近年、大麻の所持などによる若者の犯罪が増加するなか、警察官と専門学生が若者の薬物乱用を防ごうと、動画づくりに奮闘する姿を追った。

薬物乱用を防げ! 警察と専門学生がタッグ

2022年3月、新潟県警と専門学生が一緒に制作した動画が完成した。

専門学校生と新潟県警による動画完成
専門学校生と新潟県警による動画完成
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完成した動画
完成した動画
完成した動画
完成した動画

この動画制作プロジェクトが始まったのは、この8か月前。

新潟県警 高津大輔 警部補:
「自分だけが罪を償えばいい」薬物犯罪というのはそういうものじゃないんです。周りを取り巻く人、みんなに影響するんです

新潟県警 高津大輔 警部補
新潟県警 高津大輔 警部補

専門学校で熱く薬物乱用の危険性を訴えていたのは、新潟県警の高津大輔警部補。

新潟県警 高津大輔 警部補:
女性が1人部屋に横たわっている。すぐに女性警察官と袋を取り上げます。そしたら横たわっている状態から、かっと目を見開いて、私に対して「返せー!」と言って掴みかかってきたんです

薬物利用者と対峙した実体験をもとに、心と体をむしばむ薬物乱用の恐ろしさを伝える高津警部補。
特に強調していたのが、違法薬物が若者の身近に迫っている現実だ。

若者の薬物乱用 新潟県では高止まり傾向

違法薬物は若者の身近に
違法薬物は若者の身近に

新潟県内における大麻取締法違反の検挙人数(過去5年)を見ると、全体では減少傾向にあるものの、30歳未満に限ると2019年をピークに高止まりの傾向が続いている。

大麻取締法違反の検挙人数(新潟県内)
大麻取締法違反の検挙人数(新潟県内)

これは「ゲートウェイドラッグ」と呼ばれる大麻。依存度の強い覚醒剤などの使用を誘発すると言われていて、今後、薬物依存に陥る若年層の増加が懸念されている。

ゲートウェイドラッグ(大阪府警提供)
ゲートウェイドラッグ(大阪府警提供)

薬物に手を染めないように…若者目線で動画を制作

そこで今回、動画制作のメンバーとして白羽の矢が立ったのが、映像制作や演技などを勉強する専門学生たち。

専門学生:
私は将来、ナレーションさんとか司会者さんになりたいので、ナレーションとかできたらなと考えている

専門学生:
今俳優を目指して勉強している。伝え方、映像の作り方とかも考えたい。

動画制作への意気込みを語る専門学生
動画制作への意気込みを語る専門学生

新潟県警 高津大輔 警部補:
生徒たちには、若者ならではの目線、視線。それから考え方、同世代の子供への発信を期待しています

若者自らが薬物乱用の危険性を知るために。そして若者目線でその危険性を伝えるために…

若者自ら薬物の危険性を知り・伝える
若者自ら薬物の危険性を知り・伝える

警察官と専門学生がタッグを組んで、動画制作がスタートした。

警察官と専門学校生がタッグを組み、動画制作スタート
警察官と専門学校生がタッグを組み、動画制作スタート

専門学生:
実際にあった薬物の手に入れ方とか、例とかありますか?

新潟県警 高津大輔 警部補:
『消えるSNS』って知ってる?一定の時間が経つと、過去の記録がどんどん消えていっちゃう。

警察からの意見をもとに、動画の構成を考える
警察からの意見をもとに、動画の構成を考える

恐ろしさをリアルに伝えるため「経験者」にインタビュー

危険性が伝わるよう、作りたいのは「より現実に近い」動画。
警察官の話だけでなく、違法薬物を実際に使用した人へのインタビューも行った。

薬物経験者へのインタビューも実施
薬物経験者へのインタビューも実施

専門学生のインタビューに答えたのは、薬物依存からの立ち直りを支援する新潟ダルクの施設長・田中五八生さん。かつて違法薬物に手を染めてしまった1人だ。

新潟ダルク 田中五八生さん:
覚醒剤に関してはやっぱり、多幸感や、強くなった感覚がすごくする。それでいて、寝なくて良くなる。何でもできるようになってくる感覚

新潟ダルク 田中五八生さん
新潟ダルク 田中五八生さん

興味本位で始め、いつでもやめられると思っていた違法薬物。

新潟ダルク 田中五八生さん:
けど結局、最終的に薬を使い続けたせいで大切なものを全て失って、それで薬をやめなきゃと思うんですけど、やめられない

また、危険ドラッグを乱用し、正気を失ったエピソードを話す薬物経験者も。

新潟ダルク 紺野日延さん:
「追跡妄想」といって、何かに追われている。妄想に入るんですよ。何かが僕のこと追いかけているような感覚になって、警察署に飛び込んだ。血液検査と科捜研に送られて尿検査したんですけど、使っている薬が危険ドラッグ。当時は違法な薬では無かったので、捕まりはしなかったですけど…

新潟ダルク 紺野日延さん
新潟ダルク 紺野日延さん

専門学生に突き刺さる、生の声。

専門学生:
使用しているときの生活と、使用を止めたあとの現在の生活の差のエピソードが、すごく印象に残っています

専門学生:
人間関係や、精神的にすごく辛かったというリアルなエピソードも聞けて、そこが一番印象に残っています

薬物使用の現場に…本番さながらのガサ入れ演技に放心状態

制作する動画のストーリーは、若者たちが動画の再生数を稼ごうと薬物に手を染める…というもの。

この日は、ある場面の撮影が行われようとしていた。

「ある場面」の撮影
「ある場面」の撮影

「新潟県警」と書かれたダンボールを組み立て始める高津警部補。

新潟県警のダンボール
新潟県警のダンボール

新潟県警 高津大輔 警部補:
「警察のガサ(家宅捜索)に遭うような人生にならないように」と願って、一生懸命ガサいたします。素です。素でやらせていただきます

ガサ入れの再現シーンを前に…
ガサ入れの再現シーンを前に…

家宅捜索の再現シーン:
警察だ!警察だ!触るな!それは何だ。自分の口で言え!

違法薬物や大麻を使用して罪を犯したらどうなるのかを知ってもらうため、現役警察官が家宅捜索をリアルに再現した。

リアルなガサ入れを再現
リアルなガサ入れを再現

あまりの迫力に、撮影であることを忘れ、固まる専門学生たち。

本番さながらの迫力に、固まる専門学生
本番さながらの迫力に、固まる専門学生

家宅捜索の再現シーン:
これな、捜索差押許可状。13時45分ガサ開始。

再現ドラマのワンシーン
再現ドラマのワンシーン

動画に出演した専門学生:
急に大声が聞こえて、放心状態でしたね。一緒にいる友達に申し訳ないし、自分のせいでこうなってしまったんだなという思いがすごく強くて

再現ドラマの連行シーン
再現ドラマの連行シーン

動画を使って「薬物の怖さ」学んで

新潟県警 高津大輔 警部補:
この作品は「作って終わり」ではなくて、これから先、皆さんの後輩にあたる若い方達に見ていただいて勉強してもらって、薬物の怖さをよくよく学んでいってもらいたい

薬物の怖さを学ぶ教材に
薬物の怖さを学ぶ教材に

動画を制作した専門学生:
今若い子達のほうが薬物の使用が増えている現状で、この動画を見て、少しでもそれを止められたらと思って。今後 自分自身も危険性などをさらに学んだ上で、伝えていきたいなと思っている。

薬物の危険性を伝えていきたい
薬物の危険性を伝えていきたい

「違法薬物に手を染めてほしくない」
その一心で、警察官と専門学生が約8ヶ月かけて作った今回の動画は、今後 新潟県内の高校などで教材として生かされる予定だ。

(NST新潟総合テレビ)

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NST新潟総合テレビ
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