地域の伝統工芸を支えようと世代を超えて仲間が集結。熱い思いと、その取り組みを取材した。

書き直しはできない…年間1200体を作成

豆絞りの鉢巻きに、ちょっと細長い愛らしい姿。そして、先を見通すために最初から入っている目。「願いが成るように」と振ると音がなり、倒しても起き上がる「三原だるま」だ。

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毎年2月に行われる神明市で販売されることで知られている。

その工房があるのが、三原市の南に浮かぶ佐木島。この日も三原だるま保存育成会のメンバーが絵付けを行っていた。

三原だるま保存育成会のメンバー:
表情豊かに描いています。書き直しができるならいいけど、それはしないから緊張して描いています。みなさんが買ってくれたらうれしいですから、かわいがってもらえたらいいなと思っています。

保存育成会の代表を務める鳥生悦郎さん。実は今、販売されている三原だるまは全て鳥生さんが形を作り、保存育成会の人たちが色つけをしたもの。わずか7人で全ての工程を手掛けている。

鳥生悦郎さん:
年間大小合わせると2000体を作ります。神明市用には1200くらい。祭りは3日間ありますが、2日目でほとんど売れて3日目は残り僅かという感じですね。

戦後一時廃れた、江戸時代からの伝統工芸を復活

まさに、三原を代表する伝統工芸品。その歴史は江戸末期に遡る。しかし、戦後は後継者不足で一度、廃れてしまった。その危機を救ったのが久保等さんだ。

1980年代、三原小学校の校長だった久保さんが、卒業生に記念品として「三原だるま」を贈りたいと復活させた。

その技術を受け継いで作り続けているのが、三原だるま保存育成会。

鳥生悦郎さん:
私たちが作らなくなれば三原だるまを作る人はいなくなるし、そういう状況の中で始めました。

しかし、鳥生さんも2022年で81歳。他のメンバーも70代と高齢化が進んでいる。しかも、去年に続き今年も神明市が中止となり、だるまを販売する機会も失われた。

後継者不足の危機に3人の救世主

そんな逆境の中、伝統の技術を受け継ごうという若者が現れた。渡辺麻衣さん、山田桃花さん、西谷祥さんだ。

実は、3人とも広島県信用組合三原支店の職員。

西谷祥さん:
信組の5周年イベントで、店頭にだるまを飾ったのがきっかけ。お客さんからどうやって作ってるのと聞かれて答えることができなくて、そこでだるまに興味を持って関わるようになりました。

日常業務のかたわら休日は佐木島に渡り、鳥生さんからだるまの作り方を教わっている。

西谷祥さん:
愛着がわくようになりますね。一体一体すごい手間がかかるので。小さいですけど、作るのに7日間くらいかかるので。

熱心にだるまを作る3人には目標がある。

西谷祥さん:
まだ未熟なところはあるんですが、自分でできるようになったら地域の小学校などで技術を伝授したい。

山田桃花さん:
小さい頃から伝統工芸に触れてもらうことで、郷土愛を育んでもらいたいと思います。

伝統を受け継ごうとする若い心に支えられて

鳥生悦郎さん:
行動計画や目標を立てて、さらに指導もされていくというとで、3人が真剣に取り組んでくれていることを改めて知りました。教わった人がまた次の世代に教えていくことで、三原だるまも残っていく。ひとつ肩の荷が降りたような気持ちでしたね。

2月には、三原だるまをイメージしたケーキで、鳥生さんの81歳の誕生日をお祝い。

3人からのサプライズに鳥生さんは…。

鳥生悦郎さん:
こんなに賑やかに誕生日をしてもらったのは初めてです。

師弟の絆も育まれ、技術の伝承に目処がついた。とはいえ、3人は本業をしながらの活動。神明市で売り出せるほどの数量を作り続けるには、まだ後継者問題が残る。

これから次世代の作り手が生まれることを願いながら、鳥生さんはだるまを作り続ける。

(テレビ新広島)

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