「大統領のために、国のために」と叫ぶ子ども

国旗を振りながら「ロシア」と叫ぶ子供たち。これはロシアの独立系メディア「メデューザ」が報じた、ロシア国内の様子です。

この記事の画像(17枚)

教師:
子供たちは国への愛ゆえに最後まで戦います。国境で、100の弾丸を用いて。プーチン大統領に従って、私たちの軍隊とともに。

子供たちは教師の掛け声に合わせている様子がうかがえます。さらに、別の子供も。

プーチン大統領の写真をバックに、「大統領のために」「国のために」と叫ぶ様子が映っていました。

そして、子供たちは大人の言った言葉をただ繰り返しているのです。これらの映像をよく見ると、ある共通点があります。それは「Z」という文字が映っていること。

2月24日から始まったウクライナ侵攻で、ロシア軍の軍用車など様々な場所にも「Z」が記されています。そして、3月18日に行われたクリミア併合8周年を祝うイベント会場でも、至るところに「Z」の文字が。

この「Z」は「ロシア軍のウクライナ侵攻を支持する象徴」とも言われていますが、今や子供たちにまで広がっているのです。

「Z」の人文字にワッペン …児童たちにも教育か

これは、小学校のSNSに投稿された写真。ロシア国旗を手に「Z」を形作っているのは、小学1年生の児童たちです。

別の小学校では、子供たちが一糸乱れぬ列で「Z」の人文字を作り上げています。

また教室では、「Z」のワッペンがひとりひとりに配られています。

さらに男の子たちは「Z」のシャツを着て、一列で行進。

そして、女の子たちは「進めロシア」という名の愛国歌を合唱。身に着けているロシアの国旗カラーの衣装にも「Z」の文字が書かれています。

ウクライナのレズニコフ国防相は、SNSで「ロシアの占領者はナチスマークをつけている」と、「Z」をナチスのマークになぞらえて強く非難しています。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月。急拡大する「Z」マークは一体なにを意味し、その狙いはどこにあるのでしょうか。

Z文字は「縁起のいい言葉」の象徴 世界に向けたアピールも

戦闘が激化するウクライナ国内やロシア軍の戦車などに書かれた「Z」の文字。これはどんな意味を持つか、筑波大学の中村逸郎教授に話を聞きました。

筑波大学 中村逸郎教授:
「Z」というのは元々、ロシアでは非常に縁起のいい言葉です。例えば、「ZA」というのですが、健康や幸せを祝うときに使う言葉の最初の「Z」を使っているんです。ですから今、モスクワ市内なども色々な所にZのマークが付いていて、アパートの入り口のドアにZが付いているなど、市民生活の中でも「Z」というのが急に現れてきています。

Zは昔からロシアにあったものなのでしょうか?

筑波大学 中村逸郎教授:
昔はないです。2月24日に侵攻が始まって、その2~3日後から「Z」が出ていた。戦車に描かれたのが事の始まりなのですが、そこから急速に広がってきています。

さらに驚くのが、ロシア語は「キリル文字」を使用しますが、キリル文字の中に「Z」はないということです。では、この「Z」を使用した言葉は一体なにを意味するのでしょうか。

掲げられた横断幕にある「ロシアのために」という言葉、「ZA」はアルファベットで「Po㏄ИЮ」がキリル文字。つまり、混合して使っていることになります。

中村逸郎教授はその理由について、ロシア軍の存在を見せるため、外国にもわかるように「Z」を使しているのではないかといいます。

戦場で仲間を識別する「Z」 目立って逆効果?

さらに、軍事ジャーナリストの井上和彦さんは別の理由も指摘。

「Z」は元々はロシア軍が見方を識別し、同士打ちを防ぐためのマークだったのではないかといいます。実際にロシア軍の戦車には「Z」がいくつも描かれています。

ただ、この「Z」マークは戦場で非常に目立つため、逆効果なのではないかと言われています。

こちらはウクライナの戦車から見た映像です。すぐにロシア側の「Z」マークを確認することができます。

つまりウクライナ側からすると、ロシア軍ということがすぐに認識できてしまい、逆効果になっているのではないかというのです。

井上さんは、ロシア軍の損失が多くなっている背景には、「Z」が描かれた目立つマークを使っている点もあるのではないかと指摘。ロシアは「歴史的大敗」と言えるほどの損失で、ウクライナ軍を完全に侮っていたのではないかと話します。

(「めざまし8」3月25日放送)