静岡県熱海市でラジオパーソナリティを務める、中学3年生の男子生徒。2022年から、土石流の話題を放送に取り入れるようになった。被災者の気持ちを第一に、本当に被災地のためになる放送を模索し続けている。

あの日から1年 変わってしまった景色

熱海市のコミュニティFM「FM熱海湯河原」。毎月第2土曜日、午後9時から1時間の番組を担当しているのが、熱海中学校の3年生、大森匠真さんだ。

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「たっくんラジオ」7月9日放送回:
フリースタジオ796、たっくんラジオー!皆さんこんばんは。7月9日土曜日、時刻は21時を回りました。ここからの1時間は、たっくんこと大森匠真がお送りしていきたいと思います

7月9日放送分の収録を迎えたこの日、大森さんは、伊豆山で起きた土石流の話に触れた。

「たっくんラジオ」7月9日放送回:
7月3日で熱海市の土石流から1年が経過しました。熱海市では復興作業は着々と行われています。当時、僕は家にいました。最初に知ったのは知り合いからの動画だったんですが、友達の家があり、大丈夫かなって心配になってきて。LINEで大丈夫?って声掛けをしたんですけど、応答してくれたので、命が助かっているとまず一安心しました

発災当日、伊豆山に家がある友人とのLINE
発災当日、伊豆山に家がある友人とのLINE

伊豆山の人々の生活を一瞬にして奪った土石流。大森さんの友達の家も流され、今は更地となっている。

大森匠真さん:
記憶的には、家があったかのように鮮明に覚えていますが、現場を目にするともう1年かと、そんな思いですね

発災から2週間以上、被災状況や支援情報を発信

土石流が起きた当日、FM熱海湯河原では生放送の内容を急遽変更。

リスナーからの情報などを参考に、この日から2週間以上にわたり、被害の状況や被災者の支援に関する情報を発信し続けた。

熱海市伊豆山(2021年7月3日)
熱海市伊豆山(2021年7月3日)

2021年7月3日放送回:
曲の途中なんですが、ここで一つ情報をお伝えいたします。家族、友達から情報を確認したところ、岸谷、般若院の上の方から土石流が流れてきまして、般若院一体、木造の家など流されています。また、そこからのつながりなのか、逢初橋付近でも土砂災害が発生しておりまして、国道135号まで土砂があふれているということです

「地域に寄り添う」という思いを胸に活動

土石流が起きたあと、大森さんは熱海中学校の体育館で避難所のボランティアに参加した。

ボランティアに参加した大森匠真さん
ボランティアに参加した大森匠真さん

「たっくんラジオ」7月9日放送回:
倉庫の中にある毛布を段ボールから出したり、皆さんにお配りしたり、そういうお手伝いをさせて頂きました。皆さん心配されているような表情だったので、大丈夫ですか?という感じで声をかけようと思ったんですけど…。自分の家が流されているかもしれないって考えると、声をかけるべきなのか、迷いがあったりとかして

小学4年生の時から、ラジオのリポーターとして地域と触れ合ってきた大森さん。2021年10月に番組を持ち始めてからも、地域に寄り添うという思いを大切にしてきた。

「たっくんラジオ」2022年1月放送:
自分の家に帰れなくなってしまった人は、市営住宅などに住んでいるというニュースをよく耳にします。その方々のことを思うととても心が痛みます

「たっくんラジオ」2022年3月放送:
現在、スタジオを飛び出して土石流が起きた伊豆山地区にいます。早く伊豆山の方々がここへ戻ってこられることを祈っています

被災地だからこその葛藤もあるが…

災害のことを長く話し過ぎてしまうことで、被災者に辛い記憶を思い出させてしまうのではないか…。これまでは、1時間の放送で災害関連の情報を話すのは、約5分が精いっぱいだった。

大森匠真さん:
リスナーは伊豆山に住んでいる方なので、やはり言葉選びや本当に紹介すべきなのかと思いながら、葛藤がありながら番組で伝えているというような感じ

被災者に辛い記憶を思い出させてしまうのではないか、と思い悩みながら
被災者に辛い記憶を思い出させてしまうのではないか、と思い悩みながら

あれから1年。伊豆山は復興に向けて一歩ずつ前に進んでいる。

大森さんも、今回の収録では発災当日の話とともに、普段からの備蓄の大切さなどについても伝え、初めて10分程度の時間をかけて土石流について話をした。

大森さんの防災バッグ
大森さんの防災バッグ

「たっくんラジオ」7月9日放送回:
熱海市の土石流についてはこれからも、毎回とはいきませんけど、何回か周期にお話をしなければならないので、話して、そして防災対策などを確認して頂ければと思います

被災者の思いと、この災害を伝えていかなければならないという使命感を抱えて…。本当に地域のためになる放送を模索しながら、大森さんはこれからも発信を続ける。

(テレビ静岡)