2022年2月、岩手・宮古市では、県外の高校生を対象にした、東日本大震災の教訓を学ぶイベントが行われた。
この中で、さまざまな葛藤を乗り越え成長してきた男性が語り部として参加し、「今だから話せること」を次の世代に伝えた。

震災の経験をオンラインで若者へ

2月6日、オンラインで行われた、東京の高校生が東日本大震災の教訓を学ぶイベント。

リモートで東京の高校生と交流
リモートで東京の高校生と交流
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会社が被災した花坂雄大さん:
ここは、住宅のがれきで車がどうこう(走れる)という状態じゃなかった。3月12日の時点では、がれきが山のようになっていて

震災当時の様子
震災当時の様子

例年、高校生は被災3県を訪問して被災者から直接話を聞いていたが、2022年は新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの開催となった。
語り部として参加したのは、震災のさまざまな経験を語り継ぐ市内の人たちで、その中に、当時の経験を赤裸々に語る人がいた。

男子高校生:
避難所生活で、思春期ならではの大変だったことってありますか

宮古市で被災・村井旬さん:
当時の彼女がいたが、1週間から2週間お風呂が入れない状況で、会いたくない。髪ボサボサだし、服も着替えてないし、臭い大丈夫かなとか、会いづらかった

思春期ならではのこんな悩みも
思春期ならではのこんな悩みも

宮古市田老地区出身の村井旬さん(25)は、被災地の復興に貢献しようと、高校生の時から地域課題を考える取り組みに参加し、街づくりを学ぶため山形の大学に進学した。
しかし、視野が広がるにつれ、自分がやりたいことが本当にこれでいいのか考えるようになり、大学を中退した。
その時の葛藤を、当時の自分と同じ世代に伝えようと参加した。

宮古市で被災・村井旬さん:
大学を辞めた時点で、街づくりとか宮古への思い、自分が語ってきたものが「うそでした」みたいな否定した気持ちになった。この悩みって、震災を経験した若者のリアルな悩み。すごくたくさんそういうのを聞くし、実際連絡が取れなくなった友達もいた。それも一つの被災から10年のリアルとして伝えたい

村井さんは自分が経験した葛藤を伝えようと参加
村井さんは自分が経験した葛藤を伝えようと参加

村井さんは、新しい目標を見つけるために1年ほど自分探しの旅に出掛けた。
その時の経験をもとに、被災地の若者の誰しもが経験した「心の変化」を伝える。

宮古市で被災・村井旬さん:
「地元のために帰ってきます」って言ったりとか、「これからも復興のために力になりたいです」って言ったりとか、というのが、ちょっとずつ足かせになっていった人はいる。別に(周りは)そんなに期待しているわけじゃない。悪いことも吐いていいし、良いことだけ言わなくてもいい

現在村井さんは、大学中退後の旅で出会ったゲストハウスに魅力を感じ、市内で運営をしている。
人と人をつなぐことが自分の役割だと感じているが、気負いはない。

宮古市で被災・村井旬さん:
肩肘張らずに、「宮古を出て行ってもいい」「ずっといるか分からない」と公言している。これからどこに住むかは自分自身、自分次第なので

「自分の人生を大切に」

村井さんは生徒たちに対し、「被災地のため」とがんばるだけでなく、「自分の人生を大切」にしながら、息の長い支援を続けてほしいと話す。
高校生にとって、年の近い村井さんの話は、今後の復興支援を深く考えるきっかけになったようだった。

村井さんが高校生に伝えたかったこと
村井さんが高校生に伝えたかったこと

都内の高校生からは、「復興支援はとてもいいことですが、重圧になっちゃうこともあるということを今回初めて学んだ」「つらいことの捉え方をどう次に一歩踏み出すか、という部分。これは震災だけじゃなく、今後自分の中に生かしていきたい」などの声が聞かれた。

震災から間もなく11年、この月日で成長した若者たちが「ありのままの言葉」で次の世代に伝える活動が始まっている。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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