卒業式シーズンとなり、児童・生徒がリコーダーの演奏で花を添える場面も多いことだろう。しかしコロナ禍では、息を吹き込むリコーダーは飛沫を拡散してしまう懸念がある。
そのような中で今、全国の小中学校からリコーダー演奏時の飛沫拡散を防ぐ商品の問い合わせが増えているという。それが水泳用品メーカーの株式会社フットマークが販売する「リコーダー用カバー」だ。
飛沫が外に出にくい超撥水加工の生地製カバーで、リコーダーに装着することで、飛沫の拡散を気にせず演奏できるというのだ。
形状は筒状と袋状の二つの生地が1本のヒモでつながっており、使い方は筒状の方は音が鳴る部位の「ラビューム（窓）」、そして袋状の布を唾液がたれる「足部管」にそれぞれ穴を覆うように装着する。
装着することで、飛沫量をラビューム（窓）からは約94％、足部管からは約84％をカットし、リコーダー全体で約66％を削減する効果があるという。
伸縮性のある水着素材を使用しているため着脱がしやすく、また、繰り返し洗濯もできる。ちなみにカラーはノーコン（紺）のみとなっている。
価格はソプラノ用が880円、アルト用は990円（どちらも税込み）で、2021年11月からフットマークオンラインショップや学校指定小売店で販売している。
装着で重さや視界を阻害することはない
ここで気になるのは発売開始から約4カ月経た今、問い合わせが急増した理由だろう。やはり、卒業式シーズンが関係しているのだろうか？ また、このカバーを装着することで音に影響はないのだろうか？
フットマーク・開発担当者の石川稔介さんに話を聞いた。
ーーリコーダー用カバーを装着して吹く時に違和感はないの？
リコーダー用カバーは布製でリコーダーを部分的に覆うだけの簡単に装着できる商品となり、装着してリコーダーを吹いても重さや視界を阻害することはございません。また、音は普段通りに息を吹き込んでいただければよい商品となっています。
ーーカバーを装着することでの音への影響は大丈夫？
自社で行った音の響き調査では、カバー無しが664デシベルに対し、カバーありは639デシベルと変化はほぼありませんでした。
フットマークでは同社のYouTubeで「リコーダー用カバー」を装着した音の比較を動画で公開している。ドレミファソと実際にリコーダーを演奏しているのだが、「リコーダー用カバー」装着なし・あり、どちらを聞いても音の違いはほぼ感じられなかった。
ーー呼吸の湿気でカバーが湿ったり、リコーダーの装着部に水滴が付いたりはしない？
カバーはリコーダー本体同様に呼気により湿ります。衛生面からも使用時間に関わらず1回ご使用いただいたら必ず手洗いしていただくことをお願いしたいです。
ーーこまめな手入れが必要なの？
ご使用後は必ず手洗いで洗濯してください。洗濯後は直射日光を避けて陰干ししてください。
ーー水着メーカーの水着素材だからこそのメリットは？
採用した水着素材は伸縮性があるため着脱のしやすさが特長です。また超撥水加工を施すことで、より飛沫が外に出にくい効果が期待できます。繰り返し洗濯もできる衛生面にも配慮しました。
先生方のヒアリングがきっかけで誕生
ーーそもそも、なぜ水着メーカーがリコーダー用カバーを作ったの？
弊社はもともと水泳用品などの学校用品を多く作っております。学校現場でのお困りごとをお聞きし、開発したひとつがリコーダー用カバーです。
4月に発売した超撥水加工を施した水着素材を利用したホイッスルカバーの開発をきっかけに、学校生活での感染対策を必要とする場面についてのヒアリングをしてきました。その中である先生の声から、コロナ禍での音楽授業でリコーダーの使用ができない状況であることを知りました。また、吹くことで飛沫が拡散される恐れもあるため、吹かずに指を押さえるだけの練習をするなど苦慮されている実態もあり、リコーダー用カバーの開発に着手することになりました。
ーー発売開始から約4カ月経た今、問い合わせが急増しているのは？
現時点（3月4日時点）で全国の小学校から120校お問合せいただいています。秋ころから演奏会や謝恩会で使用したいという問い合わせが徐々に増えてきていました。
日々の音楽授業だけでなくイベントなどでお役に立てる可能性も感じており、2月に学校へ直接ご案内をお送りしたところ、お問い合わせが一気に急増しました。「卒業式をどうしようか悩んでいた」「指だけで授業を行っている」「一度も使わないまま終わるわけにはいかない」など苦労されているお声が多く寄せられました。
ーーそういった反響に対してはどう感じている？
学校現場でのお困り事をリコーダー用カバーで少しでも解決出来るのであれば、もっと全国の先生方や親御さんにこの商品を知っていただきたいです。そして、小学校でのソプラノリコーダー用カバーの反響が予想外にありましたので、同様に、中学校で主に使用しているアルトリコーダー用カバーについても、きっとお役に立てるのではないかと考えています。
感染予防として3回目のワクチン接種や5歳から11歳の子どもを対象とした接種が始まっている現在。まださまざまな場面で感染対策を意識していかなければならないが、自粛するだけでなく、このような商品の活用を検討してみても良さそうだ。
