皆さんは「ダイダラボッチ」をご存じだろうか。
日本の伝承に登場する巨人で、各地に伝説が残っているが、名前が意外な形で登場する場所がある。

それが、茨城県石岡市の井関地区。ここでは毎年の8月16日、地域の人々が「大人形」を作って屋外に設置する風習があり、人形の別称が「ダイダラボッチ」だというのだ。

大人形には迫力ある表情が描かれ、竹槍や刀を持っている姿が印象的。大きさもかなりのもので、いきなり出会ったら驚いてしまうことだろう。

長者峰の大人形
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珍しい光景だが、この風習はどうして生まれたのだろう。石岡市によると、今も大人形を作っているのは井関地区内の2地域(長者峰、代田)のみで、詳細が分かる人も限られているという。

始まりは江戸時代!おまじないだった?

今回は長者峰で約30年に渡り、作り手を担ってきた70代男性に話を聞くことができた。


――大人形の風習が生まれた背景を教えて。ダイダラボッチと呼ぶことはあるの?

伝承になりますが、江戸時代に飢饉が起き、疾病などを地区(集落)に入れないためのおまじないとして作り始めたそうです。設置場所は地区の入口にあたる、道路が交錯する「辻」に建てます。ダイダラボッチは別称で名前の由来はわかりません。私たちは普通に大人形とも呼びます。


――強面で槍や刀を持っているのはどうして?地域で違いはあるの?

表情が怖かったり、武器を持っているのは、集落を守るという意味があるそうです。地域での違いですが、長者峰は女性型、代田は男性型の大人形という違いはあります。長者峰は近くに男根を信仰する場所(祠)が既にあるので、女性型になったそうです。

制作途中の様子。作り手と比べてもかなり大きい

――大人形の実際の大きさや重さはどれくらい?

長者峰の大人形だと、大きさは約2メートルで胴回りが1メートル30センチほどでしょうか。重さは60~70キロはあると思います。代田の大人形はもう少し小柄なものだと思われます。

制作は1年に1回…どのようにして作る?

――いつごろ、どのようにして作っているの?

1年に1回、お盆明けの8月16日に1つの大人形を作ります。作り方は、新しいわらで胴体や手足、指となる部分を作ります。それができたら、トタン板に悪魔が怖がるような顔を描いて取り付けます。竹などでできた槍や刀を持たせて、全身にスギの葉を被せれば完成です。釘などは使いません。制作時間は2時間ほどで、1年間持つようにしっかりとしたものを作ります。前年の大人形はその日のうちに燃やします。

スギの葉を被せている様子

――大人形はどんな人たちで作っているの?

その年の制作の代表となる、当番の家が輪番で回っていきます。当番の家が地域の人たちにお願いする形で、地域の人たちと一緒に作ります。以前は長者峰と代田以外の地域でも作ってましたが後継者不足などでやめるところも出ています。

釘などは使わずに全て手作りだという

――風習を守るために取り組んでいることはある?

石岡市の小学校では、地域文化を学ぶ題材として、子どもたちが大人形の見学をしたり、学校行事に飾るための大人形を作ったりもしています。私たちも作り方を教えたりしています。


――大人形に関連して、伝えたいメッセージは?

昔の人は大人形を、伝染病が流行しないように、悪さなどが起こらないように作ったのだと思います。そう考えると、現代のコロナ禍にも通じるところがあると思います。みんなが安心して平和に暮らせるように、一生懸命作っていきたいですね。

強面な表情には健康や平和を願う思いが込められている

強面の大人形には、人々の健康や平和を願う思いが込められていた。後継者問題で作らなくなった地域もあるとのことだが、この風習がこれからも続いていくことを願いたい。

(画像提供:茨城県石岡市)

プライムオンライン編集部
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