秋田県には、たまごやポテトサラダなど、いろいろな食材を何でも固めてしまう“寒天文化”があるのをご存じだろうか。
そのような中で今、ある食材を使った寒天が登場し、ここまで来たかとTwitterで話題になっている。

それがこちら。

「寒天でなんでも固めて食べる文化」は、ここまで来ました。 もう、怖いものなしです。 #yokote

このコメントとともに秋田県在住のおいち(@oichi0901)さんがTwitterに投稿したのは、「横手やきそば寒天(肉玉)」。茶色いゼリー状の中に、麺やたまごらしき食品が確認できる。確かに原材料欄には焼きそばの材料が並び、「寒天」という文字も記載されている。

この「横手やきそば寒天」は秋田県横手市にある道の駅十文字「まめでらが〜」で購入したという。

横手やきそば寒天(提供:おいちさん)
横手やきそば寒天(提供:おいちさん)
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みかんなどのフルーツを寒天で固めるのはよくあると思うが、まさか秋田名物の「横手焼きそば」を寒天にしてしまうとは、県民も想像していなかったのではないだろうか。

おいちさんのこの投稿には1万5000いいねが集まり、Twitterユーザーからは「なんでも固めてしまう文化 なんか愛おしい…」「すごく食べてみたいです。」「う、うまいのかこれ…?」など、さまざまなコメントが寄せられている。(4月27日時点)

特に他県出身者からすると、寒天で固めた焼きそばの味がとても気になることだろう。まずは、おいちさんに聞いてみた。

フワッとソースの香りが来る寒天

ーー投稿したきっかけを教えて

ずっと古くからある食文化とちょっと古くに生まれた食文化が合わさったよっていうのを伝えたかったからです。


ーー「横手焼きそば寒天」は初めて見た?

購入した4月11日時点で初めて見ました。


ーー実際に食べてみてどうだった?

ラップを開けるとフワッとソースの香りが来る!ソース頑張ってる!福神漬けが色と味を蔓延(はびこ)る蔓延る!

寒天との調和だけで意見を申しますと、かなりとんがった物ですが、今後の寒天文化の可能性が広がったとだけ申しあげます。

提供:おいちさん
提供:おいちさん

ーーちなみに、他に変わった寒天を見たことはある?

胡桃寒天、玉子寒天は小さな頃から日常的にあり、母が作る工程をよく眺めていました。

たまご寒天(提供:横手市役所)
たまご寒天(提供:横手市役所)

おいちさんによると、昔から家庭で「玉子寒天」や「胡桃寒天」など、寒天を使った料理が日常的にあったとのことだ。

しかしここで気になるのが、なぜ秋田県では、寒天で何でも固める文化が根付いたかということだろう。そして、他にも変わった寒天があるのだろうか?

秋田県の寒天文化に詳しい横手市役所の農林部食農推進課の担当者に話を聞いた。

砂糖をたくさん使っているため日持ちする

ーーなぜ秋田県では何でも寒天で固めるの?

寒天文化が生まれた正確な情報は分かりかねますが、雪国ならではの保存食として作られたのが始まりと考えられています。理由は、「砂糖をたくさん使っているため日持ちする」という部分にも由来します。

みかん寒天(提供:横手市役所)
みかん寒天(提供:横手市役所)

ーー秋田県民にとって寒天は身近な存在なの?

冠婚葬祭などの畏まった場面での提供をはじめ、食卓で食べるご家庭も多くございます。おそらく寒天はその昔、貴重な寒天と砂糖を用いた保存の効く「おもてなしの料理」であったのだと考えられます。

家庭ごとに寒天の特徴は異なり、まさに「なんでも固める」文化のおかげで色とりどりの寒天が存在します。また、スーパーや道の駅でさまざまな味の寒天が売られていることも事実です。食卓だけではなく、3時のおやつとして寒天を食べる方もいらっしゃいます。

ただし、寒天を好んで食べる・作るという方はご高齢の方に多く、若い方にはあまりなじみのないものであることも確かです。

カラフル寒天(提供:横手市役所)
カラフル寒天(提供:横手市役所)

県南地域では「サラダ寒天」が有名

ーー県内でもあまり寒天を食べない地域はある?

寒天が秋田県の食文化として総称されることも多くございますが、このように深く生活に根付いているのは秋田県南が中心であると思われます。


ーー地域で味は変わるの?

県南地域には「なんでも固める」文化の他に「なんでも甘くする」文化がありますので、作られる寒天も甘みのあるものが多いです。

当地域で有名なものは「サラダ寒天」と呼ばれるものであり、いわゆるポテトサラダを寒天で固めたものです。お惣菜のような寒天、おやつとして食べられるデザート感覚の寒天があり、各家庭の好みでその内容も外観も異なります。

サラダ寒天(提供:横手市役所)
サラダ寒天(提供:横手市役所)

ーー今までで驚いた寒天はある?

個人的になじみは薄いのですが、うどんやそうめんを寒天に詰める「うどん寒天」がございます。今回話題となった「焼きそば寒天」のように、麺類を寒天にするという文化は昔からあったようです。

よこて産野菜の宝石箱(提供:横手市役所)
よこて産野菜の宝石箱(提供:横手市役所)

ーーおすすめの寒天はなに?

当地域でも人気の「くるみ寒天」は、寒天になじみのない方でも美味しく食べて頂けると思います。たっぷりのくるみに、砂糖・醤油などで味付けされた甘辛い寒天は、物は違えど「くるみゆべし」のような懐かしさを感じる一品です。

くるみ寒天(提供:横手市役所)
くるみ寒天(提供:横手市役所)

「横手やきそば寒天」は地元も驚く“未知の寒天商品”

秋田県の中でも、県南地域で特に何でも寒天で固める文化があるようだ。最後に、今回、寒天文化が話題になったことについて、おいちさんと市役所の担当者に聞いてみた。

おいちさん:
ツイートのRT、いいねを沢山頂きました。ありがとうございますの一言です。あの投稿で、私の住む横手に少しでも興味を持って頂けたならありがたいなぁ。と思っています。

横手市役所担当者:
寒天文化については、これまでも各メディアで取り上げて頂く機会が多く、我々も非常に独自的な食文化であることを認識しておりました。しかしながら、今回話題となった「焼きそば寒天」は地元の我々が驚くほど、未知の寒天商品でありました。

当地域で食される寒天の数々は、正直他地域の方のお口に必ずしも合うものとは言えません。ただ、食材のありのままの美しさを固めた寒天には、芸術性やかわいらしさなど、昔の女性の「美の感性」が詰まっているものと思われます。

それが、寒天がおもてなしの場面で用いられる理由のひとつとも言えるのではないでしょうか。
県外の方には、味の想像もさることながら、ぜひ見た目の美しさにも、この寒天文化の奥深さを感じて頂けたらと思います。

二色ドーム寒天(提供:秋田県横手市役所)
二色ドーム寒天(提供:秋田県横手市役所)

雪国ならではの保存食として始まったとされる秋田県の寒天文化。そのような中でも「焼きそば寒天」は、地元民も驚く組み合わせだったようで味が気になるところだ。そして、今後どのような食材と組み合わせた寒天がでてくるかも楽しみだ。
 

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プライムオンライン編集部
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