食べられるのに廃棄されてしまう食品、「食品ロス」。農林水産省の報告では、日本でも年間で約570万トン(2019年度の推計値)のロスが出ているという。

食品ロスの量とその内訳(出典:農林水産省)
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この問題に関して、長野県に注目してみたい。

実は長野県は、環境省が公表している「1人1日あたりのごみ排出量」の少なさで、2014年度~2019年度の6年連続で日本一。2019年度も全国平均の918グラムに対し、816グラムしかごみを出していない。

1人1日あたりのごみ排出量が少ない都道府県(出典:長野県)

そんな長野県では、食品ロスを防ぐための取り組みも進んでいて、ごみ排出量の削減にも一役買っているようだ。どんなことが行われているのだろう。

宴会での食べ残しを防ぐ「30・10運動」

親しまれている取り組みの一つが「残さず食べよう!30・10運動」。宴会での料理の食べ残しを防ぐための簡単なルールで、最初の30分と最後の10分を自席で食事に集中しようというものだ。宴会料理は、7分の1が食べ残しとして捨てられているのだそう。

大勢が集まる場ではコミュニケーションに意識が向きがちだが、最初の30分と最後の10分はお酌も最低限に。食べきることでお店もお客も気持ちのいい、集まりにする狙いがある。

食べよう!30・10運動(出典:長野県)

このほか、毎月30日を「冷蔵庫クリーンアップデー」として、冷蔵庫の中にある食材を消費期限・賞味期限が近いものから使うこと、毎月10日を「もったいないクッキングデー」として、捨てられる野菜の皮や茎などを使い、エコな料理をすることも呼びかけている。

家庭への呼びかけもしている(出典:長野県)

“ロス予備軍”の食品も有効活用。生活困窮者への支援にも

県内の小売事業者とは、連携して「信州発もったいないキャンペーン」も実施。こちらはPRポスター掲載や店内放送で「消費期限及び賞味期限間近な食品の購入」を呼び掛けるものだ。「すぐ食べるなら手前からとってみる。『もったいない』が食品ロスをへらします」をキャッチコピーに、“てまえどり”の大切さを伝えている。

県のPRキャラクター「アルクマ」も呼びかけ(出典:長野県)

また「フードバンク」にも取り組んでいる。これは企業や団体、家庭などから未利用食品の寄付を受け、困窮家庭やこども食堂などに提供する食料循環活動だ。食品ロスを防ぎ、生活困窮者への支援にもつなげる狙いがある。

フードバンクの流れ(出典:長野県)

さらに長野県では、食品ロス削減に取り組む飲食店、宿泊施設、小売店を協力店として登録し、ごみ減量情報発信サイト「信州ごみげんねっと」で紹介することで、取り組みを後押ししている。

食品ロスには“3つの要因”…家庭でできることは?

このようにいろいろな観点から、県として食品ロスを防ぐ活動を進めている。しかし自治体だけでなく個人個人の意識も重要だろう。我々もできる家庭での取り組みについて長野県の担当者に聞いた。


――長野県はなぜ、ごみ排出量の削減を進めている?

長野県は平成25年度(2013年度)の1人1日当たりのごみ排出量が847グラム。全国2位の少なさで、もう少し頑張れば日本一という状況でした。そこで職員の政策提案により、ごみ排出量の800グラム以下を目指す“チャレンジ800”という事業がスタートしました。

具体的には、マイバッグやマイ箸の持参など職員の自主的な取り組み、ごみ減量を県民に呼びかける啓発活動などを行ってきました。地域の実情に応じた減量に取り組むため、各地域振興局に実行チームを設置し、年度ごとの目標を掲げてできることから取り組んでいます。

長野県の家庭から出た「食品ロス」(出典:長野県)

――食品ロスを減らすために家庭でできることは?

食品ロスの要因は大きく3つあります。(1)調理の際に食べられる部分を必要以上に取り除いてしまった。(2)提供された料理の食べ残し。(3)購入した食品を手つかずで捨てること。こうしたロスを出さないようにすることが大切だと思います。

家庭ができることは、野菜や果物の皮などは必要以上に切り取らない。食べられるものは皮ごと調理することでしょうか。買い物の前に冷蔵庫を見て“ほしいものリスト”を作る。料理は食べきれる量を作る、残った際はリメイクレシピで食べきることでもロスは減ります。また、生ごみを捨てる際にきゅっと一絞りの「水切り」をすることも重要です。

冷蔵庫のチェックでも「食品ロス」につながる(画像は長野県の啓発ポスターより一部抜粋)

――日常生活で心がけられることはある?

消費期限と賞味期限の理解もあると思います。消費期限は安全に食べられる期限の目安、賞味期限は美味しく食べられる期限の目安です。期限の違いを理解しながら食品を無駄なく使っていただければと思います。

消費期限と賞味期限の違い(出典:長野県)

生ごみも扱い方次第で「堆肥」にできる

――長野県でのごみ排出量が少ない地域、独自の取り組みはある?

高原野菜が特産の川上村や南牧村では、生ごみの回収をしておらず、コンポストなどを活用して堆肥化している家庭が多いため、ごみ排出量が少ない地域になります。まずは食品ロスを出さないことが大切ですが、それでも出てしまったごみについて、こうした取り組みもできることの一例だとは思います。

ダンボールを使ったコンポストの作り方(出典:長野県)

――生ごみを減らすことは生活にどうつながる?

気候変動への影響があると思います。2019年の東日本台風では長野県でも被害が出ましたが、地球温暖化による影響ともいわれています。生ごみは水分を含むため、焼却にエネルギーを要し、焼却した際に発生する温室効果ガスが地球温暖化を進めてしまいます。生ごみを含むごみの削減は地球温暖化の防止につながり、ひいては自然災害の抑止にもつながると思います。


――食品ロス削減に関連して呼びかけたいことは?

食品ロスを削減することは、ごみを燃やす際に発生する温室効果ガスの排出を減らし、地球温暖化の防止につながるとともに、SDGsにも寄与する取組みです。持続可能な社会の実現に向け、できることから始めてみてください。


食材は無駄なく使う。食事は食べきる。賞味期限と消費期限を正しく理解する。当たり前のことかもしれないが、実践するのは難しかったりもする。食品ロスを減らすのは、私たち一人一人の「もったいない」という気持ちなのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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