23日、12分にわたって国会で行われたウクライナのゼレンスキー大統領の生演説。語られたのは、強い要求の言葉ではなく、「復興」という言葉を使った「故郷への思い」でした。

ゼレンスキー大統領オンライン国会演説 約12分の演説内容とは?

会場となった、議員会館の国際会議室には、大型モニターが設置されました。

この記事の画像(10枚)

最前列には、岸田総理大臣や、駐日ウクライナ大使の姿がありました。午後6時、モニターにゼレンスキー大統領が映ると、会場から大きな拍手が沸きます。日本に向けて始まった、戦場からのメッセージは…

ゼレンスキー大統領:
両国の間には8193kmがございます。経路によって、飛行機で15時間もかかります。ただし、お互いの自由を感じる気持ちとの間の差はないです。また、生きる意欲の気持ちの差もありません。それは2月24日に実感しました。日本がすぐ援助の手を差し伸べてくださいました。心から感謝しております。

そして“日本人に刺さる”言葉選びが続きます。

ゼレンスキー大統領:
空爆で1000発以上のミサイルが落とされ、また、数十の町が破壊され全焼しています。多くの町では、家族、隣の人が殺されても、きちんと葬ることさえできません。数千人が殺され、そのうち121人は子供です。

演説で、悲惨な現状を訴えたゼレンスキー大統領がメッセージのところどころで使ったのは、“日本人に刺さる言葉”でした。

ゼレンスキー大統領:
チェルノブイリ原発が支配されました。事故があった原発を想像してみてください。ウクライナでの戦争が終わってから、どれだけ大きな環境被害があったかを調査するのに何年もかかるでしょう。また、サリンなどの化学兵器を使った攻撃もロシアが今準備しているという報告を受けています。シリアと同じように。また核兵器も使用された場合の世界の反応は、どうなるかが、今世界中の話題になっています。

“原発事故”、“サリン”、“核兵器”。いずれも、日本人に刻まれている辛い記憶です。これからの日本の取り組みについてこんな言葉を使いました。

ゼレンスキー大統領:
アジアで初めてロシアに対する、圧力をかけ始めたのが、日本です。引き続き継続をお願いします。また、制裁の発動の継続をお願いします。ロシアが平和を望む、探すための努力をしましょう。また、このウクライナに対する侵略の“津波”を止めるためにロシアとの貿易禁止を導入し、
また、各企業がロシア市場から、撤退しなければならないです。もうすぐにウクライナの“復興”に関することを考えなければなりません。また、人口が減った地域の復興を考えなければなりません。それぞれの人たちが、避難した人たちが故郷に戻れるようにしなければならないです。日本の皆さんもきっとそういう気持ちがお分かりだと思います。住み慣れた故郷に戻りたい気持ちを。

ロシアの侵略を、東日本大震災の「津波」に例え、「復興」「故郷」といった言葉を入れ込み、日本人に訴えかけたのです。さらにゼレンスキー大統領が呼びかけたのは、ロシアを止められない国連の改革です。

ゼレンスキー大統領:
ご覧のように国際機関が機能してくれませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です。新しい予防的なツールを作らなければならないです。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップがそういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思います。

日本がリーダーシップを発揮し、侵略を止める方法の開発に大きな期待を寄せました。そして最後は、日本政府や国民に向けてのメッセージを伝えます。

ゼレンスキー大統領:
ロシアに対する更なる圧力をかけることによって平和を取り戻すことができます。ウクライナが復興し、国際機関の改革を行うことができるようになります。その将来の反戦の連立が出来上がった際に、日本が今と同じようにウクライナと一緒にいらっしゃることを期待しています。
(日本語で)ありがとうございます。ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ。

今回のゼレンスキー大統領の演説は、日本人に向けた表現が随所に見られました。

「津波」「原発」「サリン」「故郷」日本人寄り添う演説

これまで国家元首が演説を行う際には、本会議場でしたが、今回はオンラインということで議員会館の「国際会議室」で行われました。
ゼレンスキー大統領はこれまでも、各国の国民に共感させる言葉選びをしてきました。

イギリスには、第2次世界大戦時にナチスドイツと戦ったチャーチル元首相の発言を引用。
アメリカには、「I have a dream」という有名なキング牧師の言葉。ドイツでは、ベルリンの壁になぞらえました。そんな中、日本人にはどう語りかけたのか見ていきます。1つの大きなキーワードとなったのが、東日本大震災です。

原発、津波、さらには、復興という言葉を出して、「住み慣れた故郷に戻りたい」という気持ちがわかりますよね?と語りかけました。
そして、もう一つは、ロシアが使用することを危惧されている化学兵器で、「サリン」という言葉が使われました。

今回のゼレンスキー大統領の演説の評価を分析している、演説・スピーチ分析家の川上 徹也さんに話を聞きました。

直接的な表現でなくても、日本人には自然と響きやすい言葉だったのではないか。
間接的な言葉で感情に訴え、経済大国である日本に支援などを拠出してもらう狙いがあるのではないか、というふうに分析しています。

さらに、ウクライナ出身の国際政治学者グレンコ・アンドリーさんは、
「要求ではなく連帯を訴えていた」と分析し、他国の演説では武器を送ってくれという言葉があったりしたのですが、今回は連帯を訴えた内容だったのではないかと話しています。

岸田首相「感銘を受けた」追加の人道支援も

そして、岸田総理は今回のゼレンスキー大統領の演説を受け、「感銘を受けた」とコメントし、追加支援の考えを示しました。

岸田文雄首相:
ゼレンスキー大統領が、極めて困難な状況の中で祖国を、そして、ウクライナの国民を強い決意と勇気で守り抜いていこうとする姿、感銘を受けました。我が国としてもロシアに対する更なる制裁、また、これまで表明した1億ドルの人道支援に加えて、追加の人道支援も考えていきたいと思っています。

(「めざまし8」3月24日放送)