せきや息切れの症状が現れた男性。ただの肺炎と思っていたが、医療機関を受診すると国の指定難病と診断された。専門医は「疑うきっかけがあれば早期の受診を」と呼びかけている。

原因不明の「特発性間質性肺炎」

福島県いわき市に住む大竹努さん(61)は、約10年前から少しずつ、せきや息切れの症状が現れるようになった。

大竹努さん:
「ただの肺炎かな?」と感じただけで。薬を飲めば風邪と同じように治るかなということしか、頭になかった。そのころは

約10年前から少しずつ、せきや息切れの症状
約10年前から少しずつ、せきや息切れの症状
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2017年に医療機関を受診すると、「間質性肺炎」の中でも、原因が分かっていない国の指定難病「特発性肺線維症」と診断された。この病気は何らかの原因で肺が硬くなり、膨らみにくくなってしまい、呼吸機能が低下してしまうものだ。

肺が硬くなり、呼吸機能が低下してしまう
肺が硬くなり、呼吸機能が低下してしまう

完治が難しく、重症化すると他の臓器にも影響を与え、死に至る場合もある。

大竹さんは、診断時に余命2~3年と宣告された。

大竹努さん:
まさかというか…

余命2~3年の宣告を受けた大竹さん
余命2~3年の宣告を受けた大竹さん

厚生労働省によると、「特発性間質性肺炎」の患者は全国で1700人以上。福島県内には330人以上いると推定されている。

福島初の専門病院 早期発見には困難も

郡山市の坪井病院は、「間質性肺炎」を専門に治療するセンターを2018年に福島県内で初めて開設した。

間質性肺炎を専門に治療
間質性肺炎を専門に治療

全国的にも専門医が少ない中、福島県内外の患者660人以上の治療やリハビリにあたってきた。

石田則雄さん:
(初発症状は)せきと息切れですね。個人の医院にかかったけど、はっきり分からなくて

センター長の杉野圭史医師は、この病気自体があまり知られていないため、早期発見を難しくさせていると指摘する。

坪生病院 センター長の杉野圭史医師
坪生病院 センター長の杉野圭史医師

坪井病院・杉野圭史センター長:
患者の初発症状が労作時の息切れ。しかも、これが軽いものだったりとか、せきに関しても「ゴホン、ゴホン」という、本当にちょっとしたせき

坪井病院・杉野圭史センター長:
人によっては年齢のせいだとか、自分は何となく年を取ってきたなとか。まさか自分の肺が、聞いたことがない病気に冒されているとは通常、一般の方は思い浮かばないと思うんですよ

ドナーが見つかり…家族との生活を大事に

余命宣告を受けた大竹さんは2021年に奇跡的にドナーが見つかり、肺の移植を受けることができた。

肺の移植手術を受けた大竹さん
肺の移植手術を受けた大竹さん

新型コロナウイルスの影響で面会が制限されたが、家族が手紙を頻繁に届けるなど献身的にサポート。現在は日常生活に支障がない状態まで回復し、家族との幸せをかみしめる毎日を送っている。

家族と日常の生活を送る大竹さん
家族と日常の生活を送る大竹さん

妻・大竹任子さん:
こうやって家族一緒に日常の生活を送れることが、本当に尊いことなんだなと思いますね

大竹努さん:
こうやって生きられること自体が奇跡みたいなものだから、大事にしていかなくちゃと思う

いつ誰が発症するか分からない「間質性肺炎」は、重症化してしまうと治療方法が限られてしまうため、息切れなどが増えた時は軽視せず早めの受診が大切だ。

坪井病院・杉野圭史センター長:
珍しい病気ではなくて、一般的な病気なんだと思っていただきたい。ぜひ疑うきっかけがあれば、我々のような専門病院に来ていただきい。それが私が一番、お話したいことです

新型コロナウイルスへの警戒から「受診控え」が相次ぐ今、間質性肺炎をはじめとした病気の早期発見が求められている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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