2022年4月、鹿児島大学に新型コロナを始めとする感染症に関する研究を専門に行う新たなチームが立ち上がった。「感染制御研究ユニット」。新型コロナの研究を行う最前線を取材した。

成果を国に認められ研究室として独立

鹿児島大学郡元キャンパス。共同研究棟の1フロアに、2022年4月に新たな研究室が誕生した。

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野平美奈子記者:
おしゃれですね!

職員:
透明のガラス張りにして、明るく透明感のある研究室にしたいと思いました

新型コロナをはじめ、ウイルス感染症の研究を専門に行う「感染制御研究ユニット」。研究室の責任者は、岡本実佳特任教授。

鹿児島大学・岡本実佳特任教授:
コロナウイルスが重症化する一歩手前でウイルスを排除することによって、コロナウイルス感染症から治る薬の開発を目指しています

研究室で今進められているのは、新型コロナの治療薬の開発。これまでは、医学部のある桜ヶ丘キャンパスで研究が行われていて、新型コロナに有効とされる薬剤が既に数種類 見つかっている。その成果が国に認められ、2022年4月に感染症専門の研究室として独立した。

鹿児島大学の強みは、新型コロナウイルスをはじめ感染症に関する研究の蓄積があることだと、大学の理事は話す。

鹿児島大学・田頭吉一理事:
研究するための施設とマンパワーがあるかどうかが、圧倒的な差になってくる。これまでやってきた感染症の地道な研究が膨大なデータになっていて、それを使いながらやっているというのもある

桜ヶ丘キャンパス時代も含めると、研究室には「薬剤の効果を検証してほしい」と国内外から3,000を超える薬剤が寄せられているそう。

鹿児島大学・岡本実佳特任教授:
20年以上、様々なウイルスの抗ウイルス薬の研究をしていて、様々な抗ウイルス薬の元となる薬剤がたくさん送られてきている。その薬剤を元に、コロナに対する治療薬の研究を始めることができた

1つ1つ手作業でコロナウイルスを加え…

中には、インドの薬学者から検証を依頼された薬剤もある。この薬剤をヒトや猿の細胞に濃度を変えて投与し、その細胞がどのくらい新型コロナウイルスに破壊されるかを検証する。

鹿児島大学・岡本実佳特任教授:
これから感染をさせるので、BSL3という特別な部屋に細胞を持って行きます

ウイルスを扱う際は、空気が外に漏れることのない二重構造の実験室に移動する。

研究員:
ウイルス液を入れていきます

1つ1つ手作業で、コロナウイルスを加えていく。

研究員:
装置の中で培養すると、ウイルスが増えていきます

野平美奈子記者:
培養はどのくらいの期間ですか?

研究員:
今回の実験では3日間です

3日後。インドから送られてきた2種類の薬剤の効果を見比べる。上に行くほど薬の濃度が高く、一番下には何も投与されていない。どちらも、全く薬剤の入っていない一番下は色が透明に近い状態。細胞がコロナウイルスに破壊され、ほとんど死滅していることを意味する。

ただ、左側の薬剤は濃度が低い段階でも右側の薬剤より色が濃くなっていて、少ない量の薬剤でもコロナウイルスから細胞が守られていた。

この結果は機械で数値化され、薬剤を作った研究者に報告される。そしてさらに効果を高めるために、繰り返し実験が行われることになる。

実はこの研究室が、医学部のある桜ヶ丘ではなく郡元キャンパスにつくられたことにも意味があった。

鹿児島大学・田頭吉一理事:
鹿児島大学のひとつのミッションとして、人獣共通感染症の対応を考えた場合に、郡元キャンパスには共同獣医学部があるし、動物病院もある。南九州特有の病気もあるので、こういったことにも対応していく

鹿児島大学・岡本実佳特任教授:
ずっとこのような研究を続けてきたおかげでと言ったら変ですが、急に起こった新型コロナウイルス感染症に対応することができたと思います。感染症に対する研究は、これからもずっと続けていかなければならないと思います

未知のウイルスに研究の蓄積で対応する。新型コロナをはじめ、今後起き得る新たな感染症との戦いも見据えて、鹿児島大学での研究は続く。

(鹿児島テレビ)

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