私がお伝えしたいのは、アメリカ高官の台湾訪問を巡る中国の反応です。

ペロシ下院議長が台湾訪問を調整していることについて、中国は外務省など3つの部門も反発の声をあげました。新型コロナ対策やウクライナ情勢の対応も難しいだけに、国内の不満の矛先を海外に向ける思惑もありそうです。

ポイントはこちら、「内憂外患の中国の今」。注目です。

【注目ポイント・記者解説】

中国にとって目下の最大の関心事は、上海や吉林省で感染が拡大する新型コロナウイルスへの対応です。秋の3期目続投を見据え、ゼロコロナ政策を掲げる習近平指導部にとっては、ロックダウンなどによる市民の不満を抑えることは喫緊の課題です。

また市民生活を支える経済への影響も無視できません。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻も、事態の長期化やロシアへの批判の高まりは想定外だったとの受け止めが多く、ロシア寄りの姿勢をどこまで維持できるかは予断を許しません。

そんな中で明らかになった、アメリカ・ペロシ下院議長の台湾訪問調整のニュースは、アメリカを攻撃する格好の材料になりました。中国外交部、国防部、国務院台湾弁公室(日本では総理官邸に相当)が一斉に反発したのは、国民の不満や批判を海外に向ける思惑もあるとみられます。

新型コロナ検査で陽性となったペロシ氏の訪問延期に、中国では「アメリカは中国の反発を受けて訪問を取りやめたのでは」などというネット世論も見られます。

国内ではコロナ対策、秋の党大会。国際的にはウクライナ情勢、ロシアへの制裁による世界経済への懸念。中国を取り巻く環境はそれほど簡単ではありません。

(フジテレビ北京支局長 山崎文博)

山崎文博
山崎文博

FNN北京支局長 1993年フジテレビジョン入社。95年から報道局社会部司法クラブ・運輸省クラブ、97年から政治部官邸クラブ・平河クラブを経て、2008年から北京支局。2013年帰国して政治部外務省クラブ、政治部デスクを担当。2021年1月より二度目の北京支局。入社から28年、記者一筋。小学3年時からラグビーを始め、今もラグビーをこよなく愛し、ラグビー談義になるとしばしば我を忘れることも。