「クローン病」とは、口から肛門までの全ての消化器官に炎症が出る病気で、原因は不明。治療法も確立しておらず、国が難病に指定している。
10代や20代で発症する人が多く、現状では一生付き合っていかなければならない。長崎県内で暮らすクローン病の若者を取材した。
国内だけで4万人以上
長崎県中央部にある諫早市。ここで妻、娘と暮らす黒田幸輝さん(27)はこの4年間、食事のあとに必ず飲むものがある。
黒田幸輝さん:
あんまりおいしくない。一番しっくりくるのがヨーグルト味。でもやっぱりおいしくはない。みんなが想像するよりは。普段の生活では、意外とこれが苦痛だったりする
体の免疫力を抑える薬や栄養剤が欠かせない。症状を抑えるための薬だが、免疫力を下げてしまうため、新型コロナウイルスへの感染リスクも高く、日々不安を抱えている。
黒田幸輝さん:
180度と言っても過言じゃないくらい生活は変わった。アルコールも飲めなくなったし、食事も揚げ物が大好きだったけど、そういうものもとれない環境下に変わった
人生が一変したのは4年前、24歳の時だった。
黒田幸輝さん:
午前中は元気だけど、午後から体調が悪くなるというのが増えてきて。口内炎がたくさんできたりして、病院を転々と回されて、全然診断がつかないということがあって。まさかクローン病が原因だとはわからなかった。勤め先での定期健康診断をきっかけに、難病のひとつ「クローン病」と診断された
食べ物に含まれる成分に体内の免疫機能が過剰に反応し、口から肛門までの全ての消化器官に炎症が出る病気で、10代や20代で発症するケースが多くみられる。
しかし、原因も治療法も確立されておらず、国内だけで4万人以上が苦しんでいるといわれている。
病気と長く付き合う苦労 食事は野菜中心
黒田幸輝さん:
何で自分が難病なんだろうとびっくりしたのと、受け入れたくないというのがあった。仕事を休ませてもらったり、食事ものどを通らなかったり、一日中トイレに籠ったり…。そういう生活をしています
職場では黒田さんの病気を理解しているが、欠勤が続くと申し訳なさでいっぱいになるという。立っていられないほどの腹痛や高熱が何日も続くこともあり、体重は発症前から10kg落ちた。
主治医:
発症する患者は若い方が多いので、病気と付き合っていく期間が非常に長い。治療を受け続けるというのが大きな苦労だと思う。黒田さんは仕事や子育てを頑張りつつ、治療も根気よく受けていただいているので、それによってまだ胃腸がひどい状態になることなく保てていると思う
妻が作る日々の食事が黒田さんを支えている。消化の負担とならないように、油を使わない野菜中心のメニューが並ぶ。この日の昼食は、野菜のコンソメスープに豆腐のハンバーグだ
黒田幸輝さん:
妻には同じ食事をとってもらっているが、本当ならから揚げとか食べたいだろうに、同じ食事をとってくれているのは本当にうれしい
難病と向き合う患者や家族の支えになりたい
4月9日、長崎市に県内の難病患者や家族など15人が集まった。その名も「難病カフェ」。治療の出口が見えない不安や、一見してもわかりづらい病気の悩みなどを打ち明け、解決策を探ろうと月に一度開かれている。
自分と同じように難病と向き合う患者や家族の支えになりたいと、黒田さんも2021年からカフェの運営に関わっている。
黒田幸輝さん:
目に見えるものじゃないから、健常者からすると理解されない。私もそう。こうやって喋っていて、普通に元気じゃないの?みたいな感じなんですけど。でも、難病ってそういうものじゃないですか。目に見えない難病っていうのは
外見ではわからない病気のため、時には心ない言葉をかけられることもある。黒田さんが食べることができないカレーや焼き肉の店に、強引に連れて行かれたこともあった。クローン病患者の中には、中学・高校時代に発症し、周囲からいじめを受けて学校に通えなくなったというケースもあるという。
そんな黒田さんの背中を押しているのは、2021年6月に誕生した長女・楓ちゃんの存在だ。
黒田幸輝さん:
娘が生まれてからは「守っていかないと」という気持ちが大きくなって。病気には負けないじゃないが、ちゃんと向き合って頑張っていこうかなって、より思うようになった
家族が自分を支えてくれるように、自分も誰かの力になりたい。黒田さんは病気と闘いながらも前を向いている。
(テレビ長崎)