私がお伝えしたいのは、ウクライナ産穀物の輸出再開の裏でトルコの必死のアピールです。
輸出再開にあたりトルコなどが積み荷の検査をしましたが、資格持っている人はいないずさんな検査とも言えるものでした。
しかしトルコ政府は、検査チームが出発する様子を公開するなどエルドアン大統領の功績を必死にアピール。
ポイントはこちら。
「輸出再開は、4割まで落ちた大統領の支持率回復が目的か?」注目です。
【注目ポイント・記者解説】
ロシアがウクライナ南部の港を封鎖し、ウクライナ産穀物の輸出が滞っていた問題で、ロシア、ウクライナのほか、仲介役のトルコ、国連を加えた4者が輸出再開に7月、合意しました。
これに基づき、8月1日の合意後、初めてとなるトウモロコシを積んだ貨物船がウクライナ南部・オデーサ港を出発しました。
4者の合意内容では、穀物、肥料など以外の輸出再開は認められていないため、ロシア、ウクライナ、トルコ、国連の合同の検査チームがトルコのイスタンブール沖で船が積んでいる貨物を検査することが義務づけられています。
しかし、取材を進めると検査チームに貨物の検査をする資格を持っている人がいないことが分かりました。検査風景を公開した動画では、船の構造を説明されたりする様子、またおよそ2万7000トンにものぼる量のトウモロコシを上から確認しているだけ、という状況で、仮に二重底のような不正があった場合には、見抜くことはできないだろうという検査に見えます。「検査をやっているという事実が重要」と感じました。
また、メディアが検査するボートが貨物船に近づくところの撮影を優先したいとリクエストしても、トルコ国防省はまずは検査チームがボートに乗り込むところから取材してほしいと主張。検査チームの存在を世界にアピールしたい狙いがあるとみられます。ボートが出発後、慌てて別の場所で船に乗り込むところを取材する必要があったため、世界中のメディアが集まった現場は移動の時に大混乱になりました。
こうしたアピールの背景にはトルコの大統領選が関係している可能性があります。大統領選は2023年6月までに実施されますが、次期大統領選にも出馬を表明しているエルドアン大統領の支持率が、調査会社メトロポールの7月の世論調査で41.5%まで落ち込んでいます。不支持は53.7%に。不支持要因の多くはインフレなどが原因で、エルドアン大統領は有効な手だてをうてていない状況です。
そこで今回、世界に注目されている穀物問題の解決をエルドアン大統領の功績として様々な形で国内外にアピールして、存在感を示したい考えとみられます。一方で国民の目は穀物輸出よりも、今の生活への心配のほうが大きく、穀物輸出の合意が支持率の上昇につながるかは微妙な状況です。
(FNNイスタンブール支局・加藤崇)