難病と向き合う親子の物語

2020年4月に生まれた長崎県初の子供服。デザインの可愛いさに加え、着替えを手伝う人をサポートする機能が詰まっている。この服の誕生の背景には難病と向き合う親子の物語があった。

原村奨(しょう)くん、5歳。右半身が麻痺していて自分の力で座ったり、歩いたりすることはできない。寝たきりの生活を支えるのは母親の綾さんだ。

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奨くんの頭には手術の跡がある。

原村綾さん:
この手術の跡は、生後2カ月のとき。生後4日目の時に少しピクッという動きがあって小児科の先生にみてもらった。(最初は)脳のてんかんかな?と

診断の結果は、日本国内で100人未満と推測される難病「大田原症候群」だった。難病情報センターによると、生後3カ月以内に発症する「重症のてんかん」で、手足や頭がピクっと動く発作があるとしている。はっきりとした原因も分からず確立した治療法もない。

奨くんは多いときで1時間に40回の発作が起きたという。その後、命をつなぐために脳の手術に踏み切ったが、後遺症で右半身に麻痺が残り、また会話にも障害が残った。

原村さんは3年前に関東から大村市に移り住み、1人で子育てをしている。専門的な治療が受けられる長崎医療センターがあることや、実家がある佐賀県に近いことが決意を後押しした。

しかし、奨くんの食事の介助や、夜の発作も続いたことで睡眠不足にも陥り、何もかもが苦しく思える時期が続いた。

そんな日々に転機が訪れる。きっかけは奨くんの着替えだった。

ストレスフリーな服を

原村綾さん:
お着替えひとつするのも大変で、当たり前と思ってやっているが、実はすごく大変なことをしているというのを体や精神的な疲れで気付いて、それで少しでも楽になるようなストレスフリーな服をつくろうと思った。

アパレル業界で働いた経験を活かして試行錯誤。自分なりのアイデアを20社以上に持ち掛けたが、「売れない」「作れない」と断られ続けた。

約1年後にようやく佐賀県の縫製会社の賛同を得ることができ、インターネットを使ったクラウドファンディングで資金を集めた。

そして、2020年4月に誕生したのが「medel me」だ。「愛でる」「自分を」ブランド名には子どもはもちろん、自分も大事にしてほしいとの思いが込められている。

原村綾さん:
特徴は袖の半分までが開くようになっている。これは麻痺がある子でも腕が通しやすいように腕を途中まで空けている。市販のロンパースタイプが100位までしか売っていないので、大きい寝たきりの子でオムツをしている子ども用には110~150サイズまで作っている。

認知度はまだまだだが、原村さんの元には「着替えが本当にラクになった」、「入院中、点滴をした状態でも簡単に着替えができた」など、多くの喜びの声が寄せられている。

この日、原村さんがやってきたのは大村市にある障害者の就労支援施設だ。

原村綾さん:
障がいを持っている人には絶対必需品で、よだれがすごく多くて、こっちむいたりこっちむいたりしたら肩もぬれるわけ。

考えたのは首からかける「スタイ」。 施設で働く人たちの絵をデザインに取り入れようとしている。

一般社団法人エルビレッジ 石丸徹郎代表理事:
実用性と子どもに対する愛情をしっかり包み込んでる視点で商品を考えていると思う。

原村綾さん:
私と同じ様に 障がいを持った、特に寝たきりの子どもさんを持っているお母さんとか、ご家族、医療関係の方たちにも使っていただけるように病院用も作って行きたいと思っている。寝たきりだけど、動きづらいけど、いろんな景色とか今は難しいけど海外とか、奨くんと一緒に空間を共有できたらいいなというのは夢の1つ。

原村さんはカウンセリング活動もしていて、病気や障がいを持った子どもたちの育児の悩みなど相談も受け付けている。

子どもを大切に思うのと同じように自分のことも大切に。わが子と過ごす時間の中で生まれた「キッズ服」や「子育て論」を通して、社会へ温かなメッセージを送り続けている。

(テレビ長崎)