佐賀・神埼市脊振町に伝わる「さしみこんにゃく」は、昔ながらの作り方にこだわり、人気商品となっている。しかし、ダム建設で住民は数年以内に立ち退きを余儀なくされる。地域の特産物を次世代に伝えられるのか、不安を抱えながらこんにゃく作りを続けている。
2時間で100個売れる「さしみこんにゃく」
神埼市脊振町の山あいにある小さな小屋。2時間で約100個が売れる人気の商品がある。この地域に伝わる「さしみこんにゃく」だ。
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男性客:
とてもおいしいですね。やわらかくて、モチモチした感触がとても好評です。わが家では
女性客:
くせもなくて、酢みそとかゆずこしょうに付けて食べると、とてもおいしい
手がけているのは団体の代表・鶴田良治さん(73)、調理担当の堤京子さん(69)と中村クニコさん(81)の3人。
中村クニコさん:
「きょう売れるかな」「お客さん来て買ってくれるかな」とよく思う。でも売れたらうれしい
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堤京子さん:
ここまで皆さん、買いに来てくれるのは想像以上でした。「おいしかったよ」と言って輪が広がるのが楽しいし、うれしい
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3人の平均年齢は74歳。3人には夢がある。
鶴田良治さん:
ここがダムに沈むということで、それまでは何とか頑張って脊振伝統のこんにゃくの作り方を継承していきたい
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ダムになっても…あくが肝心のこんにゃく作り
70世帯、約150人が暮らす神埼市脊振町岩政倉今。
このうち岩屋地区と政所地区は、城原川ダムの建設予定地だ。水没する範囲や着工日は未定だが、8年後の2030年にはダムが完成する予定となっている。
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鶴田良治さん:
脊振の特産物をなんとか残したいという思いがあって。さしみこんにゃくと、ゆずこしょうを中心にやってみたいという人が出てきたもんですから、じゃあやってみようと
岩屋地区の区長を務める鶴田さんを中心に2020年、岩屋と政所の頭文字をとった「岩政ハッピーサロン」を設立。各家庭に伝わる伝統のさしみこんにゃくを残そうという、3人の挑戦が始まった。
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こんにゃく作りは、わらを燃やすことから始まる。
堤京子さん:
こんにゃくを固める、あくを作っています。これが一番大事。あくがきれいにできんと、こんにゃくが固まらない
凝固剤を使わずに、わらの灰からとった“あく”で固める昔ながらの作り方。肝となる“あく”は、濃さにもこだわりがある。
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堤京子さん:
この位の大きさで膜ができたら、こんにゃくが固まるという昔からの言い伝え。なんで三角なのかはわからんけど
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コンニャクイモと“あく”を独自の配合で混ぜ合わせたあと、じっくりと火を通していく。作り方は、亡くなった堤さんの母・ウメ子さんの直伝。
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堤京子さん:
柔らかくておいしい味だった。少しずつ味に近づいていけたらいいけど、まだどうかなあ…と思う時がある
集落全体で継承「次の世代に」
わらやコンニャクイモなど、材料は全て脊振町産。集落の住民に提供してもらっているという。
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堤京子さん:
あったから持ってきたよとか、わらももうすぐ稲刈りするからいいよとか。声かけてもらって
鶴田良治さん:
政所の人たちも野菜を出してくれるし、脊振全体で見てくれているという思いは少しずつしてきました
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かつては地区内でも城原川ダムの賛成派・反対派で割れ、住民同士が口もきかない時期もあったが、この取り組みをきっかけに集落に再び交流が生まれている。
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一方、国土交通省によると、ダムの建設に伴い岩屋地区と政所地区のほとんどの住民が、数年以内に立ち退くことになる。3人もその対象だ。
堤京子さん:
家も古くなってきたし、代替地がどこになるかわからんという不安もあるけど、立ち退かなければいけないのねっていう気持ち
中村クニコさん:
やっぱり街なかではなかなか、わらを燃やすとかできないんですよね。いつまであく作りができるか私もわからないけど(次の世代も)できるだけ続けてほしい
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先が見えない不安を抱えながら、きょうも伝統のこんにゃく作りが続く。
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鶴田良治さん:
道の駅みたいなお店に発展できたら。それまでに次の世代に引き継ぐために、頑張ってやっていきます。よろしくお願いします
(サガテレビ)