南九州で古くから作られ、愛されてきた伝統工芸の「都城大弓」。近年、弓職人の後継者不足が深刻化する中、伝統の製作技術を代々受け継いでいる都城市の弓師を取材した。
30軒あった製作所も現在は8軒ほどに
全長2メートルを超える迫力と、美しい曲線が特徴の都城大弓。南九州で古くから作られ、国の伝統的工芸品にも指定されている。
この記事の画像(14枚)現在、全国で使われている竹弓の約8割が都城市で作られている。しかし、ピーク時は市内に約30軒あった製作所も現在は7、8軒となり、後継者不足が大きな課題となっている。
1917年創業、都城市で100年以上都城大弓を作り続けている横山黎明弓製作所。現在は3代目の黎明さんと息子の慶太郎さんが弓を製作している。
――お父さんから見て、息子の慶太郎さんは?
横山黎明弓製作所 3代目・横山黎明さん:
私もまだまだですので、息子はなおさらまだまだです。一人前に早くなるように。できれば私を超して、腕を上げてくれればいいと思います
200以上の工程をすべて手作業で
都城大弓の製作は、材料となる竹を集めるところから始まる。
横山黎明弓製作所 4代目・横山慶太郎さん:
これが弓の都城大弓に使われる竹の種類の一つ、ウサンチクと呼ばれる南九州に生息している竹の竹林になります
生い茂る竹林の中から、まっすぐに伸びていて節の間隔が同じ竹を探していく。
横山黎明弓製作所 4代目・横山慶太郎さん:
ここを中心として見ていったときに節の位置が全然違いますよね
横山黎明弓製作所 4代目・横山慶太郎さん:
これを1個ずらしてみると、微妙に合っているようには思うんですけど、一番上の黒いところが(節が)内側にきていて入っていないので(適合する竹ではない)
都城大弓の製作では多くの工程がある。竹を4つに割って、筋の通ったまっすぐな2つを弓に使う「竹の切り出し」。その後、竹の中の水分が抜けるまで自然乾燥させる「乾燥」。
3~4カ月、天日干しにしたあと竹をあぶる「火入れ」。火入れを行うことで、竹表面の油や汚れが落ち、水分もさらに抜ける。火入れした竹を握りの部分を中心に、端になるほど曲がりやすいように薄く削る「弓竹の削り」。
そして、ハゼノキなどを合わせた芯材を竹ではさむ「弓竹の打ち込み」。
ひもを巻きつけ、くさびで締め付けながら半円状に反らせる。半円状に反らせる工程は熟練の技が必要で、弓師歴8年の慶太郎さんはまだ修行中。父・黎明さんの作業を見守る。
「弓の張り込み」では、弦を張る前と張った後は反りが逆向きになる。反発力が強いため、力のいる作業2人がかりで行う。
弓師はこれら200以上もの工程をすべて手作業で行う。
受け継がれる伝統の技「業界を守る」
弓道愛好家の中には、黎明さんの大弓を使い続けている人もいる。
宮崎大学 弓道部・井脇悟師範:
初代の黎明さんの弓を昭和52年から引いていまして、非常に黎明さんのところの弓には愛着があります
宮崎大学 弓道部・井脇悟師範:
これはなかなか口頭、マニュアルでできるものではなく、口伝で伝えていくものですから。大変だろうと思いますけれども、それは継承されていっていると思います
脈々と受け継がれてきた伝統の技。横山黎明弓製作所では、幼い慶太郎さんの息子たちも弓師への思いが芽生え始めている。
横山黎明弓製作所 3代目・横山黎明さん:
できたら私が生きている間に、孫がここにそろって仕事できると一番いいかなと思います
――将来の夢は何ですか?
横山錬太郎くん(4):
弓師と~…弓師だけです!
横山黎明弓製作所 4代目・横山慶太郎さん:
新しい方が実際に始められるのがすごく難しい業界なので、それをカバーできるように親子で3世代、その後世も一緒にこの業界を守っていけたらと思います
(テレビ宮崎)