引っ越しや荷物の片付けの際に出てくる、使わないものの数々…。中には、放置していたスプレー缶が出てきた、という経験を持つ人も少なくないのではないだろうか。
「もう使わないし、捨てよう!」 
そんな時、あなたは缶に穴を「開けて」捨てる?それとも「開けずに」捨てる?

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実は住んでいる自治体によって、穴を開けるか開けないか、捨てる方法が異なることはご存知だろうか。なぜ分かれているのか、その理由はいかに?

ゴミ収集車から出火…ゴミの中に中身が残ったスプレー缶が!

2022年1月、静岡市駿河区で火事が起きた。火が出たのはなんと、走行中のゴミ収集車からだった。

火はすぐに消し止められケガ人もいなかったが、運転手は困惑した様子でこう話す。

運転手:
ライターやボンベ、スプレー缶とかは、ゴミの中に入れられちゃうと僕らはわからないので

こうした火事を防ぐため、県内19の市と町では、屋外など風通しの良い場所で「穴を開けて」から捨てるよう呼びかけている。

自分でスプレー缶に穴…爆発事故が発生の危険も

一方で、こんな事故も…。同じ2022年1月、静岡市葵区のマンションで、30代の女性がキッチンで日焼け止めのスプレー缶に穴を開けていたところ、突然爆発が起きた。女性は頭や顔などに軽い火傷を負った。着ていたフリースの静電気が、シンクにたまったガスに引火したとみられている。

また2018年には、札幌市で不動産会社の従業員が大量のスプレー缶を室内で噴射させたことが原因で爆発事故が発生。44人が重軽傷を負っている。

札幌市で発生した爆発事故(2018年)

事故を受け、環境省は「穴は開けない方向が望ましい」とする通知を全国の自治体に出していて、静岡県内の16の市と町が「穴を開けず」にスプレー缶を回収している(2022年3月現在)。

静岡市は「穴を開ける」から「開けない」に変更

2016年、他の自治体に先駆けて「穴を開ける」から「穴を開けない」で回収するように変更したのが静岡市だった。

静岡市収集業務課・富安将太さん:
実際、穴開け作業は力が要るし火災の原因になる。静岡市内であったような事故が発生する可能性もあるので、市民の方にとって負担になるのは間違いないことだと思っています

 

これまでの方針を180度変えるという決断には、「市民の理解」に加え、スプレー缶専用の処理設備を導入した「業者の協力」が必要不可欠だったという。

静岡市収集業務課・富安将太さん:
市民にお願いしていた穴開け作業を、静岡市では受託業者がやっていただけると返事をもらえたことがスムーズな移行につながったと思います

藤枝市は引き続き「穴を開ける」よう呼びかけ

一方、今でも穴を開けるよう呼びかけている藤枝市。
地域の住民が当番制で各ゴミステーションに立ち、穴が開いていないものがあればその場で開けてもらっている。

藤枝市生活環境課・赤堀真也さん:
基本、外の風通しがいいところで穴開け作業をやれば火災につながることはないと考えているので、協力していただいている状況をみると当面は今のままでいいと

穴を開けずにスプレー缶を集めても、それを処理してくれる業者の確保が難しいという。

藤枝市生活環境課・赤堀真也さん:
別々に回収して処理を委託している自治体もあるが、藤枝市の場合そういったものがありませんので

穴を開けるよう呼びかけている他の自治体からも、「穴開け作業を頼める業者が近くにない」「追加で頼むと経費がかかり、予算が確保できない」といった声が多く聞かれた。

穴を「開けずに回収」の富士市…中身残ったままの缶が増加

体制が不十分なまま「穴が開いていない」スプレー缶を回収し、中身が残ったままの缶が増えた例もある。

新環境クリーンセンター・鍋田圭一所長:
実はですね、ここに置いてあるんですけど、中身がまだ入っているのに出す人がいまして。これなんかも全然入ってるわけで、これが非常に困るんです

新環境クリーンセンター・鍋田圭一所長

富士市では「穴を開けず」にスプレー缶を回収しているが、逆に中身が残ったままのスプレー缶が増えてしまったという。

専用の穴を開ける機械があるものの、手で開けたほうが早く、職員が一つひとつ手作業で処理している。

新環境クリーンセンター・鍋田圭一所長:
大きな布でくるみながら、場合によってはビニール袋にかぶせながら穴を開けてなんとか周りに飛ばないようにしているんですけど、すごく大変な作業になります

自治体で分かれる対応 カギは費用と「専門業者の確保」

このように、スプレー缶の処理は自治体によって対応がさまざまだ。
ほかにも、磐田市は「穴開け不要」に変更したが、埼玉県の業者に処理を委託。輸送費は市が負担することになった。

一方で、現在も穴開けを求めている掛川市は変更を検討したが、住民に周知するチラシや、発火などの危険を避けるためのゴミ収集車から普通のトラックへの変更、さらに業者への委託や輸送などにかかる費用を踏まえ変更を見送ったという。

日本でたった3台「スプレー缶専用の処理施設」 掛川市で稼働へ

多くの自治体が課題として挙げる「専門業者の確保」。この課題を解決しようと、稼働の準備を進める最先端の設備を取材した。

中遠環境保全・出井伸平さん:
こちらがスプレー缶の処理施設です

掛川市に本社を置く「中遠環境保全」が2021年秋に導入したスプレー缶“専用”の処理施設だ。

中遠環境保全・出井伸平さん:
チッ素ガスを本体に注入しまして、酸素濃度を下げます。穴が開いてないスプレー缶を安全に爆発しないように処理していくのが強みです

中遠環境保全・出井伸平さん

市販のスプレー缶であれば満タンでも安全に処理することができるこの施設。大阪に2台、掛川に1台と国内では3台しかない。
2022年5月現在、静岡県の承認待ちで、本格的な稼働は2023年度を予定している。県内外の市町だけでなく、地元・掛川市の担当者も前向きに施設の利用を検討したいとしている。

中遠環境保全・出井伸平さん:
予算の話にもなるが(自治体からは)そういうのがあればいいよねという声はいただいています。1件でも多く爆発事故を失くしていければという思いです

捨てる時に大切なのは、まず自分が住んでいる自治体の捨て方を確認すること。そして穴を「開ける」「開けない」に関わらず、風通しの良い場所でしっかり中身を使い切ること。
自分が使ったスプレー缶だからこそ、責任をもって処理をするその意識が大切だ。

住民の安全と行政の負担、その間で揺れ動くスプレー缶の穴を「開ける・開けない」問題。
最先端の技術が解決の糸口となるのか、今後の各自治体の動きに注目が集まる。

(テレビ静岡)

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