日本は6月10日から、外国人観光客の受け入れを約2年2カ月ぶりに再開した。現時点では感染リスクが低い国と地域から、添乗員付きのパッケージツアーに限定して受け入れている。

入国者数の上限は6月1日から「1日あたり2万人」となっており、こうした緩和でインバウンド観光の活性化が期待されるが、一方で気になるのは、新型コロナウイルスの感染対策と両立できるのかということ。

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観光庁が公表している受け入れ再開に向けたガイドラインでは、基本的な感染防止対策の徹底などを呼びかけている。ただ、日本と海外では衛生面での意識などが違ってくることも想定される。外国人観光客と私たちが共存できる環境は作れるのか。

約3000億円の観光消費が消えた…経済や雇用にも打撃

そこで今回は、海外でも人気の高い観光地である「京都」に注目。コロナ禍の影響、観光課題への取り組みなどを、京都市の担当者に聞いた。


――京都の観光はコロナ禍でどんな影響を受けた?

旅行需要の激減で深刻な状況となりました。京都市の調査によると、市内の宿泊者数(実人数)は2019年は約1317万人でしたが、2020年は約531万人に減少しました。外国人宿泊者数(実人数)も、2019年の約380万人に対し、2020年は約45万人でした。2020年は1~3月まで入国できる状況で、大部分がその間の人数です。

経済面の影響も大きく、2019年の観光消費額は1兆2367億円で、このうちの約27%(3318億円)が外国人観光客によるものでした。こうした消費も失われたことになります。観光が京都市の経済や雇用、地域文化までも支えていたと実感しております。


――外国人観光客にはどんなスポットが人気?コロナ禍の影響はあった?

2019年の調査では、清水寺、二条城、伏見稲荷大社、金閣寺、ギオンコーナー(伝統芸能などを鑑賞できる施設)、嵐山が人気でした。京都を訪れる動機としては、寺社の訪問や伝統文化の鑑賞、食事、自然があげられていたので、文化だけではなく、景観や食も魅力だったと思われます。

嵐山 渡月橋(提供:京都市)
嵐山 渡月橋(提供:京都市)

コロナ禍の影響で外国人観光客をお見掛けする機会は少なくなりました。以前は生活習慣の違いにより一部の外国人観光客のマナーが課題となっていて、誤ったトイレの使い方やごみのポイ捨て、舞妓さんへの無断撮影や接触、竹林への落書きなどがありました。マナー啓発に取り組んだことと併せて、2020年4月以降は入国制限で外国人観光客がほぼいない状況となり、こうした問題は少なくなっています。

観光の分散化、混雑の見える化で感染対策も

――感染対策が気になるが、言葉の通じない外国人観光客にどう呼びかけていく?

基本は国が示したガイドラインに沿った対応になります。多言語対応の公式サイトやSNSで、観光地でのルールやマナーを伝えるほか、エチケットや控えてほしい行動をピクトグラムにして掲示物などで発信しています。現時点では、観光地での規制や指導は考えておりません。

ピクトグラムの一例(京都観光モラルの資料より)
ピクトグラムの一例(京都観光モラルの資料より)

――夏休みシーズンの混雑対策はどう考えている?

(1)時期、(2)時間、(3)場所において、観光の分散化に取り組みます。具体的には、(1)は真夏など観光客が少なくなるときに観光キャンペーンを実施します。(2)は早朝の拝観、夜間のライトアップなど朝夜を楽しめるプランを用意します。(3)は京都の多様なエリアの魅力を発信します。

このほか、混雑状況をリアルに分かる取り組みもします。京都観光オフィシャルサイト「京都観光Navi」において、ビッグデータを基にした、市内観光スポットの観光快適度を良くし、5段階表示しているほか、ライブカメラによるリアルタイム映像を発信します。こうした混雑対策により、密を避けて観光していただくことは、感染対策にもつながると考えています。

観光快適度や現地の状況をライブカメラで確認できる(「京都観光Navi」より)
観光快適度や現地の状況をライブカメラで確認できる(「京都観光Navi」より)

――海外と日本で感染予防の意識に違いなどは起きない?

ご指摘の通り、海外ではマスク着用の義務が撤廃されている国もあるので、意識の違いが起きることはあり得ると思います。国のガイドラインに沿って、多言語対応のサイトやSNSを通じて、日本でのルールの周知などで対応していきたいと考えております。


――外国人観光客に感染が疑われた場合は?

外国人観光客で感染が疑われる場合、「きょうと新型コロナ医療相談センター」(075-414-5487)に電話していただき、医療機関受診の相談をしていただくことになります。多言語でお電話がつながるので、まずはここにご相談いただく形になります。

活気を戻しつつも、混雑やマナーなどの観光課題は戻さないように

――外国人観光客の受け入れ再開をどう受け止めている?

京都は2022年3月のまん延防止措置の解除以降、徐々に活気が戻りつつありますが、コロナ禍前に比べるとまだまだの状況です。受け入れ再開は大きな一歩ですし、外国人を迎えることは他国との相互交流や理解を通じて、国際親善、国際平和にもつながります。宿泊や観光消費での経済の活性化にも寄与していただけると思います。


――受け入れ再開に関連して、伝えたいことは?

観光課題が生じていたコロナ禍以前の状態に戻さないよう、対策にしっかりと取り組みます。京都市と京都市観光協会では、京都観光行動基準(京都観光モラル)」(京都が京都であり続けるため、観光客、市民、観光事業者とともに大切にしていきたいこと)を策定し、普及と実践に努めています。

【京都観光モラルにおける「観光客向けの行動基準」の概要】
・地域のルールや習慣を尊重して行動する
・地域の自然環境や景観に配慮し、環境にやさしい観光を行う
・京都の人々や地域と積極的にふれあう
・災害や感染症、事故などに注意し、適切に行動する

観光客向けの行動基準とその例(京都観光モラルの資料より)
観光客向けの行動基準とその例(京都観光モラルの資料より)

京都は市民の暮らしや地域の習慣を尊重したり、自然や環境に配慮する行動を呼びかけ、市民生活と観光が調和し、SDGsにも資する持続可能な観光を目指しています。そんな京都の観光に共感いただく観光客の皆様をあたたかくお迎えできればと思います。


――感染対策と観光をどのように両立していく?

感染症対策は非常に重要と考えております。これからの観光は観光客、市民、観光事業者の皆様の安心安全が大前提となるでしょう。感染時の相談ができる体制、感染対策の周知に取り組んだ上で、市民生活との調和を図りながら、観光の回復を図っていければと思います。

新たな生活スタイルでのエチケット「まちけっと」(京都観光モラルの資料より)
新たな生活スタイルでのエチケット「まちけっと」(京都観光モラルの資料より)

外国人観光客が本格的に訪れるのはこれからだが、京都が人気スポットとなるのは間違いないだろう。感染対策とにぎわいとのバランスをうまくとっていくことに期待したい。