新型コロナの外出制限が解除され、外でお酒を飲む機会も増えてきた。変化しつつある「酒場=サカバ」の今を取材した。

レトロなネオンが「映え」と若者魅了

若者が集う「サカバ」があると聞いてやって来たのが、大阪市中央区にある心斎橋PARCO。その地下2階、カラフルな電飾がきらめく空間「心斎橋ネオン食堂街」だ。

20代の女性:
最近流行ってるネオンがいっぱいあって、インスタ映えやな~みたいな。キラキラしててかわいい感じがします。韓国っぽい!エモいです。写真いっぱい撮りました

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ネオンが持つ、きらびやかでいて昭和レトロな雰囲気に何とも言えない趣。若者言葉で表現するとめちゃくちゃ「エモい」そうなのだ。

オフィス街におなじみ「プロント」 夜には…?

この「エモい酒場」が今、広がりを見せている。

吉原功兼アナウンサー:
オフィス街のプロントに来てみたんですが…こんな感じでしたっけ?のれんなんてありました?

オフィス街を中心に、全国でチェーン展開するカフェ「プロント」。2021年4月から「喫茶」と「酒場」をかけ合わせた「キッサカバ」の営業を始めた。

「昼はカフェ、夜はサカバ。」をキーワードに、メニューにもレトロ感を取り入れている。さっそく「揚げ玉子サンド」を試食してみた。

吉原功兼アナウンサー:
甘さを引き立てるようにソースが乗っかってて、甘さとしょっぱさのバランスが絶妙ですね。ソースの味わいが入ってくると、お酒が進みますね~

コーヒー豆が浮かんだ「クリア珈琲」は…。

吉原功兼アナウンサー:
おいしいっ!しっかりコーヒーの味がします。すっきりしていて、ぐびぐびいけそう。コーヒーのチューハイ?

プロント安土町店 桝本有佳里 店長:
ウォッカにコーヒーの香りづけをしてるんです

カフェが営業する酒場ならではのお酒も楽しめる「キッサカバ」。何をきっかけに始めたのだろうか。

プロント安土町店 桝本有佳里 店長:
コロナ禍になって、皆さんの働き方も変わってきましたので。より選んでいただけるお店として、ロゴも一新して、リブランディング(ブランド再生)しました

テレワークの普及などにより、オフィス街で営業する店舗の売り上げは減少。そこで、デイタイムだけでなく夜の売上も伸ばしたいと、「キッサカバ」というブランドを立ち上げたのだ。

60代の男性:
1人で来ても、気楽に飲める。昔、オールドバーってあったじゃないですか。それに代わる感じかな

20代の男性:
普通のプロントのイメージじゃないなぁって。おしゃれでいいと思いますね。女性と来たいなと思います

「キッサカバ」としての営業を始めて以降、若い世代の新規客が増え、客単価が150%となり売上もアップしたそう。さらに、こんな変化も…。

プロント安土町店 桝本有佳里 店長:
結構若い方、特に20~30代の方が増えて。女性の方も来やすいそうで、ご来店いただいています

これまで客の男女比は、男性8割に対して女性2割ほどだったのが、キッサカバができて以降は、約5対5に変わった。仕事帰りのサラリーマンが集うイメージもあった「酒場」は、女性も利用しやすい形へと変化してきているようだ。

ワインとケーキのマリアージュ! 人気のカフェ酒場

吉原功兼アナウンサー:
午前中からお酒が飲める場所があると聞いてきたんですが、こちらですかね。かわいらしい雰囲気です

大阪市城東区にあるお店「時分時(ジブンドキ)」。

吉原功兼アナウンサー:
時分時っていう店名に何かこだわりはあるんですか?

時分時オーナー:
自分が来たいときに来ていただきたいという、「自分時」という意味を込めています

吉原功兼アナウンサー:
午前中からでも午後の時間帯でも、自分が来たいタイミングで、ということなんですね

こちらのお店の売りは、お酒とスイーツだ。

時分時オーナー:
グラスワインとパルメザンとブラックペッパーのチーズケーキになります

お酒好きなパティシエのオーナーが、ワインから泡盛まで、いろんなお酒に合うケーキを手作りしていて、カフェタイムのように「昼呑み」が楽しめる。

パルメザンとブラックペッパーのチーズケーキを試食してみると…。

吉原功兼アナウンサー:
お酒に合います!普通のチーズケーキだと思って食べていたら、下の生地のブラックペッパーが途中から、おじゃましますって感じで顔を出して

時分時オーナー:
昼下がりとかにお酒を飲んで、ちょっとしたおつまみ感覚で、ケーキも一緒に飲んでっていうのは幸せ感がありますし、罪悪感もないですし

この日は、“ママ友”の皆さんがランチで利用していた。

“ママ友”グループの皆さん:
友達と飲みに行くのが、たぶんコロナになってからゼロです。子供がいるから、わざわざ家に子供を置いてまで、このご時世に外に出るっていうのも、ちょっとしんどいし。普通の居酒屋とかにママ友とかと行くよりは、ちょっと入りやすい雰囲気はある

子供と一緒に利用しやすい、時間と雰囲気。酒場のニューノーマルな形が生まれていた。

コロナで定着「家飲み」 生ジョッキ缶が爆売れ

ここまでは「店飲み」を紹介したが、新型コロナの流行を機に定着したのが「家飲み」。この需要をガッチリと押さえて爆売れしたのが、アサヒビールの「生ジョッキ缶」だ。

缶の上部をフルオープンにすると、モコモコと泡が立ち上がるこの商品。「家にいながら居酒屋気分を味わえる」と話題になり、2021年4月の発売から12月までの販売数は、約400万ケース(9600万本分)。

発売当初は売り切れが続出し、販売休止になることもあった。現在はHPで発売日を告知することで、販売を調整しているそうだ。

一人飲み動画を配信「遠隔乾杯で楽しく」

そんな家飲みだが、「一人飲み動画」を見ながら「一人飲み」をする…という楽しみ方が、若い人たちの間ではやっているのをご存じだろうか。

特に人気なのが、自称「酒テロクリエーター」の「酒村ゆっけ、」さん。お酒を飲みまくり、おつまみを食べまくる姿が「見ていて気持ちがいい」と人気を博し、YouTubeのチャンネル登録者数は74万人超え。

「酒村ゆっけ、飲み」を楽しむ村上さん:
ぐびぐび飲んでいて、わあ楽しそうやなって。飲んでいるのをつまみに飲んでいる感じです

新型コロナでなくなってしまった飲み会のかわりに、“ゆっけ飲み”を始めたという女性がいる。社会人5年目の村上さんだ。

村上さん:
すごくおいしそうに、しかもこれだけ量を飲めたら楽しいやろうな、羨ましいなって思いながら飲んでます。つられ飲みですね。動画で、おいしーって紹介されているおつまみとかは買いに行っちゃいますね

しかし、家で一人で飲むなら、映画やテレビ、本を読むのでもいいのでは?

村上さん:
好きな芸能人が出ているドラマとか映画を見るときは、そっちに集中したいと思ってしまう。ゆっけさんの動画は、お酒を飲みながら、ちょうどいい感じにゆっくり見られる

そこで吉原アナが、ゆっけさんと「リモート飲み」をしながら話を聞かせてもらった。

吉原功兼アナウンサー:
お酒お強いですよね?あんまり顔が赤くなるような感じはないですし

酒村ゆっけ、さん:
確かに人並み以上に飲めると思うんですけど。やっぱりさすがに連日飲み過ぎてると、あれ?体重がりんご何個分か重くなっているなあって感じていますよ

吉原功兼アナウンサー:
どうして一人飲みの様子を公開しようと思われたんですか?

酒むらゆっけ、さん:
配信を始めたきっかけは、会社を新卒ですぐに辞めて無職になってしまって、あり余る時間ができたので。一人飲みの理由は、友達があまりいないっていうのと、同年代はみんな会社員なので、平日朝から付き合ってくれないから。まあ強制的に一人になっています

好きなお酒の記録を付けるため、なんとなく始めた動画配信だったが、今では意味も感じているそうだ。

酒村ゆっけ、さん:
「遠隔乾杯」で、一人飲みなのに乾杯しているような、そんなほっこりとした気持ちになってくれたらいいなと。誰かと飲む気力もないけど、家で一人も寂しいなあっていう時に、「乾杯できる一人飲みの仲間」として見てほしいと思っています

いつの時代も、大人の心のオアシスとなってきた酒場。カタチは変わっても、人々が求めるものは変わらないのかもしれない。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年6月16日放送)

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