私がお伝えしたいのは、「人気のコロナ保険に異変」です。

新型コロナと診断されたら保険金が支払われる、いわゆる「コロナ保険」。感染者急増で、販売停止や保険料大幅アップに追い込まれた商品も出てきました。背景には、膨れ上がる「みなし入院」が。

ポイントはこちら!「感染者急増は保険見直しのチャンスにも」注目です。(報告:経済部・茅野朝子)

~ポイント解説~
「コロナ保険」といえば、月数百円程度から入れる手軽さや、入院に至らずに自宅療養、つまり「みなし入院」の場合でも保険金が支払われる、といった点に魅力を感じて加入した人も多いのではないでしょうか。

ところが、コロナ禍3年目となり、第7波が押し寄せるなか、「コロナ保険」は今、曲がり角に立たされています。今月11日、第一生命の子会社「第一スマート少額短期保険」は、コロナと診断されると10万円の一時金が給付される保険の新規販売を停止したと発表しました。

保険料は感染状況によって変動する仕組みで、発売当初は3カ月で980円だった保険料は、今月3300円と3倍以上に。今年3月には8000円を超える大幅な引き上げも実施していましたが、それでも最近の感染者急増を受け、商品の維持が難しいと判断したのです。第一スマートのようにコロナ専用の保険を中心に今年に入って保険料の引き上げや販売停止が相次ぎました。

その背景にあるのが、膨れ上がる「みなし入院」への保険金の支払いです。いわゆる「コロナ保険」は、生命保険会社だけでなく、少額短期保険会社や、損害保険会社の商品もありますが、生命保険協会のまとめだけをみても、今年3月までの1年間にコロナで支払われた入院給付金は、1022億円にのぼり、このうち「みなし入院」は、889億円と9割近くを占めます。

さらに、今年5月の支払い額は594億円とひと月で、すでに3月までの1年間の6割近くに達し、その97%が「みなし入院」となりました。この状況について、保険商品に詳しいファイナンシャルプランナーは、「商品として成り立たないところまできていて、業界として限界ではないか」と指摘します。

手軽な保険料で、みなし入院でも保険金が支払われることがウリのコロナ保険ですが、実はその「みなし入院」への支払いにより、保険料アップや販売停止に追い込まれているのです。ただ、生命保険協会の会長で第一生命の稲垣精二社長は、15日、みなし入院を保障の対象とする扱いについて、「現時点で見直すことは考えていない」としたうえで、「自宅療養の運用や社会情勢をふまえながら総合的に考えていく」と話しました。

いわゆる「コロナ保険」には、コロナ専用のもの以外に、通常の入院保障とセットで販売している商品もあるほか、一般的な入院保障のある保険なら、もしコロナで入院した場合も保障対象になります。感染急増を機に、加入している保険が自分にとって最適なものか、改めて見直してみてもよいかもしれません。

経済部
経済部

「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
世界的な課題となっている温室効果ガス削減をはじめ、AIや自動運転などをめぐる最先端テクノロジーの取材も続け、技術革新のうねりをカバー。
生産・販売・消費の現場で、タイムリーな話題を掘り下げて取材し、映像化に知恵を絞り、わかりやすく伝えていくのが経済部の目標。

財務省や総務省、経産省などの省庁や日銀・東京証券取引所のほか、金融機関、自動車をはじめとした製造業、流通・情報通信・外食など幅広い経済分野を取材している。