移住先で見つけた謎の食品。その地域出身の妻が答えた“例え”がまたわからない…そんな出来事が注目を集めている。

東京都出身で長野県に移住した、TwitterユーザーのHAL(@HAL1986____)さんはある日、スーパーで「おきゅうと」という食品を見つけた。

撮影した写真を見ると、見た目は薄い緑色でこんにゃくのよう。ブロックや刺身状にスライスした状態で並んでいて、価格は1パックで約200円。

スーパーに並ぶおきゅうと(提供:HALさん)
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興味を持ったHALさんは、長野市出身の奥さんに「これなんだろ」と質問。しかし「『えご』みたいなもんだと思う」という一言が返ってきて、知らない単語ばかりでお手上げだったという。

HALさんがおきゅうとを「謎の食べ物」「ナンモワカラン」などと投稿すると、Twitterでは「なるほど。わからんw」「初めてみたよ!」といった反応が寄せられるなど、注目を集めた。HALさんはその後、実際に購入して食べてもみたという。

HALさんは実際に食べてもいる(提供:HALさん)

おきゅうとのルーツは福岡…どんな料理なのか製造店に聞いてみた

日本各地の郷土料理を掲載している、農林水産省のサイトによると、おきゅうとは福岡県の郷土料理。海藻から作られていて、コンビニやスーパーなどでも手軽に手に入るという。

このサイトでは、長野県の郷土料理として「えごの酢味噌あえ」も掲載されていた。HALさんの奥さんが例えていたのはこの料理のことだろう。「えご」も海藻から作られていて確かに外見は通じるところがある。

えごの酢味噌和え(出典:農林水産省Webサイトより)

しかし、福岡と長野という遠く離れた地域でどうして似た料理があるのか。大正時代からおきゅうとを製造している、林正之おきゅうと店(福岡)に名前の由来、えごとのつながりを聞いた。

――おきゅうとの成り立ち、名前の由来を教えて。

おきゅうとは海藻で作られた料理で、江戸時代の享保(1716~1736年)に飢饉が起きたとき、人々に非常食として施されたと言われています。名前の由来は複数の説があり、飢饉の人々を救ったことからの「(お)救人」、素材が海の沖から採れることからの「沖人」、原材料が植物のウド(独活)のように育つことからの「沖独活」などがあります。「救人」の説が有力です。

おきゅうとの由来(提供:林正之おきゅうと店)

――どのように作っているの?

エゴノリ、イギスという2種類の海藻を使います。エゴノリは味を決めるため、イギスはもちもちとした食感を出すのが目的です。製造工程はまず海藻を水に浸して、天気を見ながら天日干しします。海藻のあく抜きと洗浄になり、コシも強くなります。

続いて、鉄窯に水を沸騰させ、海藻を煮溶かしていきます。2時間くらい煮ると粘度が出るので練り上げていきます。温度が高いうちに網で越し、小判型に成型して冷まして乾いたらおきゅうとの出来上がりです。季節で素材の配合を変えたりもします。

おきゅうとに使う素材(提供:林正之おきゅうと店)

博多では朝食の定番…お勧めの食べ方は?

――味や食感はどう?どのようにして食べるの?

おきゅうと自体の味は淡白で、抹茶のような磯の香りが特徴です。食感はところてんに似ていますが、もう少し柔らかめですね。食べ方はいろいろですが短冊の形に切り、生醤油と鰹節をかけるのが一般的です。私はちりめんじゃこ、大根おろし、醤油と一緒に食べるのが好みです。

料理の位置づけは総菜の一つで、小鉢などで出てくることが多いです。調理が簡単なので、朝食のメニューとなることが多く、一昔前は博多の朝ごはんといったらおきゅうとというほど、多くの家庭の食卓に出ていました。夏の季節にもぴったりですね。

おきゅうとの調理例(提供:林正之おきゅうと店)

――どんなところで食べられる?価格帯は?

福岡では食品を販売する場所にはあると思います。あるのが当たり前といったところですね。価格は100グラム前後で200円くらいです。飲食店でも置いてあったりします。
 

――Twitterには、長野県のスーパーで販売されている様子もあった。長野には「えご」という似た料理もあるようだが、関係があったりはするの?

詳細は分かりませんが、おきゅうとのような料理の文化は、日本海側にいくつかあります。例えば、新潟には「いごねり」(いご草で作った食品)というものがあります。また、長野は涼しい気候が寒天の製造や保存に適していたそうで、江戸時代から、海藻類の業者が多く訪れていたそうです。そのため、長野は海藻類の需要が多い場所といえます。おきゅうとが販売されていることは知りませんでしたが、販売自体に違和感はありません。

店舗数が激減…存在を知ってもらいたい

――おきゅうとの製造で工夫していることはある?

丁寧な仕事を心がけることです。季節で素材の状態も変わり、例えば、エゴノリは気温が25℃以上のところに置くとべたっとします。そのため、素材の割合や熱の入れ方も変えたりします。自分が満足できるものを作りたいと思いながら作っています。

製造工程の様子(提供:林正之おきゅうと店)

――おきゅうと関連で人々に伝えたいことはある?

おきゅうとの製造店は近年減り、福岡ではうちを含めて3店舗のみとなりました。福岡の飢饉を乗り越えてきた、地域で食べられてきた食品なので、存在をもっと知ってもらいたいですね。
 

HALさんの投稿に登場した、スーパーの運営企業に聞いたところ、地域で親しまれるものを販売していて、おきゅうともその一つとして店頭に並べているとのことだった。正式なつながりは分からないが、おきゅうともえごも海藻類をおいしくいただくという点では共通していた。

記事 4295 プライムオンライン編集部

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