目の前で何が起きたのか、一瞬わからなかった。それは、米メジャーリーグ「メッツ」の本拠地・ニューヨークで行われた始球式で起きた。

マウンドに向かうも…

5月13日、ニューヨーク・メッツ対シアトル・マリナーズの試合前、日本コミュニティに敬意を表するイベント「ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト」の一環で始球式が行われた。

登場したのは、ニューヨーク総領事館の森美樹夫総領事。マウンドに向かい、場内アナウンスで紹介された。

森総領事は場内アナウンスで紹介されマウンドへ
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ところがマウンドでは、すでにメッツのマックス・シャーザー投手が剛速球で投球練習をしている。明らかに状況がおかしい。

森総領事の横でマックス・シャーザー投手がマウンドで投球練習を始めていた

シャーザー選手の視界には、森総領事が全く入っていなかったのだろうか。

森総領事は第1球を投げる合図を待っていた

ハプニング映像が拡散、ネット上で論争も

結局、森総領事はマウンドにあがれないまま呼び戻された。関係者の間には困惑が広がる。同時にネット上にもこの様子が拡散し、「なぜシャーザー投手はマウンドを譲らないんだ」「視界に入っていないのか?」「いや、始球式は選手たちがフィールドに出る前に終了すべき行事だ」「この人は日本のニューヨーク総領事なんだぞ!」といったコメントの投稿が続く。

始球式ができないまま呼び戻された森総領事

残念なことに、地元メディアの実況は事態を軽く受け流したやりとりだった。
「少し雨が降っているが……」
「マックス(投手)がいる間は、誰も始球式なんてできないね」
「まあ、このマウンド上ではね、はははははは」
「マックスは集中してて、何も、全く見えていない」
「この人(※総領事のこと)、うろうろしているけれど」
「いや、始球式はナシだな…今夜はね。まあ、いつかきっとね」
「あ、クビにされちゃう!」

メッツは謝罪

この事態にメッツ側は謝罪する声明を出した。

「内部の事情で始球式のタイミングと進行を妨げてしまった。ミスコミュニケーションについてお詫びし、総領事が将来また始球式ができるよう調整している」

どうも、雨や関連イベントの遅延で始球式の開始が生放送にずれ込み、直前までスタッフに伝わらなかったようで、広報担当者も「前代未聞です」と平謝りだった。

メッツ側は「前代未聞」と謝罪

森総領事「正直、あれ?って…」

この「前代未聞」のハプニングの翌日、森総領事に話を聞いた。

森総領事「阻害にならないように後処理をしていきたい」

森総領事は「メジャーのピッチャーの投げる球をあの距離でみるのはスゴいですよ」と大人な反応もしてみせたが、当時の心境について「正直、あれ?っていう感じだった」と語った。

森総領事「球をあの距離で見るのはすごいですよ」とオトナな反応も

実は、始球式を行うには球団側と契約が存在する。謝罪は別として法的な問題もあり、さらに球団側からの詳しい経緯の説明が必要だ。しかし、森総領事は「一番大切なのはみなさんの気持ちを盛り上げることですから」と前向きだ。

2022年はアメリカから日本へ野球伝来150年という記念すべき年だ。

限定キャップ入手に子供たちも大喜び

メッツ側はこの日のために日本の国旗とサクラがモチーフの限定キャップを1500個用意し、球場にも多くの日本人や日系人のファンが詰めかけた。

「メッツ」と「阪神」と「日本」ファン?

メッツは親日な球団で、始球式の翌日、14日に行われた初の「ジャパン・パレード」にもメッツのマスコットが参加した。

日の丸を手に行進したメッツのマスコット「ミセス・メット」

「“幻の一球”となってしまったね」と話す森総領事。次回の「再登板」に向けて練習する日々が続きそうだ。

電光掲示板に「ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト」の表示

【執筆:FNNニューヨーク支局長 弓削いく子】

【動画で見る】ニューヨーク総領事の“幻の一球”

弓削いく子
弓削いく子


FNNニューヨーク支局長。ニューヨーク市生まれ。1993年フジテレビジョン入社、警視庁、横浜支局、警察庁、社会部デスクなど、駆け出しは社会部畑。2010年からはロサンゼルス支局長、国際取材部デスクを経て現職。

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