ウクライナからの避難者を受け入れるフランス・パリの体育館に、建築家の坂茂さんが考案した間仕切りが設置された。

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組み立て簡単な間仕切りで「プライベート空間」を

パリの東駅には、ウクライナから連日大勢の避難者が辿り着く。子供を連れた女性の姿も多く、ここから次の避難先を求め一時的に避難所を利用するが、ベッドだけが置かれた所もある。

ウクライナからの避難者およそ80人を受け入れているパリ市内の体育館では、3月23日に初めて間仕切りが設置されプライベートな空間が確保された。

間仕切りを考案した坂さんは、自ら設置作業にも携わった。

坂茂さん:
プライベートな空間は、人権上、最低限必要なものだと思います。前の日に穴開けしたりそういう準備はありますけど、組み立てるのは全部を1時間半でやりました。

再生紙で作った柱と梁で仕切られた2メートル四方の空間は、布で覆われている。材料がどこでも調達できること、手軽に組み立てられることが大きな特徴だ。また、新型コロナウイルスの飛沫感染防止にも有効だという。

坂さんは2011年の東日本大震災で50箇所の避難所に2000個の間仕切りを作り、それ以来、被災地などで間仕切りを設置してきた。

坂茂さん:
あまり閉鎖的すぎると息苦しいし、適度なプライバシーと適度なフレキシビリティが必要。誰にでも簡単に早く作れないといけない。その改良を重ねて今の最終形になっているんです。

インタビューに応じる坂茂さん
インタビューに応じる坂茂さん

有事想定した準備の重要さを指摘

報道でプライバシーのない避難所を見て、坂さんは行動を起こした。もともと知り合いだったポーランドの建築家と連絡を取り、3月11日には自らもウクライナからの人たちで溢れるポーランドのヘウム市の避難所を訪れ300個以上の間仕切りを設置したほか、約900個の間仕切りを組み立ててウクライナに送った。

坂茂さん:
やっぱりプライバシーがないと、気が休まりませんからね。ポーランドでも入った途端に泣き出した女性がいて、やっぱりずっと緊張してたんでしょうね、移動して。やっとプライベートな空間に入って……それまでは泣くことすらできなかったんでしょうね。

ウクライナからの避難者を受け入れる周辺各国の状況をみて、坂さんは有事を想定した準備の重要さを指摘している。

坂茂さん:
日本でもそういう有事が起こる可能性があるわけですね。その時に日本政府が周りの国がやっているように、敏速に心温かく迎え入れるかどうか、今から準備しなきゃいけない時期じゃないかなと思いますね。

パリの避難所では、避難者が「あなたの助けに感謝します。全てに感謝します」と坂さんに声をかけていた。ポーランドでも避難者から多くの感謝の言葉をもらったという坂さんは、この取り組みをさらに続けていきたいと話した。

坂茂さん:
ポーランドでは聞きましたけど、やっぱりみんなほっとしてよく眠れるっていう。どこでやってもみんなそういう感想をくださります。要求があればどこにでも行きます。

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建築家・坂茂さん「間仕切り」でウクライナ避難民を支援

国際取材部
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