沖縄が本土に復帰してから50年を迎えた5月15日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、与野党の論客を招き、沖縄が基地負担軽減を求められる一方で、安全保障面で重要性が増し続ける皮肉な現実について議論した。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、台湾有事への懸念が高まる中、台湾海軍による演習の回数が増えている。台湾に最も近い与那国島の漁師たちは、演習エリアによっては安全のため休漁を余儀なくされるケースもあるという。

与那国島では、有事に備え、国民保護法に基づき、島民の避難計画が作成されているが、避難は島内の港や空港まで。その先、島外の避難経路については何も決まっていない。有事に際し設置される政府対策本部の指示を待つ必要があるという。与那国島の担当者は、有事に沖縄本島に避難するのか、本土に避難するのか、準備をするためにも決めてほしい、とため息を漏らす。

有事の住民避難計画について、番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は、国民保護法は自然災害での避難対策と変わらない、と指摘。「ロシア・ウクライナ戦争を見れば、一般行政が一般市民(非戦闘員)を避難させるのは無理。実力組織が周りにいないと(市民は)避難できない」と断じた。その上で「自衛隊に、有事に一般市民を保護・避難させる部隊を(国外退避できない)島国・日本だからこそつくらなければいけない」と強調した。

自民党の新藤義孝政調会長代理は、有事の際に強制力を持って一般市民を退避させるためにも憲法を改正し、緊急事態条項を設けることが必要だと訴えた。「有事の際に、みながきちんと避難する。命令に従ってもらう。いざという時、本当に厳しい時はその態勢をつくらなければならない」と話した。

衆院安全保障委員会の野党筆頭理事を務めたこともある、立憲民主党の後藤祐一役員室長は、憲法改正の議論は大事だ、としながらも、台湾有事や朝鮮半島有事の際の在留日本人をどう救出するかの議論や、沖縄や与那国島などから住民を避難させる対応能力を持つための議論を優先すべきだと主張した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
与那国島の取材から(南西諸島などの)離島からの住民避難に様々な課題があるのが見えてきた。有事の島外避難は国の対策本部設置後に詳細が決定されるという。果たしてそれで時間的に間に合うのか。

新藤義孝氏(自民党政調会長代理、衆院議員):
国民保護法では国が(避難の)指示をすることになっているが、その大前提は市町村がつくる計画だ。それを県庁がまとめ、国が承認する。与那国島が心配し、沖縄県の要請に国が動かないという事実があるなら、すぐに対応させなければならない。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
国民保護法の中身は、通常の一般行政の対応になっている。自然災害対策とあまり変わらない。ロシア・ウクライナ戦争を見れば、どう考えても実力組織を持たない一般行政が一般市民(非戦闘員)を避難させるのは無理だ。反撃力も、抵抗力も、攻撃力も重要だが、一般市民の犠牲をどれほど少なくして避難させるかが、国防の二本柱として重要なのに、これまで反撃力ばかりが議論されてきた。沖縄戦を考えれば「有事の一般市民の犠牲はやむを得ない」ということは絶対あってはならない。ここは是非、政府、与野党にお願いしたい。自衛隊に攻撃力、反撃力の部隊だけではなくて、有事に一般市民を保護、避難させる部隊を島国、日本だからつくらなければいけないのではないか。日本は、国外退避できない。領土も狭く、安全地帯も少ないわけで、反撃力と同時に「避難力」を議論の焦点にしてもらいたい。

新藤氏:
前段の話は特に重要だ。橋下さんは、国民保護法は平時の法律であり、一般の災害対処と同じだと指摘したが、まさにその通りだ。憲法改正、緊急事態条項(の設置)はそのためにある。有事の際は、移動の自由にある程度制限をかけても強制的に移動してもらわなければならない。それはわが国の法律にはない。だから緊急事態条項を設定しなければならない。立憲民主党は「(緊急事態条項は)必要ない」「国民保護法に(住民)保護態勢がある」というが、それは災害や感染症という一般「平時」の状態だ。有事の際に命令に従ってもらい、皆がきちんと避難をする。いざという時、本当に厳しい時はその態勢をつくらなければならない。

後藤祐一氏(立憲民主党役員室長、衆院議員):
台湾にも2万5,000人ほどの日本人が住んでいる。台湾有事の際、どのように救出するのか。当事国の同意がないと自衛隊は出せない。台湾有事での当事国の同意とは、台湾の同意なのか、どこの同意なのか。政府に尋ねても答えない。憲法改正の議論は大事だ。しかし、台湾有事での台湾にいる日本人の救出、あるいは朝鮮半島有事での韓国在住の日本人の救出、国内、与那国、あるいは先島諸島全体、沖縄全体かもしれない、この救出のキャパシティ(対応能力)をきちんと持つことの議論が先ではないか。

新藤氏:
以前、私は自民党国防部会長の時に「非戦闘員の退避計画を作れ」と指示した。これ、通常の国にはあるが、日本にはない。それを自衛隊法にどう位置づけるか。当初の「安全が確保された時に輸送する」から、「必要に応じて日本人を避難させる」というふうに法律の解釈を直した。だが、やはり根っこの議論をしないと、現実問題として(対応)できない。

後藤氏:
国民保護法制は当時の民主党も賛成して作ったので、法律的にはもう用意されている。その法律に基づいて国民保護計画を県がつくり、市町村がつくる。与那国の計画も読んだが、最後の(島外避難の)船はどうなっているのか、そこは「分からない」となっている。法律はある、計画はある、だけど実態はまったくできないというのが現実で、この問題は法律が足りないということではない。

橋下氏:
ここはいつも日本の政治行政の欠点だ。知床の観光船事故もそうだが、様々な対策があるのにきちんとそれを実行あらしめる仕組みができていない。国民保護法の計画はできたとしても、ロシア・ウクライナ戦争を見れば、避難させる際に実力組織を持った部隊が周りにいないと避難はできない。あとは民間にお願いしますなどできない。飛行機も150名乗りなどではなく、それこそ定員300名、400名の輸送機で2~4回ほどで全員避難させるなど、ぜひこの議論をやっていただきたい。ウクライナ東部地域も、ようやく非戦闘員を戦地から避難させることができるようになり、今、東部地域でウクライナが反撃に出ている。戦地から非戦闘員を退避させないと戦闘はできない。ここは、新藤さん、計画ができているからいいではないか、ではなく、ぜひ新しい部隊づくりを含めて、実力組織をもって本気で国民を守る、逃がすという観点で、反撃能力だけではない国防を議論し、実行してもらいたい。

新藤氏:
それはその通り。

松山氏:
先の大戦では新藤さんの祖父、栗林忠道陸軍中将(のち陸軍大将)が硫黄島の戦いで、米軍上陸前に住民約1,000人を疎開させた。

新藤氏:
現実に国民を保護し、救わなければいけないのは国の役目だ。これは待ったなしでやらなければいけない。しかし、それを確実にやらせるためには、普段の訓練や態勢が必要で、それは強制力を持ったものでない限り、結局は要請にとどまり、最後は地元に委ねますといってなかなか踏み込めないのが現実。今はまず差し迫った計画を作ることが優先だ。しかし、合わせて、それが効果的に動くための前提として国が責務として確実にやるという法的な担保をつけなければ、行政組織はきちんと動かない。ウクライナは憲法に基づいて緊急事態を布告し、戒厳の命において移動制限や国民保護をやっている。橋下さんと同じように私も沖縄戦に心を痛めている。硫黄島は(島民を)強制疎開させた。当時、その権限があったからだ。そのことは沖縄でもできたが、日本軍はやりきれなかった。当時、実は米軍側も(島民退避を)考えていた。米国も軍内部で一般市民を分けようということはあったが、米国はやらなかった。戦争中、日本と米国ともに結局非戦闘員の退避をやりきれなかった。権限はあったのにやりきれなかった。これが戦争の現実だ。(有事では)とにかく結論だけ早く出せというふうになるのだが、結論を出させるためには法治国家である限りきちんとした準備がなければ実効性は出ない。これは極めて重要だ。

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