"金継ぎ"という匠の技がある。壊れた器を直すことで人と人を結び、ものを大切にする心の輪もつなぎ合わせる。

日本の伝統的技法で修繕

黒い器の中に光る一筋の金色の線。老舗企業が取り組む器の持続可能な取り組みだ。

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京橋白木・竹下茂雄代表:
100年間使える頑丈な器を作るのではなくて、器を100年間使い続けられる文化を作っていこうと。

東京都内にある和食居酒屋「オ山ノ活惚レ」。
店長が段ボールから取り出したのは、営業の途中で割れたり欠けたりしてしまった器。

「オ山ノ活惚レ」・松永大輝店長:
ひと月でこのくらいは出てしまう。気をつけていてもどうしても欠けちゃったり、手を滑らせて割れてしまうことがあるので。

これらを引き取っているのは、飲食店への器の販売などを行っている創業120年以上の老舗企業「京橋白木」。

引き取った器は、職人の手によって "金継ぎ"と呼ばれる日本の伝統的な技法で修繕していく。
行っているのは、接着剤やパテで形を整え、合成の漆と真ちゅう粉と呼ばれる金粉を使った「簡易金継ぎ」と呼ばれるもの。

割れて真っ二つだった器は、金継ぎを施され、新たな顔を持つ器として生まれ変わった。

この金継ぎの事業を始めたきっかけは、新型コロナウイルスの影響で飲食店などへの器の販売が減り、取引先を回っていたときに見た光景だった。

"器を直す文化" を広める

京橋白木・竹下茂雄代表:
僕たちが飲食店に器を納品に伺ったときに、仕込みの途中で割れた器がごみ箱に捨てられているのを見てすごくそれでショックを受けて、今までは販売したらそれでおしまいだったが、売った先の器というのを見落としていたというか、そこで、これなんとかしないといけないなと。

京橋白木は、"器を直す文化"を広めるため、新型コロナの影響を受けた飲食店やホテル10社に金継ぎを無償で提供。
この無償の金継ぎを利用した飲食店は、来店客への思わぬアピールにつながったという。

「オ山ノ活惚レ」・松永大輝店長:
金継ぎした器の方が、お客さまが店にも好感を持ってもらえるというか、ものを大事にしているんだなという思いはすごく感じます。

また、器の修繕だけでなく、定期的に金継ぎ教室を開催し、それぞれの飲食店で器を直せるように取り組んでいる。

京橋白木・竹下茂雄代表:
金継ぎで割れた器も長いこと使えるというふうになれば、国産の手間がかかってちょっと高い器も選んでもらえるようになるし、作家さんが時間をかけて作ったものが安さだけじゃなくてちゃんと価値が伝わって、購入の選択肢にあがってくれたら、国内の器の生産量ってどんどん減っているので、そういった流通にも貢献できるんじゃないかなと思っています。

(「Live News α」3月9日放送分)