自民党の西村康稔前経済再生担当相と国民民主党の玉木雄一郎代表は5日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、ロシアによるウクライナ侵攻で世界的な食料危機の恐れが高まっていることや、日本国内での物価高対策などについて意見を交わした。

ロシアが黒海の港を封鎖し、ウクライナの穀物が輸出できず、アフリカなどで飢餓発生の恐れが高まっている。これに関し、玉木氏は、発展途上国が中国の「債務の罠」に陥っている中で、穀物価格が高騰すると、さらに中国が支援の名の下に手を伸ばす可能性があると指摘。先進国が積極的に支援に乗り出し、特に日本が旗振り役として世界に先駆けて発信するべきだ、と主張した。

慶應義塾大学の廣瀬陽子教授は、「小麦の問題は非常に深刻だが、ロシアとベラルーシの肥料も輸出されない状態だ。今夏の干ばつも危惧され、早急に対応しなければ来年各地で飢餓が起こることが想定される」と警鐘をならす。

西村氏と玉木氏はいずれも対ロシア経済制裁の強化で一致。西村氏は、エネルギー価格高騰を受け、原子力発電所を再稼働させる必要性を強調した。「原発1基を動かせば、LNG(液化天然ガス)100万~150万トンくらい(輸入の)必要がなくなる。価格も全体的に下がる」と述べた。

玉木氏は、ロシアからの化石燃料の輸入で、毎年何千億円もの対価をロシアに支払っており、それが武器弾薬や長期化する戦費の調達にまわっている、と指摘。経済制裁を効果的にするため「日本も覚悟を決めないといけない」と述べ、原発再稼働を含む国内の電力安定供給のメカニズム構築を前提に、ロシアからの化石燃料の全面禁輸に踏み切るべきだとの考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

木下康太郎キャスター(フジテレビアナウンサー):
ロシアによる黒海の港の封鎖でウクライナは輸出量世界5位の小麦、同3位のトウモロコシなど2,000万トン以上の穀物を輸出できない状況になっている。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は「ロシアはエネルギー供給と同様、食料供給を武器として利用している」と批判。プーチン大統領は「ウクライナの穀物輸出などで協力する用意はあるが、当然、制裁の解除が必要だと話した」と述べたとされる。

廣瀬陽子氏(慶應義塾大学教授):
今ロシアは諸外国からの経済制裁に非常に苦しんでいる側面があるため、制裁を解除させるため、食料問題を武器にしている。小麦の問題は非常に深刻だが、世界の農業に必要なロシアとベラルーシ肥料も輸出されない状態だ。今夏は干ばつも危惧され、来年の穀物事情は非常に深刻になる。早急な対応をしなければ、来年各地で飢餓が起こることが想定されている。プーチン大統領はますますこの食料問題を武器にしてくる可能性が高い。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
ロシアとの戦闘はウクライナ国民に委ね、血を流さずに国際秩序が維持されることで利益を受けるのは日本を含む西側諸国だ。さらに経済制裁でロシアを追い詰める戦略で行くのであれば、この制裁で経済的に苦しむアフリカ諸国を放っておくのは無責任だ。我々西側諸国は、自ら価格高騰のリスクを負うと同時に、アフリカなど食料問題で危機的な状況になっている国について、ウクライナへの武器供与やその他の支援と同じぐらいの支援をするべきだ。

玉木雄一郎氏(国民民主党代表):
日本はウクライナから小麦をほとんど輸入していないので、日本への直接的な影響はあまりないが、途上国には非常に影響がある。苦しむ発展途上国を国際社会でどう支えるのか。中国が出て行く可能性がある。そもそも中国に非常に依存して「債務の罠」にある中で、穀物価格が高騰すると、また中国が支援の手を伸ばすという国際的秩序の変化も起きてくる。去年8月にIMF(国際通貨基金)が約6,500億ドルの融資枠を日本を含む各国に割り振っている。日本を含む先進国はこれを積極的に活用して経済的支援をしていくべきだが、イニシアチブを発揮できていない。日本は旗振り役として、G7(主要7カ国)、IMF、世銀、あるいは国連と組んで今こそしっかりとした支援を世界に先駆けて発信すべきだ。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
戦況は一進一退が続いている。これをどういう形で停戦に持って行くべきか、あるいは徹底抗戦すべきなのか。

玉木氏:
これはなかなか難しい。日本としてやれることは非常に限られている。今はロシアの継戦能力をいかに奪うかという意味で、日本は各国としっかり経済制裁をやっていく。日本としてある程度覚悟を決めなければいけないのは、石炭、原油、天然ガスを引き続きロシアから買い続けるのか。その対価として、多いときは1年間に何千億円もロシアに払っており、いまなお払っている。それが一方で武器弾薬の購入や長期化する戦費の調達にまわっていることも事実だ。欧米諸国と連携して対応していく必要はあるが、本当に早く侵攻を終わらせるため、経済制裁を効果的にするということであれば、日本は踏み込んで行かないと。一方でロシアからいっぱいエネルギーを買って、対価としていっぱい払って、一方で経済制裁だというのは、そろそろ日本としても限界なのではないか。エネルギーの安定供給で言うと、原発を動かすかどうかという議論もあるが、国内でしっかりとした安定供給のメカニズムを作った上で、腹決めて入って行かないと、ただただダラダラ続くだけになってしまうのではないのか。日本の態度も問われている。

松山キャスター:
物価高という形で日本も煽りを受けている。今年1万品目以上の値上げが決まっており、平均値上げは13%。肥料の価格も急騰している。物価高対策をどうすべきか。

西村康稔氏(自民党新型コロナ対策本部長、前経済再生担当相):
ロシアに対しては制裁を強化して行くべきだ。ロシア国内で様々なものが足らなくなったり、値段が上がったりしている。制裁強化は賛成だ。国内では安全性をしっかり確認した上で原発を動かしていく。一基動かせば、LNGが100万トンとか150万トン位必要なくなるので、その分の価格も全体に下がってくる。もちろん電気料金も下げることができる。エネルギーの安全保障を確保しながら、制裁を強化していくというのはなかなか難しい判断だ。中国などを利することになりかねず、難しいところだが判断していく必要がある。円安は日本経済全体としてはプラスだ。税収も今年は過去最高65兆円を超えるのではないか。全体としてはプラスだが、全員プラスではない。全体と全員を分けて考えなければいけない。プラスの人もいれば、物価高で非常に厳しい状況の人もいる。そういう人々に目配りをしながら、しっかり対策を打っていく。

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