ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響で、さまざまな食品の価格が上がっている。小麦粉の高騰も続き、今後の価格上昇も懸念される中、注目されているのが「米粉」だ。

課題の一方で…グルテンフリーな「米粉」の魅力

米どころ・佐賀の「銘菓」を米粉で作ろうと試作が始まった。

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JA食糧さが 営業課・草場裕文 課長:
京都府の菓子店から、佐賀県産の米粉を使った商品を開発したいとのお問い合わせなどをいただいている。これらを今後の取引につなげて、少しずつでも(米粉の)売り上げ増やしていければというふうに考えています

「JA食糧さが」では、佐賀県で作られた米の販売のほか、2015年からは米粉の製粉・販売をしている。「グルテンフリー」という健康志向の高まりや小麦価格の高騰もあり、JA食糧さがでも米粉の売り上げ数量は徐々に増えているという。

しかし、小麦粉の代用として普及させるには、まだ課題がある。

JA食糧さが 営業課・草場裕文 課長:
原材料や製造方法の違いから、小麦粉よりも価格が高いというところがあげられます。今のままですと、小麦のそのままの代わりっていうのにはちょっとまだならないのかなと

一方で、米粉ならではの強みもある。

JA食糧さが 営業課・草場裕文 課長:
まず、米粉にはグルテンが含まれておりませんので、小麦アレルギーの方でも安心して食べていただくことができます。また、小麦粉に比べて油の吸収率が低いので、揚げ物の衣等に使用していただくとカロリーをおさえることができまして、サクサクとした食感が長く持続するという特徴があります

米粉を使った“佐賀銘菓”を全国へ 老舗の挑戦

県内では、ある佐賀銘菓で、米粉を使った新しい取り組みが始まっている。佐賀市金立町にある、1953年創業の菓子メーカー「本村製菓」を訪れた。

看板商品「丸ぼうろ」の製造に使われる小麦粉は、年間約138トンに上る。6月から、米粉を使った「丸ぼうろ」作りにチャレンジしている。

本村製菓・坂口誠 常務:
小麦粉が高騰していまして、今後の先行きもなかなか見通しが立たない。どうやって今後やっていこうかっていう中で、小麦粉から米粉にシフトするとどういうふうになるだろうっていうアイデアが出ましたんで。まずやってみようかと

坂口常務は、「丸ぼうろは400年の歴史があるお菓子。その大切に受け継がれたレシピを、その主原料をいじるっていうのは、本当にいいのかなと」と、米粉を使うことに躊躇もあると話す。

また、米粉は輸入小麦粉の約2倍の価格が相場だ。しかし価格が安定しているため、商品販売などの戦略が立てやすいという。
そして、米粉だからこそ、期待できることもある。

本村製菓・坂口誠常務:
最近、子どもたちの小麦アレルギーっていうのが言われている。アレルギーの子どもたちも丸ぼうろが食べられるような、そういう商品ができたらいいなって思います

この日は初めての試作。米粉7割、小麦粉3割で配合し、一部の工程は手作業で行われた。

本村製菓 製造部・本田義幸 部長:
(米粉と小麦粉で)触り心地は全然違うなって感じですね。(米粉は)きめ細かくて粘りも違う

通常の丸ぼうろは、そのときの気温や湿度によって焼く温度を調整しているが、今回は原材料が違うため、温度の調整も手探りだという。

本村製菓 製造部・本田義幸部長:
やっぱり焼き具合がどうしても…初めてなので、温度調整、(焼く)スピードとかが全くの未知の世界

「未知の世界」と言う通り、焼き上がりの色が黒くなってしまったものの、最初の試作品が完成した。試食の感想は…

「食感はばっちりです」と、笑顔を見せる作業員。坂口常務を含め、社内での評価はまずまずだ。

本村製菓・坂口誠 常務:
味は良いなと思っています。あと食感も米粉の独特の「モチモチ感」っていうのが出ているので、そこは良いかなと思います

商品化に向け、改善点も出し合った。

「これだと…足らん気がする…中まで…」「スカスカになるてこと?火が通らん?」「うん…生っぽくない?」
現場では意見が飛び交う。本村製菓は6月中に丸ぼうろのレシピを決め、2022年内には商品化し、全国で発売したいとしている。

本村製菓・坂口誠 常務:
関西圏とか首都圏ではなかなか認知度がないんですよ、実は。そういう人たちにも知ってもらえるきっかけが、この米粉の丸ぼうろを開発することで入口になるんじゃないかなというふうには思っています

小麦価格の高騰が続く中、積極的に米粉を使う動きが県内でも始まっている。価格などまだ課題もある一方、これまでと違うターゲットに向けた新商品が生まれるきっかけにもなっている。

(サガテレビ)

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