2021年10月頃から、沖縄に漂着し始めた大量の軽石。沖縄県内の水産業は大きなダメージを受けた。

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県内一のもずくの生産量を誇るうるま市の勝連漁協では、毎年4月頃から本格的なもずくの収穫が始まる。

大量の軽石に原油高騰 もずく収穫に暗雲

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
頑張ってきたのが実になっているから、食べる人が増えてくれたら良いな

2021年11月。うるま市の勝連漁協の漁師たちは総出で、もずく網を張るため津堅島へ向かった。島や勝連半島には大量の軽石が漂着していて、自らの手で軽石の除去作業を続けていた。

漁師:
船の循環に(軽石が)入って、これが詰まってエンジンがダメになる。取れるとこは取っておいて、少しでも被害を少なくしないといけないと思って

一見するときれいな海だが、海中には無数の白い粒が漂っていた。細かくなった軽石だ。

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
海の中では軽石が浮いている状態なので、潜っている最中に船が故障ということもありましたね

軽石の漂着はいつまで続くのか。先行きは見えないままだが、春先の収穫に向けて網を張る作業は始めなければならない。勝連漁協では、船のエンジンが軽石で故障し動けなくなった場合を想定して、1隻でなくグループで出港する体制を取ることにした。

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
毎日、船1隻ではなくて2~3隻とか、グループで行くようにして。仕事ができないとなると、前に進まないからこの先不安なんだけれど…

問題は軽石だけではない。この時期、すでに原油価格が高騰し船の燃料費を直撃し始めていた。

船を出せば出すほどコストがかさみ、ウミンチュたちはもずく漁を成功させなければと不安や焦りの中で準備を進めてきた。

漁師の努力に応えて成長 収穫に向け最後の追い込み

漁がスタートして約2カ月後、ようやく明るい兆しが見えてきた。県内の軽石の漂着状況は少しずつ改善に向かい、勝連漁協でも漂着する軽石が次第に減ってきた。

2021年12月に設置されたもずくは、漁師たちの努力に応えるようにすくすくと成長。収穫はもう目の前だ。

この日は海底に張った網の間隔を広げてもずくの成長を促した。収穫に向けた最後の追い込みだ。

毎年、3月から5月にかけて収穫されるもずくは通称「早摘みもずく」と呼ばれ、強いぬめり気としっかりした食感が特徴。勝連漁協にとってまさに看板商品だ。

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
今年は結構順調じゃないかな、みんな。「自分たちのもずくを食べてほしい」という気持ちが強い漁師たちは大勢いる

初摘み量は例年の半分「ぜひ食べてほしい」

2022年4月6日、待ちに待った収穫の日がついにやってきた。

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
これまで育てたもずくを最後に水揚げする。これを売って自分たちの給料になる。頑張らないといけない時期だね

海底に張られた網からポンプに繋いだホースを使って、丁寧にもずくを吸い上げていく。収穫されたばかりの「早摘みもずく」はこの時期にしか食べられない海の幸だ。

記者:
こちらが今とれたばかりのもずくです。一本一本、食感がしっかりわかるくらい弾力があって、すごく美味しいです

この日の収穫量は2.5トン、例年の初摘みの約半分以下の量。新型コロナの影響による消費の落ち込みが続き、もずくの需要もいまだ回復していないため、収穫量を抑える必要があるからだ。

1キロあたりの値段も以前の半分まで下がっているが、それでも美味しいもずくを届けたいという強い思いは変わらない。

勝連漁協津堅支部 支部長 稲福正也さん:
やっぱり、今まで難儀してせっかくここまで育てたもずくだから、収穫は一番楽しいわけ。もずくの質も上等、太くて歯ごたえも良い食感なので、ぜひみなさんに食べてほしい。今の時期しか食べられないから

軽石の影響をめぐっては、ひじきの名産地である与那原町と西原町で今年の出荷を断念するなど、水産業に大きな被害を与えている。

勝連漁協のウミンチュたちは、きょうも軽石と闘いながら海に潜る。

(沖縄テレビ)

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