新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向の一方で、後遺症に悩む人の数が増えている。感染者の4人に1人が発症するといわれる「コロナ後遺症」に、どのように向き合っていくべきか。福岡の実態を取材した。

取材班がこの日訪ねたのは、福岡県内の家族。
出迎えてくれたのは小学生の女の子。リビングに横たわっていたのは、2人の子どもを育てるシングルマザー。

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母親:
横になっているのが、多いですね。ひとつ何かしたら休憩入れてという感じでないと。体が、無理をすると息苦しくなる

母親は、2021年5月と2022年1月。二度にわたって新型コロナウイルスに感染。
その後、現在も、けん怠感や脱毛などさまざまな症状が続くコロナ後遺症に苦しめられている。

母親:
(娘を)前みたいに見てあげられない。ご飯も思うように作ってあげられない。すごく申し訳ないと思います。何を失ったかと聞かれたら、一番最初に出てくるのは日常ですね。当たり前が全くひとつも当たり前ではなくなってしまった

「コロナ後遺症」は集中して休むことが大事

県内で新規感染者数の減少傾向が続く一方で、今、コロナ後遺症に悩む人が増えている。

福岡市内でコロナ後遺症の外来を受け付けるクリニック。
治療を受ける50代の女性は、オミクロン株が拡大した1月末に感染が確認された。微熱などの軽症だったが、1カ月半たっても鼻と喉の症状に悩まされている。

院長:
違和感は? 落ち着いてきています?

50代女性:
はい。少しあるくらいで、頭痛がちょっと

院長:
ご飯は食べられていますね

50代女性:
はい

コロナ後遺症で受診する人は、2月初めに比べ、3月の第1週は4倍以上に増えたという。

みらいクリニック 今井一彰 院長:
コロナの後遺症に関しては、感染して1カ月たってから起こってくるので、むしろ感染が落ち着いてから増えてきている状況なので、当院での受診も増えてきています

こうした中、福岡県は2月10日にコロナ後遺症の専用ダイヤルを設置。3月15日時点で800件以上の相談が寄せられている。

これまで200人余りの後遺症患者を診てきた今井院長は、まだわからないことが多いとしたうえで、「早めの受診がカギ」になると話す。

みらいクリニック 今井一彰 院長:
ずいぶんとわかるようになってきました。上咽頭の部分の炎症なので、それをできるだけ速やかに取ることができたら回復も早いですね

国立国際医療研究センターが2021年までに感染した457人を対象にした調査では、感染から半年後に何らかの症状が続いていると答えた人が26.3%にのぼり、実に4人に1人が後遺症に悩まされていることがわかった。

今井院長によると、コロナ後遺症は集中して休むことが大事だという。

みらいクリニック 今井一彰・院長:
日常生活、自分自身がきついのは根性がないからだとかいうふうに、自分を責めちゃうところがあるんです。そうではなく病気のせいなので、やはり治っていくには時間とエネルギーがかかるわけですから、しっかりと休んでいただく。それを徹底していただきたいと思います

子どもに作る料理の味がわからない…

一方で、症状の改善まで時間がかかることから、仕事にも支障をきたしている人も少なくない。

院長:
やっぱり途中起きちゃいますよね? 寝れるの?

母親:
寝るのが、やっぱりなかなか…早く寝ても2時間ぐらいで起きちゃって

けん怠感などの後遺症に苦しんでいたシングルマザーの女性もその1人だ。

院長:
子育てもあるから、なかなか休めないんだよね

母親:
1日、丸々休めるっていうのはないから

後遺症に苦しみながら子育てをするシングルマザー。今、一番悩んでいる症状が…

母親:
おいしい?

娘:
甘い

母親:
味わかんない

娘:
うーん

母親:
困ったね

2021年5月の感染後に発症した「味覚障害」が続いている。甘い、辛いの味が一切しないため、子どもに作る料理の味もわからないのだ。

母親:
1回、下の子にオムライス作って甘すぎると言われたとき…ちょっと泣いちゃった。そしたら世界一ママの料理はおいしいよと言ってくれて、完食してくれたこの子には申し訳ないなと

コロナ後遺症に苦しむ中、支えとなっているのは子どもたちの存在。今、子どもたちの願いは…

手紙:
ママの病気や味が治りますように

「後遺症として対策支援を別で考えてほしい」

しかし、長引くコロナ後遺症に、経済的に苦しい状況が続いている。

母親:
ここが学資保険を解約して戻ってきた分ですね。今、生きていく中でどうしてもお金が必要なので

2021年5月、コロナ感染の影響で飲食関係の仕事を退職。子どものためにコツコツ貯めてきた学資保険を解約し、生活費に充てざるを得ない状況だ。

母親:
今、(コロナに)なっている人たちの支援も大事だと思うけど、後遺症だって同じくらい悩んでいて。本当に悩んでいる人がいることをわかってほしい。ちゃんと後遺症として対策支援を別で考えてほしい

新型コロナの流行長期化にともない、後遺症を訴える人が増える中、新たな支援体制の整備が急がれる。

(テレビ西日本)

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