中央へ進んでいくと、ひざくらいの高さから一気に肩辺りまでの深さに変わった。

深さが一気に…
深さが一気に…

この深さになったときに戻ろうと思っても、川底は砂利やぬかるみで滑ってしまい足を取られ、深い方へ落ち込んで溺れる原因になる。

川遊びの前に…「高い所から見て地形の把握を」

川遊びをする場合は、「ドローンとまではいかないものの、一度できるだけ高い位置から見て欲しい」と佐藤さんは話す。

佐藤孝洋さん:
河原に降りてしまうと、自分の視点が低くなってなかなか視界が狭くなるので見にくいんですが、ちょっと高い所からだいたいの川の地形を見て、自分たちが安全に遊べる範囲を高い所で作ること、その目印をつけておくこと、その範囲内で遊ぶことによって安全に楽しく遊べるのではないかと考えております

川遊びの注意点は… ライフジャケット着用&ひざ下まで!

実際に川で遊ぶときの注意点について、水難学会の斎藤会長は、「ライフジャケットを着て、ひざ下までのところで遊ぶこと」と指摘する。

ライフジャケットを着ていれば安全というわけではない。ライフジャケットを着ていても、腰の深さの川に入ってバランスを崩してしまうと、浮いて流され始める。

ライフジャケットをつけていることで浮力が働くが、川の流れによって簡単に流され、水に飲み込まれる可能性がある。

ライフジャケットを着た上で、転んでもお尻がつき、流されにくいひざ下までの所で遊ぶようにしてほしいという。

また、川は流れの音が大きく助けの声が届きにくいので、「子供を含め、川に入っている人から目を離さないこと」「大人が下流にいることで、いざ流されはじめたときに助けやすい」と指摘している。

(東海テレビ)