今回の参議院選挙は鳥取・島根両県が合区されて、3回目の選挙だった。
2013年までは両県は別々の選挙区だったが、2016年の選挙からひとつにまとめられた。
1票の格差は是正されたものの、「地元議員を選ぶ」という有権者の意識が薄れ、投票率の低下につながっているという指摘もある。
専門家の見解を踏まえ、合区の課題を考える。

意見が届かなくなることで政治への無関心が生じる

鳥取・島根の合区について街の人は…

70代女性:
さみしいね、なんとなく。島根も鳥取も違うし

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70代男性:
早く解消して、鳥取県から候補が出て欲しい

20代大学生:
県の意見が反映されにくいと言う話は聞いたことあるが、そんなに反対でもない

反応は様々。専門家は合区をどう評価するのか。

6月、参議院憲法審査会で意見を述べた広島大学法科大学院の新井誠教授と上智大学の上田健介教授、2人の憲法学者に話を聞いた。

広島大学法科大学院・新井誠教授:
地域からの声が行かなくなるという制度、システムを取っていると、その地域の人の政治の無関心や反発が生じてしまうのではないか

実際、今回の投票率は、島根県が56.37%と前回を若干上回ったものの、鳥取県が48.93%と過去最低を更新。合区が投票率低下につながったとも受け取れる。

新井教授は、合区になった地域で政治的無関心を呼び、都市と地方の分断をさらに加速させるおそれがあると指摘する。

広島大学法科大学院・新井誠教授:
地域から都市部に対し、いろんな地域を見てくれていないということで、強い抗議が世界的に起こっている中で、都市と地域の分断が生じる効果も懸念される

参議院の役割という問題にも直結

一方の上田教授、参議院の選挙制度そのものが行き詰まっていると指摘する。

上智大学法学部・上田健介教授:
特定枠で当選した人を、地元が自分たちの代表者と感じるかはわからないですよね。この投票をすることによって、どういう代表者を選んでいるかが有権者もわからなくなっていると思う

選挙活動ができない代わりに、政党が優先した候補者を比例区で当選しやすくする「特定枠」。合区地域の救済措置ともいえるが、上田教授は、こうした複雑な選挙制度がどういう理念で代表者を選んでいるかを不明確にしているという。

上智大学法学部・上田健介教授:
どういう代表者を出して、代表者がどういう役割を果たすことを期待して、選挙の仕組みを作るのかという、もう一度原点に返って議論するきっかけにもなると思う

大きな課題に直面した際、「国民の信」を問うために解散総選挙が行われる衆議院とは違い、任期が6年で解散の無い参議院。
「良識の府」と言われ、高い見識を持った議員が構成するのが本来求められる姿だとされているが、今の時代にどのような役割を期待すべきなのか?
選挙区の合区をめぐる議論は、参議院の役割という問題にも直結している。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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