佐賀市富士町で30年以上放置され、荒れ果てた田んぼ、いわゆる“耕作放棄地”が人気キャンプ場として生まれ変わった。
高齢化や農業の後継者不足に伴い、増え続けている耕作放棄地の問題解決だけでなく、コロナ禍でも安心して楽しめるキャンプ場として、注目が集まっている。
「1日1組限定」半年で250人 2ヶ月待ちの人気キャンプ場に変身
2021年10月に佐賀市富士町の通称・音無(おとなし)地区にオープンした、その名も「むおんきゃんぷ」。2カ月先まで予約が埋まるほど、いま、人気を集めている。
この記事の画像(16枚)利用客:
隣のグループを気にしなくていいのが、ここの一番の魅力
2021年10月にオープンし、半年でおよそ250人が訪れた。
むおんきゃんぷ・藤田健臣さん:
ここ本当にね、荒れ地でね。何も利用していなかったから、来るのはイノシシとかタヌキくらいだったけど、今こうやっていろいろな人が来てくれてよかったなと思う
コロナ渦でゲストハウスの客足激減…目をつけたのが耕作放棄地
実はこの場所、30年以上放置された田んぼ、いわゆる“耕作放棄地”だった。
地元で建築士として働く傍ら、ゲストハウスを営んでいる藤田健臣さん(65)。新型コロナの影響で客足が激減した中、目を付けたのが耕作放棄地だった。
むおんきゃんぷ・藤田健臣さん:
これが昔の写真です。こんなに荒れていて放置されていた田んぼだった
むおんきゃんぷ・藤田健臣さん:
田植えの時期から秋の収穫の時期まで、本当に景色がきれいなんですよ。だからここだけ荒れていると…整備したいという思いがあった
耕作放棄地は、高齢化や農業の後継者不足に伴い増え続けている。県内でも1985年と比べると、およそ5倍にあたる5,069ヘクタールまで急増している。
“田んぼ”の活用に苦労も… 転用手続きに3ヶ月
しかし“田んぼ”は、一足飛びに他の用途で活用することはできない。
むおんきゃんぷ・藤田健臣さん:
書類を付けて“農地転用”の手続きをしないといけない。なかなか大変なのでみなさんやっていないのかも。メジャー片手に測って、絵を描くところから始めた
手続きは住民の承諾だけでなく、汚水の処理に関しては特別な申請や工事が必要な場合もあり、難航するのが現状だ。
藤田さんはおよそ3カ月かけて“雑種地”へ変更した。学生の頃からの趣味が高じて、キャンプ場のオープンにこぎつけた。
「交流人口を増やし移住への足がかりに」地元住民もサポート
この日町内の住民から、軽トラックいっぱいのまきが無償で届けられた。
地元住民:
大歓迎です。町内にできるだけ出入りしてもらって、皆さんに楽しんでもらうのが第一
このほかにも敷地内にあるベンチは全て譲り受けるなど、住民の協力が活動を後押ししている。
キャンプ場は県内では珍しく、1日1組限定だ。
利用した男性:
ここに来たら他の所に行けないくらい、佐賀で(キャンプ)に行くならここが一番いい
利用した男性:
広さもあるし、なんといってもこの静けさで、これぞ“現実逃避”。ここじゃないと味わえない感覚があってすごくよかった
利用した男性:
近くに温泉があるので、それもキャンプの楽しみ
かつては約500平方メートルの耕作放棄地だったキャンプ場。藤田さんは地域への観光客を増やすことで、移住への足がかりになればと話す。
むおんきゃんぷ・藤田健臣さん
交流するような場がいっぱいできて、最初、移住はハードルが高いので、交流人口をちょっとずつ増やしてその中から来てもいいなと思う人が増えたら
(サガテレビ)