SDGsの「17の目標」のなかに「ジェンダー平等の実現」があるが、ボートレースはまさに男女平等のスポーツだ。同じ機材を使い、男女混合のレースが行われる。
そのボートレースで活躍する静岡県出身の女子レーサーは、もう一つのSDGs目標にも取り組んでいる。
男女平等に魅かれて
エンジンがうなりをあげ、水しぶきをあげながら戦う「ボートレース」。1周600mを3周する。一瞬の駆け引きが勝負を分ける、“水上の格闘技”とも呼ばれる激しい競技だ。
この記事の画像(10枚)その厳しい世界に身を置くのが、静岡・森町出身の森下愛梨選手(25)だ。5年前、この世界に飛び込んだ。
森下愛梨選手:
実力勝負ですね。厳しいですけど、勝てたときの喜びはすごく大きい
ボートレースの歴史は古く、終戦から7年後の1952年に設立され、当時から男女混合でスタートした。
現在、全レーサー約1600人のうち15%が女子レーサーだ。女子選手限定のレースもあるが、多くは男女混合のレースだ。
性別による体格差や健康面へ配慮し、「男子52kg以上、女子47kg以上」と体重制限の違いはあるが、それ以外は同じ条件で競う。使用する機材も同じだ。
つまり、ボートレースは古くから「性別にとらわれない競技」であり、森下選手もそこに魅力を感じていた。
森下選手:
年齢も関係ないし、男女平等。すごくないですか。ボートレーサーを目指す時に、男女が一緒に戦えるところがすごく魅力的で。体格差や体力面では男性に負けてしまうところもありますが、一緒に戦えるところがすごく良いと思って
報酬も男子と同じ…女子レーサーは30年で2倍に
もちろん、賞金額にも差はない。女子レーサーの年間獲得賞金額の平均は約1205万円(2020年)だ。他のスポーツでは、同じ競技でも男女間で人気や力に差が出て、それが報酬に反映されることもある。
しかし、ボートレースは男子選手と同等の報酬を得られるとあって年々志望する女性は増加。2022年1月現在の女子選手は241人と、30年前の129人比べ2倍に増えた。競技人口が増えることによりレベルも向上した。
2022年3月のSGボートレースクラシックでは遠藤エミ選手が優勝し、ついに最高峰のレースで女子選手が優勝するまでになった。同じ条件で戦える環境が、男女をより対等にしたのだ。
森下選手:
活気がありますよね。先輩方が強いところで戦っている背中を見て、私もそうなりたいと思えるし、もっと上の世界に行ってみたいと思える環境になっている
応援してもらった恩返しを
勝負の世界に身を置きながら、森下選手はいまボートレースの活性化や社会貢献にも目を向けている。
森下選手:
私は長嶋万記さんという師匠についていますが、長嶋さんが寄付活動をしているので、見ているうちに私もやりたいなと思って
未来ある子供たちに輝いてほしいと、2年前から自分で制作したTシャツなどのグッズの売上げの一部を児童養護施設に寄付している。
森下選手:
身近に(慈善活動を)やっている方がいると、後輩たちにも良い影響がありますし、人に応援される競技なので、応援に応えたいという思いもあるし、もっと広い視野を持って稼いだ賞金を寄付したり(応援の)恩返しの意味で活動している方が多いと思います
子供たちの未来を作り、ボートレースへの関心を生み、そして結果として競技全体が活性化する。
“広い視野”を持つことが、SDGsにもつながっている。
(テレビ静岡)