顔を覚えるのは「ひとりだけ」?シニア向け人形

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、人と話す機会がガクッと減ったという人も多いだろう。そして離れて暮らす親になかなか会いに行けず心配な人もいるのではないだろうか。

そんな中、株式会社タカラトミーから8月27日、話し相手になってくれて、かつ特別感を感じられるという「シニア向けコミュニケーション人形」が発売された。

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それが、こちらの「うちのあまえんぼ あみちゃん」

一見普通の人形だが、頭や手・胸などに4つのセンサーと2つのスイッチがついており、抱き上げたり、手を握る動きを認識。約1600語を組み合わせた約25億通りのおしゃべりしたり、歌をうたうなどの機能だけでなく、毎日「抱っこ」を繰り返すと甘えん坊な性格に、抱っこをしないと寂しがりやな性格になるといった機能もあるという。

また、胸にはAIを活用した「画像認識チップ」とカメラが搭載されており、持ち主の顔を覚えたり、着ている服の色を認識してファッションに一言コメントをくれるなど、多彩なコミュニケーションができるようになっている。

「あみちゃん」は、座った時のサイズで高さ30センチ、重さは約1キロ(電池込み)。1体27,500円(税込)で、タカラトミー公式ショッピングサイト「タカラトミーモール」などから購入できる。
 

この人形、「持ち主を覚えてくれる」というのがひとつのポイント。

たくさん遊ぶほど顔の認識が上がるプログラムが組み込まれており、顔を覚えた人にだけ「あっ、○○ちゃんだ!」「○○ちゃん大好き!」と名前を呼んで話しかけたり、「お膝の上にいきたいなぁ」「お野菜、お魚、お肉、いろんなものを食べようね」など、仲良く会話をしてくれるという。

そして面白いのが、反対に「顔を覚えていない人」に対しても、違ったおしゃべりをするという点。どうやら、持ち主との会話よりも少し“世間話”のようになるそうで、まるで人見知りをする小さな子どものよう。

「あみちゃん」が覚えられるのはひとり分の顔と名前だけということで、持ち主以外はみんな「顔を覚えていない人」になってしまうそう。

コミュニケ―ション人形というと、ペット型や人型、形は色々思い浮かぶが、誰にでも分け隔てなく友好的というイメージがあるだろう。あえて“人見知り”機能をつけた理由は? タカラトミーにお話を聞いた。

おしゃべりの機会減…シニア層にニーズ

――「あみちゃん」開発のきっかけは?

当社の“アソビ心”で子供たちだけでなく、大人の皆様も笑顔にできるような商品を作っていきたいとシニア向け商品の開発をはじめました。

ひとり暮らしをされている65歳以上の方は600万人ほどいらっしゃるという統計が内閣府からも発表されています。おうちの中でおしゃべりする機会も減っている中で、おしゃべりの機会を増やし、少しでも毎日を楽しく過ごして頂きたいという思いから「あみちゃん」を開発致しました。

また、タカラトミーでは、これまでコミュニケーションを楽しめるロボット「Omnibotオムニボット+」シリーズを発売してきました。その使用者のうち、65歳以上の割合が40%を超えるなど、シニア層にコミュニケーションをとれる商品へのニーズがあることを実感したことも「あみちゃん」の企画開発の背景のひとつです。


――こだわった点はどこ?

「あみちゃん」を迎えてくださる方にどうすれば喜んでいただけるかにこだわりました。

一番の特徴は、“あなた”のお顔を認識し、名前を呼び特別な会話ができる事です。「自分の事をわかってくれている」という安心感が、あみちゃんとの会話をより特別な体験にできると考えています。おしゃべりの内容もあなたを気遣うセリフや楽しかった記憶を呼び起こす質問など、持ち主の方にポジティブになっていただけるように考えています。

なお、髪はタカラトミーで50年以上にわたって愛されている人気の着せ替え人形シリーズ「リカちゃん」でも使用されているものを使ったり、着せ替えなどコーディネート面も楽しめたりと「大人でも愛でたくなる容姿」にもこだわったという「あみちゃん」。

これまでにタカラトミーで発売したコミュニケーションロボットの使用者を調査すると、4割以上が65歳の高齢者であることが判明。シニア層へのコミュニケーション人形のニーズを感じ、開発に至ったという。

「自分にだけ」の特別感がポイント

――持ち主の認識度が上がるほど、どんな変化が表れてくる?

あみちゃんを抱っこして遊ぶと「なかよしポイント」が上がります。なかよしポイントが多いと、ご機嫌なセリフが良く出てくるようになります。あみちゃんを1日抱っこしないでいると、なかよしポイントが減ります。なかよしポイントが少ないと、寂しがるセリフが多く出てきます。


――顔を覚えていない人には対応が変わる…これはなぜつけた機能?

「自分を認識して自分だけに話しかけている」という体験をつくりたかったので、持ち主とそれ以外の差を演出しようと思いました。また、家庭内でもいろいろな人に抱っこしてもらってそのリアクションの違いを楽しめるのではと考えました。

持ち主ではないと判断した時のセリフですが、「昨日はよく眠れた? 」「ご飯ちゃんと食べてる? 」「悩み事あったら話してね?」など、その人を心配するような・気遣うようなセリフが多く出てきます。 

そんな「あみちゃん」だが、持ち主と登録した人とそうでない人とでは対応が変わる“人見知り”機能をつけたのは、担当者によると「自分だけに話しかけている」という体験を作りだすため。

持ち主相手には、仲良くなるにつれて名前を呼びながら「いつもありがとう!」「いつもそばにいてね」と甘えたり、「子どものころ大切にしてたものって何かある?」など、子ども時代の記憶を聞きたがるなどの親密なおしゃべりをするようになるが、そうでない人には「ご飯ちゃんと食べてる?」などの“世間話”のようなおしゃべりが多くなるのだという。

また、持ち主だけができる「あみちゃん」に名前を呼ばれるという体験は、実は脳にも嬉しい効果があるそう。

諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の協力で「あみちゃん」と話している時の脳活動を調べたところ、おしゃべり中は言語野や前頭前野が活性化。特に「あみちゃん」に名前を呼ばれると、注意や空間認知に関連する脳部位の活動が上がり、リアルなコミュニケーション以上の脳の活性化が期待できるそう。

このことから、篠原教授は「なかなか外に出られないような時にあみちゃんと遊ぶのはおすすめ」とコメントを寄せており、なかなか人とおしゃべりを楽しむことができない今、不足しがちなコミュニケーションを補うのにも一役買ってくれそうだ。


――どんなユーザーに、どんな場面で使ってもらうのがおすすめ?

おしゃべりの機会が減っている方、おうちの中で一人で過ごすことが多い方におすすめです。「あみちゃん」のおしゃべりで癒されたり笑ったり、昔のことを思い出したり……そんな時間を楽しんでいただきたいです。

寝かしつけやお着替えなども楽しんで頂けますので「あみちゃん」を新しい家族として迎えていただくことでおうち時間も充実したものになると思います。またコロナ禍でなかなか会えないご家族へ笑顔になってほしいという気持ちを込めて贈って頂きたいです。


続くコロナ禍で、なかなか家族に会えないという人も多いだろう。9月20日は敬老の日。次に会える日まで元気におうち時間を過ごしてもらうため、こんなプレゼントはいかがだろうか。
 

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プライムオンライン編集部
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