ウクライナでの大量虐殺の報道を受けて欧米各国は制裁などを強化。その一方で、プーチン大統領を直接裁くことはできるのでしょうか。専門家に逮捕の可能性について聞きました。

4つの「最も重大な犯罪」

国際法に詳しい早稲田大学法学学術院の萬歳寛之教授は、まずは国際刑事裁判所(ICC)が「最も重大な犯罪」と判断すれば刑事責任を追及できると指摘。実際3月2日に、国際刑事裁判所の検察官がウクライナにおける戦争犯罪の可能性について捜査を開始したという発表をしています。

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「最も重大な犯罪」は4つに分類されます。1つ目は、民族的 政治的な集団を破壊する意図をもった殺害などの「集団殺害犯罪」。2つ目は、住民の殺害や奴隷化、強制移送、拷問、強姦などの「人道に対する犯罪」。3つ目は、病院・学校など軍事目標でない施設を故意に攻撃する「戦争犯罪」。そして4つ目は、軍事指導者らによる侵略行為の計画・準備・開始または実行の「侵略犯罪」です。

そして今回、プーチン大統領は「侵略犯罪」には問うことができるのではないかと指摘されています。一方で、「人道に対する犯罪」や「戦争犯罪」というのは、プーチン大統領が主導したという“証拠”が今のところ固まっていないため難しいのではないかと見立てられています。

「逮捕は極めて困難」 ICC“非加盟国”の壁

では実際に身柄を拘束すること、つまり逮捕はできるのでしょうか。
萬歳教授によると、「逮捕は極めて難しい」といいます。その理由として、ロシアが国際刑事裁判所に加盟していないことが挙げられます。非加盟国は捜査協力の必要がなく、現在の地位でロシア国内にとどまる限り、プーチン大統領の逮捕は難しいのです。

では、そもそも国際刑事裁判所の捜査の意義は何なのでしょうか。
萬歳教授は「侵略で亡くなった方のために『処罰できないから意味がない』でなく真実を明らかにすることが大切」と述べています。さらに真実を明らかにすることで起こりうることとして、ロシア国内でクーデターが起きたり、プーチン大統領が失脚したり、ロシア国内で裁かれることが考えられるといいます。そういったところに意味が見いだせるのではないかと萬歳教授は話しています。

一方、弁護士の若狭勝氏は、捜査や真実を明らかにすること以前の問題があると指摘します。

若狭勝弁護士:
捜査すること、真実を明らかにすること自体は極めて大事であると思いますが、問題はプーチンがどのようにしたとしても自分が逮捕されることはない、責任を追及されることはないということを既に自分で分析して織り込み済みで、いわば開き直っているような形になっているとすると、いくら犯罪捜査をして責任を追及すると言っても、日本の国内においても開き直った犯罪者に対してはなかなか効果がないことと同じようなことで、直ちに効果はほとんどないという見方をしていくべきだと思います。

(「めざまし8」4月6日放送)