キッチンのシンクにピッタリ皿がはまって取れなくなってしまった!

そこでTwitterにSOSを投稿したところ、多くの人が知恵を出してくれた。Twitter上で話題となった1枚の皿の“救出劇”を最後まで紹介したい。

シンクに皿がはまってしまった!2日間の奮闘

助けを求めたのは、Twitterユーザーのあだん堂ゆきさん(@fpen_sake)。「えーーーん!!助けてツイッタランドーーー!!」という叫びと共に投稿したのは、1枚の皿がすっぽりと収まるシンクの様子の画像。

皿とシンクは水が下に流れないほど隙間がなく、薄いカードなども全く入らなかったのだとか。取れないだけでなく皿は回すこともできず、まさに“ピッタリ”とはまっている状態だ。

投稿された画像 シンクにピッタリと皿がはまっている
投稿された画像 シンクにピッタリと皿がはまっている
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一緒に暮らしているあだん堂ゆきさんの相方さんが、朝に皿洗いをしている時にシンクに水がたまることから、皿がはまっていることに気づいたのだそう。慌てて取ろうとグイグイ押しているうちに全く回らなくなるほど押し込む形になり、あだん堂ゆきさんに相談したという。

その後、相方さんは仕事へ。あだん堂ゆきさんは自力で取ろうと奮闘。普通の吸盤から強力な吸盤までいくつか付けてみて引いたり、油・せっけんや洗剤で滑らせたり、ガムテープや養生テープ、両面テープなどを貼ったり、皿の周囲を叩いてみたりと、25種類以上の方法を試したという。

針や糸、下敷きなどの細い物や薄い物を隙間に差し込もうとするも入らず、包丁でも挑戦したが、皿の一部が欠け、包丁自身も先端が欠けることになるという結果だった。

皿の一部と包丁の先端が欠ける
皿の一部と包丁の先端が欠ける

夜になりTwitterにSOS投稿

そして夜になっても皿は微動だにせず、やむを得ず助けを求め、Twitterに投稿したのだそう。

キッチンが使えない状況を知った多くのTwitterユーザーは、皿を救出しようと続々と反応。「コレ試してみて」「こういう方法はどうですか?」といった、さまざまなアイデアやアドバイスが寄せられた。しかし、新たに寄せられた情報を試してみても、結果は全て失敗に終わってしまった。

試行錯誤するも、皿は取れない
試行錯誤するも、皿は取れない

ちなみに、皿を割るという手段も考えていたが、故郷の母から貰ったカップのソーサーだったため、割るのは縁起が悪く感じ、最終手段にしておきたかったのだそう。

はまってしまったのは、母親からもらったというソーサー
はまってしまったのは、母親からもらったというソーサー

“救世主”専門家とつながり動画配信するも…

増え続ける投稿へのリツイート数といいね数に比例して、皿が取れない事への焦りが募っていく。多くのアイデアが寄せられるも既出で、新しい情報が停滞し始めてくる。残りはもうシンク下のパイプを外し、下から皿を救出するしか…。

しかし、専門知識のない素人がパイプを外したりするのには危険が伴う。少し調べただけでも、触ると危険な箇所もあったという。だが他の方法が考え付かず、挑戦するか迷っているその時に救世主が登場した。水道施工を仕事にしている専門家とDMで繋がったのだ。

写真などでやり取りするも、分からない点が多くあるということで、実際に動画配信を見ながら指示してもらうことになった。

「専門家の指導のもとシンク下をいじって皿を救出します」とツイキャスでの動画配信を開始。総視聴者数3万1188人、最大同時視聴616人(3月31日19時16分時点)と多くの人が集まる中、作業が行われた。

ツイキャス配信が開始
ツイキャス配信が開始

まず「シンク下のパイプがどうなっているのか?」と、現状チェックから始まるが、この段階ですぐに問題が発覚する。あだん堂ゆきさん宅のシンク下のパイプはL字になっており、この形状は対応が難しいというのだ。

他にもパイプの状態を確認したところ、専門家の結論は「新しいパイプを買ってきて、切って救出後にパイプをつけなおすくらいしないと駄目だろう」というものだった。

シンク下の様子
シンク下の様子

「うそや~ん」まさかの取れ方に喜びと嘆き

そして皿を救出しようと奮闘すること2日目。他に方法がなくなったあだん堂ゆきさんは“割る”ことを決意。

ツイキャスで多くの人に見守られる中、割った破片が下に落ちないように養生テープを皿一面に貼り、その上からドライバーを当て、麺棒で叩いた。

ドライバーを使って割ることに… 安全のため軍手なども装備
ドライバーを使って割ることに… 安全のため軍手なども装備

ガンガンと全力で叩くも分厚いのか皿は割れる様子がない。せっかく貼ったテープも外し、皿のフチ部分を叩くもビクともしない。あまりにも硬いため、包丁を隙間に差し入れた際にできた欠け部分がもろくなっていると考え、ここを叩いてみる。

テープをはがして叩く!
テープをはがして叩く!

そして数回思いっきり叩いていた次の瞬間、バコンと皿が持ち上がったのだ。割る気満々で叩いていたあだん堂ゆきさんもこれには思わず「あ!?まじか!」と声をあげ、「はずれた!」と喜びながらも「うそや~ん、なんだよ~!ここではずれる~!?」などと嘆きをもらした。

バコンと皿が取れた!
バコンと皿が取れた!

こうして皿の中央部分にはドライバーで叩いた跡が残ってしまったが、割れることなく救出された。

この一連の出来事には「取れて良かったですね。ホッとしたー」「生還できて良かった!」「この皿は、破片は失ったが新たな物語を得た」と安心した人たちの多くのコメントが寄せられ、最初のSOS投稿には、5万9000のいいねが付く話題となっている(4月15日時点)。

救出された皿。中央には叩いた傷が…
救出された皿。中央には叩いた傷が…

印象に残った「3つの方法」

2日もかかってしまった皿の救出。割ろうと決心した瞬間にまさか取れることになるとは、ツイキャス視聴者も奮闘した本人も驚いたことだろう。

多くの知恵が集まった救出劇だが、その中で印象的な取り方は何だったのか?また、Twitterらしい広がり方で多くの人の協力を得られたことをどう思っているのか?

あだん堂ゆきさんに話を聞いてみた。

ーーシンクに皿がはまり、何をやっても取れない!その時の心境を改めて教えて。

焦りと緊張感が強かったです。かなり焦って色々試していたので、24時間自宅にいられる状況(自宅勤務、フリーランス、子育てとか介護していない、など)で良かったなーとぼんやり思っていました。会社員で毎日満員電車に揺られていたら、あのようにTwitterに助けを求めるまでもなく業者に頼むしかなかったかなぁと。色々自分で試す時間も余裕も無かったと思います。

同時に、平成前期のインターネットの温かみみたいなものを感じて、嬉しい気持ちがあったのも事実です。とにかくほとんどの皆さんが優しくて、こんな小さな事件に大袈裟に付き合ってくれて、本当にありがとうな!という気持ちでした。

皿を取るために、お湯をかけてみたり…
皿を取るために、お湯をかけてみたり…

ーー多くの人が知恵を絞ってくれたが、それに対してはどう感じた?

9割程優しく見守るコメントでしたが、1割くらい批判的なコメントも混ざっていたので、バズっている渦中はスペクタクルヒューマン(=巨篇人間ドラマ)映画を見ているくらい複雑な心境でした。ただ、優しい9割の人々の中で、水道配管系の施設屋さん2名からサポートをいただけることになったので、バズって結果的には助かりました。今回は良い事が起きる回数の方が圧倒的に多かったので、感謝感謝の数日間でした。

また、一番は「昔のインターネットを再体験できた」ような懐かしさがすごく嬉しかったです。幼い頃、掲示板に張り付いて、お姉さんお兄さんに様々なことを相談したり習っていたあの頃の記憶が蘇り、「ノスタルジー!」と叫びだしたいような……。

ドライヤーを当ててみたり…
ドライヤーを当ててみたり…

ーー印象に残った取り方はある?

リプライ頂いたものは知らない取り方も多く、どれも面白かったのですが、特に印象的かつ意見が多かったトップ3は「接着剤」「トイレのラバーカップ」「ダクトテープ」の3つでしょうか。

「接着剤」については、皿に何かを接着剤で固定させ上に引っ張り、最後に剥離剤で綺麗にしろという指摘が多かったです。接着剤は自宅に無かったので皆さんの自宅にあることは素直に驚き、今は剥離剤みたいな便利なものをセットで購入している人もいるんだ、頭いいなと思いました。また、DIYが流行っているから?ガンプラ的なものに使う?と何に使うのか気になりました。使う予定も無いのにちょっと接着剤と剥離剤が欲しくなりました。

「トイレのラバーカップ」については、自宅にあっても絶対に皿には使わなかったので(大腸菌が怖い)、使えという人が多くて驚きました。新品を買って使えという指摘もありましたが、本気で買い物をしてでも外そうと思っていたらやっていたかもしれません。買っても皿を外すのが難しかったらトイレに流用できますし、無駄にした気持ちは接着剤で駄目だったときより薄れるだろうな、と思いました。

冷やしてみたり…
冷やしてみたり…

皿は御椀型ではなく取り皿のように浅く、ほとんど凹みが無かったので、ラバーカップよりも「ダクトテープ」のことが気になっていました。Twitterでよくネタ的に使われていますし、やってみたら一番ネタとして面白かったかと。でも接着剤と一緒で、その後の使い道が全く無いので買うまでには至らなかったです。しかしながら、今後このような不測の事態が起きたときの備えとして購入しておくべきかなと悩んでいます。

大喜利的に「これで取れたら一番面白かった!」大賞は、「貝割り用ヘラ(貝を開ける用の専門
道具らしいです)」
ですね!サザエのフタっぽい柄の皿だったので、このツイートが鮮魚店のプロから「職業柄貝割用ヘラで取れそうって思った(意訳)」なるコメント送られてきたときは、思わず「持っていたら絶対やったし、やって取れたらもっと面白かったのに!」とちょっと悔しかったです。

テープ類なども試したという
テープ類なども試したという

あだん堂ゆきさんは、今回、「気圧」「表面張力」でくっついている可能性はTwitterの人たちに言われて気づいたのだそう。冷静に考えれば分かるかもしれないが、パニック状態の時には思いつかないもので、改めて「事故の際のパニックは怖いと痛感した」と話している。

ちなみに、皿も本体も一部欠けてしまった「包丁を隙間に差し込む」手段については、刃が欠けた時に怖い思いをしたので、流血の危険もあり、オススメしないとのことだ。

今回の経験は将来にわたって私の中で語り草

試行錯誤の末、力技で皿は割れることなく無事に救出できたが、傷つけてしまったこともあり、あだん堂ゆきさんは贈り主である母親に後日、連絡をしたという。

「このお皿、覚えてる?」とのメッセージと共に、傷つけてしまったことを謝罪すると、母親からは「うむ 覚えてないなぁ」という返答。さらに、カップとセットと思っていたソーサーは、カップと柄が同じ皿だったという事実も判明した。

実はこのカップとセットではなかった…
実はこのカップとセットではなかった…

まさかの真実もわかった今回の皿は現在どうしているのだろうか?そして、経験者として、今後同じ事が起こってしまった人へのアドバイスも聞いてみた。

ーー無事にはまっていた皿が取れた時、どんな気持ちだった?

「こんだけ色々やったのに、結局暴力で解決かよ」という拍子抜け感があり、生配信でも「なんだよ~」と思わず声を出してしまいました(笑)。最初から、割るつもりでゴンゴンぶん殴っていたら、もっと早く取れていたのか今となってはよく分かりませんが……。

とにかく取れたときは本当に気持ちよくて、生配信を見てくれていた600名以上の皆さんと一緒に喜びを分かち合いました。小学生の頃実家の湯舟に顔をつけどれくらい息がもつか試したとき「これ以上息がもたない、もしかしたら死んじゃうかも、怖い!」と緊張していた後、顔をあげて最初に息を吸って「あぁよかった生きている」と安堵した……みたいな感覚というか。
要するに、緊張感が解き放たれたその解放感が気持ちよかったとか、安心したとか、懐かしかったとか、チャレンジしたドキドキ感覚とか、そういう感情がない交ぜになった感じでした。

欠けたり、傷が付いたのも、ある意味勲章
欠けたり、傷が付いたのも、ある意味勲章

ーー現在、その皿はどうしているの?

母親に(後日)謝罪の電話をした際「セットのカップ&ソーサーではない」ことが分かってはいるのですが、私の中ではなんとなく柄もあっているし、カップとソーサーということにしてきましたから、今後もカップ&ソーサーとして使っていければと思っています。皿を使うたび、Twitterの優しい人たちの顔が思い浮かびますし(会ったことないけど)、優しい気持ちになれる気がします。

母親は残念ながら覚えていませんでしたが、皿一枚でこれだけあたたかくなった経験は、将来にわたって私の中で語り草になると思います。かなり強く殴っても真っ二つに割れない程の分厚い皿なので、気が向いたら金継ぎして使うのもいいなと思っています。現在まだあの皿は、バディ(対になっているもう一枚の皿)の隣で大人しくそのときを待っている状態ですね。金継ぎするまでは破片を飲むと良くないと思うので、バディに頑張ってもらおうと思います。

もう1つのセットと共に棚へ収納
もう1つのセットと共に棚へ収納

ーー経験者として、皿がはまった場合のアドバイスはある?

もし今皿がハマってしまっている画面越しのアナタは、さぞかしお困りのことと存じます。気持ち、物凄く分かります。

二日間にわたり格闘した結果、下記の順番が良いと思いました。

(1)「真空や表面張力で引っ張られているかチェック」してから、
(2)上にそのまま引っ張ったり持ち上げる系(掃除機で吸う、吸盤やガムテープ等)を試し、
(3)てこの原理を使ってみて、
(4)それでも駄目なら、皿を押してずらしたり回す系(家具転倒防止用ゴムやジェルでずらすor回す、片側に薄くて硬いポイントカードのようなものを入れて押す等)を試す。

真空や表面張力で引っ張られているだけであれば、「垂直に引っ張る系」でまだまだ簡単に取れる余地がありますが、皿を押したりずらすときに、私のように少しでも中に押し込んでしまって「完全にハマる」状態を作り出してしまうとすんごい外すのが大変です。もし自分でいろいろとやる時間が無い人は、時は金なりとも言いますし、プロの手を借りることもお忘れなきよう!

もちろんTwitterで救けを乞うのも良いですが、時間と労力、気力、かなりのスルースキルが必要です。もし、アナタにそのあたりの余裕があって、ついでに人との繋がりの温かみを感じたかったら、先人たちの知恵でもって一緒に解決策を模索してみるのも良いかもしれません。そのときは、私も今回優しく見守ってくれた先人たちに倣ってTwitter上でアナタをレスキューしたいと思います。

皿が取れた後、シンク下のパイプを少しいじったので水漏れ確認
皿が取れた後、シンク下のパイプを少しいじったので水漏れ確認

ーー最後に、知恵を絞ってくれたTwitterユーザーの人たちにメッセージを!

リプや引用リツイートで2439(※単純計算した数字。4月13日現在)ものコメントをくれた皆さん。本当にありがとうございました。Twitterの皆さんが最後まであたたかく見守ってくださり、また、お皿がとれたら「とれたんですね、気になっていたのでよかったです!」的な優しいお声掛けをくださる方までいらっしゃって……本当に嬉しかったです!こちらでも、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。ちなみに、コメントで多数ご要望がありました「もう一度皿をハメてダクトテープでとれるか試して欲しい」については、ぜひご自身のシンクでお試しになられてください!(笑)

Twitterユーザーたちのたくさんの知恵は皿を救出するには至らなかったが、同じ状況に陥ってしまった人が、助けを求め検索をした際に役に立つことだろう。困った時にはTwitterの優しい世界を頼ってみるのもいいかもしれない。

(取材協力:あだん堂ゆきさんがまとめたnote【解決済】シンクの穴にスッポリ皿がハマって取れなくなって詰んだ話【まとめ】
ツイキャス「専門家の指導のもとシンク下をいじって皿を救出します /ぶん殴ってヒビ入った負傷皿救助できましたありがとう」

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。