安倍氏急逝で保守層の「自民離れ」は起こるか…憲法改正や日韓関係への影響を議論する
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安倍氏急逝で保守層の「自民離れ」は起こるか…憲法改正や日韓関係への影響を議論する

参院選の結果、改憲勢力が3分の2議席を大きく超えた。安倍政権が標榜し、近年の自民党の根幹を支えてきた保守政治を岸田自民党はどう継承していくのか。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、岸田派の小野寺五典元防衛相と識者を迎え、安倍元首相亡き後の自民党保守政治の展望について議論した。

多くの賓客弔問が予想される安倍氏国葬 対外メッセージの意義づけを

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏
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反町理キャスター:
安倍元首相の国葬について、国会内でも意見が割れている。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
これを決めた7月17日木曜日の段階では、国民にもショックがあり、国葬に反対しづらい空気があった。だがその後、共産・れいわ・社民が反対を打ち出し、立憲はそれに引きずられようとしている。時間の経過とともに党の考え方がはっきり出ている。岸田首相は、批判は受けとめながら自分の考えを貫こうという考えでは。

篠田英朗 東京外国語大学大学院教授:
簡単に答えは出ない。ただ、各国から非常に多くの弔問の気持ちが寄せられている。日本としてこれは民主主義の危機だと考えており、国際的にもそう受け止められている。そうした意義付けの必要がある。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
今回、報道では暗殺という言葉が世界中に広がった。あの安全な民主政治の日本で蛮行が、と衝撃が走った。日本は民主国家としての決意を示す意味で、国葬というステージをつくり、海外からの多くの賓客をしっかり礼遇して日本のスタンスを伝える。その思いで岸田首相は決めたと思う。また国民の皆さんが毎日、本当に長蛇の列を作り自民党本部を弔問されていた。こんなに国民に愛された方だったのだと個人的に改めて感じ、国葬がふさわしいと思った。

誰が安倍派を握り政権を支えるか…新しい権力構造へのプロセス

新美有加キャスター:
今回の参院選で自民党が掲げた公約。「国防予算の対GDP比2%以上も念頭に、5年以内に必要な予算水準の達成を目指す」「弾道ミサイル攻撃を含む武力攻撃に対する反撃能力を保有」。実現へ向けた党内議論に対し、安倍元首相が亡くなったことの影響は。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
既に自民党の政策としては決定しており、政府の骨太方針の中でも、防衛予算について一定の配慮がされている。今後は党内より公明党との協議、調整。個人的には、安倍元首相がいれば力強い後押しになったと思う。

篠田英朗 東京外国語大学大学院教授:
GDP比2%という数字はNATOの水準で、アメリカの同盟国は2%ぐらい使えと言われている。確かにその通りだと、日本人に思わせるところにまでなったのは安倍元首相の遺産。そのメッセージは今後も残り続けていくのでは。

篠田英朗 東京外国語大学大学院教授

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
具体案づくりでは財務省との戦いになっていく。安倍さんは防衛国債でという考え方だったが、財務省が今やり始めているのは、国債で無尽蔵に戦費を調達していき戦前のような危うい国にしてはいけない、という世論形成。ご存命なら、この秋は財務省とのバトルになると思っていた。

反町理キャスター:
岸田政権は、岸田さん・麻生さん・安倍さんが三角で支えていた。安倍さんが亡くなり、岸田さんは麻生さんの支持だけで立ちゆくか。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
安倍さんの穴を埋めるため、岸田さんは自ら保守を取りにいっている。それが国葬や憲法改正へのスタンス。今はまさに新しい権力構造を作るプロセスにある。安倍派の集団指導体制は暫定的なもの。岸田さんが8月と思われる内閣改造・自民党役員人事のときに相談する安倍派の人物が、安倍派の実権を握っていく。岸田さんとしては、安倍派が全面的に自らを支える体制にしたい。

日韓関係 「現金化」問題は絶対に譲れない

新美有加キャスター:
韓国に対する安倍政権の政策。朴槿恵(パク・クネ)政権とは、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」で合意。文在寅(ムン・ジェイン)政権では慰安婦問題を蒸し返され、元徴用工への損害賠償を命じる韓国大法院の判決、韓国海軍艦艇による自衛隊機へのレーダー照射などで関係は再び悪化。安倍政権は、半導体材料などの輸出規制強化、輸出管理優遇措置対象国から除外で対応。韓国への対応は今後、変化するかどうか。

篠田英朗 東京外国語大学大学院教授:
保守層と自民党との関係でも感情的・思想的問題がかかわってくる部分で、岸田政権にとって試金石となるのでは。韓国は政権が変わったところであり、こちら側から可能性を封じ込める必要はないという態度は非常に合理的。だが、どういうアプローチをしていくか、外交能力が試される。

反町理キャスター:
韓国の朴振(パク・チン)新外務大臣が日本に来て、林外相や岸田首相と会った。「現金化が行われる前に望ましい解決策が出るよう努力する」と発言。だが、額賀日韓議連会長との会談では「日本側の変化も多少期待する」と。岸田政権は尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権とどう向き合うか。進め方次第では保守層の離反を招くのでは。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
粘り強く慰安婦合意を結んだのは当時の岸田外相。韓国側が急にゴールポストを変え、一番悔しい思いをした。今は心の中におさめていると思う。東アジアの安全保障が厳しい中で協力関係が必要であり、その中で韓国側に誠意を求め交渉していければいい。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相

反町理キャスター:
安全保障における日韓関係の重要性から見たとき、徴用工の問題などはどうなるか。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
目の前に来ている「現金化」の問題は、絶対に譲れないレッドライン(越えてはならない一線)。何らかの回避の知恵が韓国から出てくれば、さらに時間をかけて議論できる余地はある。

岸田首相の発言は慎重だが、改憲には本気

新美有加キャスター:
憲法改正へ安倍元首相がつけた道筋は、改正手順を具体的に規定する国民投票法の成立、自民党の改憲4項目の発表。一方、岸田首相は「国会での議論をまずしっかりと深め、内容において3分の2の賛同を得る取り組みを」という考えを示した。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
これは至極当然。3分の2を超えた勢力の中でも、どういう形で改憲するかについてはそれぞれ違う考え方。今のままで発議はできない。

反町理キャスター:
岸田さんは本気なのか、慎重なのか。

篠田英朗 東京外国語大学大学院教授:
中身で3分の2の合意がとれていない印象を国民に与えるような発議は賢くない。国葬をやるというのは、ほとんど「安倍元首相が推進した理念」が「日本国が推進する理念」だと言っている。その延長線上に改憲があるというのは極めて論理的な思考。その道筋を一人でも多くの人に納得してもらいたいと考えたのでは。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
憲法改正について岸田さんは本気だと思う。優先順位もまあまあ。参院選翌日の記者会見で、自民党総裁としてできるだけ早く発議したいと話している。総理大臣としてはもうちょっと引いた言い方になるということ。

反町理キャスター:
すると中身として、自民党の4項目にどこまでこだわるか。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
4つのうち一番国民に受け入れられやすいのは教育無償化では。合意形成がしやすいものからやっていくだろうと思う。

参院選での自民党は「保守同士の争い」に実質敗北した

新美有加キャスター:
今回の参院選で自民党は議席を増やしたが、党への支持を反映すると言われる比例の得票率は前回より約0.9ポイント下げている。維新は約5ポイント上げ、177万票ほどを獲得した参政党の得票率は約3.3%。保守系野党が躍進したと見える。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
安倍元首相の事件で参院選に注目が集まったと思う。当初想定より伸びた投票率の分が自民に来ると考えていたところ、結果として比例で1議席減の18議席。安倍元首相を思う票が、自民ではなく保守を自認する維新や参政に行ったとすれば、安倍元首相が心配していたコアの保守層が本当に自民党支持かどうかという点をよく分析しなければ。かなり危機感がある。

反町理キャスター:
安倍さんを思う票が自民に来ていたとすれば、もともと今回は16〜17議席取れるかどうかであり、それが1〜2議席増えたという見方もあるのでは?

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
僕はその見方。参政党の幹部の方によれば、安倍さんが亡くなった翌日の土曜日に伸びが止まったと。自民は安倍さんのおかげで、得票率において34%を維持できた。選挙区で勝てたのだから立憲より強いのは確か。だが保守同士の争いになった時に、実質負けたのだと思う。

反町理キャスター:
この状況下において自民は今後、維新や参政に行ってしまった人たちを取り込めるように右に拡大するか、極左も極右も切って真ん中の人たちを分厚く取る戦術を構築すべきか。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
右に伸ばして保守層を固められる人がいた方がいい。岸田さんはどちらかというと中道寄りの考え方で、それはそれでいいが、今は自民党の幅として右の人が欠けた状況。

小野寺五典 自民党安全保障調査会会長 元防衛相:
私も同じ。自民党をずっと応援してくれているのは、恐らく憲法を改正してこの国をしっかり自立した国家としようという思いの方。このコアの方たちを大事にすべきだと思う。

BSフジLIVE「プライムニュース」7月19日放送

記事 152 BSフジLIVE プライムニュース

 “政治”、“経済”、“国際”、“環境”、“社会問題”の5つのジャンルから、いま世の中で関心の高い問題を毎回1つに絞り、その問題について相応しい人物(当事者や関係者)をゲストに、2時間に及ぶ解説と議論で、その問題を徹底的に掘り下げる。
フジテレビ報道局が制作するBSフジ夜のニュース議論番組。毎週・月曜~金曜日よる8時より放送中。キャスター:反町理/新美有加/長野美郷

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