ほぼ毎日、里山を登る73歳の男性。眺めが評判の長野県の辰野町と塩尻市の境にある霧訪山。
男性は10年以上にわたって、既に1万回以上、登頂している。その健脚ぶりと登り続ける理由を取材した。
登頂回数は1万回以上
この記事の画像(17枚)辰野町と塩尻市の境にある霧訪山。標高は1305メートルで、雪が無ければ保育園の園児でも登ることができる里山だ。
7日、午前7時。
手塚健司さん(73):
きょうは雲もなくて最高じゃないかな
軽アイゼンをして登り始めた辰野町の手塚健司さん(73)。2010年から、冠婚葬祭や通院の日を除き、雨の日も、雪の日も霧訪山に登り続けている。
記者:
手塚さん速いです、どんどん進んでいきます
この日、登ったのは3つあるコースの内、最も勾配が急で所要1時間の「かっとりコース」だ。
30分ほどで展望ポイントになっている山城のあった場所へ。
手塚健司さん(73):
ここが展望台になっていて、あそこが全部(辰野の)小野の町
取材班に眺めを紹介してくれた手塚さんだが、普段は…
手塚健司さん(73):
(景色は)見ないね。何しろ、頂上目指していくもので…
妻が亡くなった後に登山を始めた
地元の部品メーカーに勤めていた手塚さん。妻・妙子さんと2人で暮らしてきたが、2010年に病気で妙子さんに先立たれた。
登山を始めたのはそのころだ。
手塚健司さん(73):
(妻が)まだ60ちょっとで逝っちゃったもので、なんていうか、悲しみがあったね。亡くなってその分、自分は健康でいなければと体力づくりで今、歩いている
既に退職していて1人暮らし。時間は好きなように使えた。ほぼ毎日、多いときは1日に6回登ったことも。2年ほどで90キロ以上あった体重は、70キロほどになった。
2013年1月1日から登った回数をカレンダーに書きとめるようにしたところ、2017年6月27日には5000回、そして2021年12月11日、ついに1万回を達成!
手塚健司さん(73):
はい、到着
1時間20分ほどで霧訪山の山頂に到着した。
手塚健司さん(73):
(登頂)1万218回
記者:
景色はどうですか?
手塚健司さん(73):
きょうはいいね。やっぱし槍ヶ岳が見えるといいよね
記者:
きょうの景色は何番目?
手塚健司さん(73):
10番目には入るかな
この日は青空が広がり、山頂から360度、信州が誇る山々を見渡すことができた。
北アルプス、八ヶ岳連峰、御嶽山も。
実はこの眺めの良さから、霧訪山は県山岳総合センターが2021年11月に実施した「冬の里山総選挙」で1位を獲得している。この景色が手塚さんが登り続ける理由の一つだ。
手塚健司さん(73):
霧訪山っていう響きにひかれて、(霧で)何も見えなくても頂上へ行くと落ち着いたような感じがして、雲海が見えるときもあって、そういうのもいい
しばし、眺めを楽しんだら下山。足取りも軽く「1回目」の登山を終えた。
手塚健司さん(73):
ご飯を食べてきてから、もう1回登る予定。
(Q.疲れはない?)
大丈夫だと思います
この日、2回目の登頂に
昼食を食べ終えたら「2回目」の準備。再び山頂を目指す手塚さん。足の運びは一定。疲れは見えない。
2回目も1時間ほどで山頂へ。「先客」の登山者が眺めを楽しんでいた。
手塚健司さん(73):
(登頂は)1万219回
東京から来た登山者:
え?何回目?
手塚健司さん(73):
1万219回
東京から来た登山者:
いやー、すごいですね、お元気で達者ですね
今の目標は1万1111回
妻を亡くしてから始めた霧訪山登山。
手塚健司さん(73):
生活の一部みたいなもんだね、(朝起きたら)きょうは何回登れるかなとか。あと2、3年はいけるんじゃないかな。とりあえず今(の目標)は1万1111回。回数を決めちゃったので他(の山)に行ってる暇がない
季節は冬から春へ。
霧訪山は日々、違った表情・景色を見せながら、手塚さんのチャレンジを迎え入れている。
(長野放送)