地域に伝わる伝承芸能の踊り手がかぶる”お面”を作り続けている職人が、その技術を生かして「ペット彫刻」に取り組んでいる。

写真をもとに…職人の技を生かして

クスノキでかたどられた1匹の犬は、実在するペットを再現したもの。

精巧な作りのペット彫刻
この記事の画像(17枚)

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
いろんな方向からの写真をいただいて、立体としてそっくりになるように作るのがペットの彫刻です

精巧な作りのペット彫刻

手掛けているのは、鹿島市古枝にある木彫工房「杉彫」の5代目・小森恵司さん(41)だ。

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
浮立面を作ってきて私で5代目。明治初期からずっと伝わってきた伝統で、技術を残すためには浮立面だけではなかなか…。需要もそんなに多いものじゃないので、この技術を生かして何か作れないかなって

 

小森さんの本業は、浮立面の職人。佐賀県南西部を中心に伝わる伝承芸能「面浮立」で踊り手がかぶる鬼の面だ。

 

浮立面は魔よけとして家に飾る風習もあり、店には約30種類が並んでいる。

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
面浮立を踊る地域地域で、つけるお面は違うんですよ。今残されているもののまま作る。それが、全く同じものを残すっていう技術なんですよね

店に並ぶ鬼のお面「浮立面」 地域ごとに表情が異なる

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
そういう意味ではペットの彫刻でも、写真にあるものをうつすという作業としては同じなんです

「戻ってきたよう」飼い主たちからの感謝

愛知教育大学・総合造形コースを卒業後、県内の公立中学校で美術教師をしていた小森さん。しかし、本業で浮立面を彫る職人は少なく、このままでは途絶えてしまうという危機感から、15年前に父・恵吾さんに弟子入りした。

小森さんの父で師匠の恵吾さん

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
本業としてできる人というのは、今のところは私と父ともう1人と、3人しかいないので。なんというか、使命感というほどではないんですけど

2017年には工房の代表に就任し、浮立面だけでなく客のさまざまなオーダーに応えてきた。ペット彫刻を始めたきっかけは約2年前、ある客との出会いだった。

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
もう寿命が短いという犬を連れてこられて。「この子もうすぐ逝っちゃうかもしれないから、作ってもらえないですか」と。しばらく作るのに時間がかかって、その間にもう亡くなっちゃって

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
僕が作った犬を見て「生まれ変わってきてくれたみたい」だと

その後、これまでに10匹ほどのペットを彫刻で再現してきた。

フェレットを依頼した東京都のカップル:
2人で大事に飼っていたペットだったので、亡くなってからは悲しい気持ちだったんですけど…。戻ってきたような感覚というか、いつでもそばにいてくれるような。実際に手に乗せている感じだったり、なでられるような感じだったりというのが、すごくリアルで

ノミや彫刻刀は20種類 作品作りに密着

小森さんに、サガテレビ公式キャラクター「ミランバくん」の作成を依頼した。

――難しいですか?

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
頭デカいですよね(笑) この頭のボリュームで立てるかな

サガテレビ公式キャラクター「ミランバくん」

その後、小森さんは作業場へ。

――ここで切り出すんですね。

小森さんの作業場

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
大きな木から、大体の大きさまで切っていく

作業開始から15分後、ミランバくんのシルエットに切り出された。

ここからミランバくんに?

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
もうこれくらいで、あとは手でやっちゃいます

大体の形を切り出したあとは、ノミをたたいて彫る粗削りの作業を行う。“粗”削りとは言っても、見る見るうちにミランバくんの形になっていく。

ミランバくんの形に近づいていく

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
たたきの作業はこれで終わりです。ここから先は、たたきノミじゃなくて彫刻刀で全部手作業。たたかずに

作業の大半を占めるのは、角ばっている木からミランバくんの丸みを出していくというもの。使うノミや彫刻刀は約20種類にものぼる。

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
丸いところを作るときは、こうやって角を落としていく感じ。(刃が)広いやつの方がやりやすい

そして、ついにミランバくんが完成。

――制作期間は?

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
丸三日間くらいかかりました

3日ほどかけミランバくんが完成

木彫工房「杉彫」5代目・小森恵司さん:
職人というのは仕事がないと続けられない。浮立面の仕事がずっとあればいいんでしょうけど、そうでもないので。どんなものが喜んでもらえるかなって考えたら、これから10年後、20年後、その先も、時代に合わせたものを作ってアイデアを出していく。そうすることで、その技術が守られていくと思います

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ
メディア
記事 370