2月28日の日本時間午後8時から行われた、ロシアとウクライナの“停戦協議”。ロシアの軍事侵攻が続く中、ウクライナとロシアの代表団が初めて直接協議しましたが、双方の主張には隔たりがあり結論はでませんでした。

ロシアに対して最大限の“制裁措置”を…

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停戦協議の開催地はベラルーシとウクライナの国境近くであるゴメリ。元々ウクライナ側はポーランドでの開催を望んでいましたが、結果的に親ロシアのベラルーシで行われました。協議は約5時間及びましたが、結論は出ませんでした。

ウクライナ側は「難しい交渉だった」、ロシア側は「共通の考えをいくつか見つけた」とコメント。ただ、結論は出なかったと言っていますが、そもそもお互いの主張を洗い出す予定で、結論を出す予定ではなかったという報道もあります。そのような中で、数日以内に改めて協議をするということで合意をしました。次回はポーランドとベラルーシの国境付近で行うということで、この数日以内で侵攻が進んでいく可能性も十分にあります。

停戦協議の双方の主張ですが、ロシア側の主張はウクライナの「非武装化」、さらにはNATOに加盟しない「中立化」を求めています。一方、ウクライナ側は速やかな停戦、ロシア軍の全土からの撤退を求めている。こういった双方の主張となりました。

今回の停戦協議についてウクライナ出身で国際政治学者のグレンコ・アンドリーさんに話を聞きました。

ウクライナ出身 国際政治学者 グレンコ・アンドリー氏:
今回の協議はあくまで1回目なので、結果が出るはずもありませんでした。そもそもロシアの要求があまりにも主権侵害に繋がるものだから、ウクライナが飲むわけないということは分かりきっていたことなので、案の定、結果が出ずに終わったんですね。これ以上の意味は今回の合意はないと思います。なので、おそらくですけどこれから数日後にもう1回やるということなんですが、それまでにロシアはこの数日間で戦果をおさめて、ロシア軍が有利な状態で次の交渉を行って譲歩を引き出すという作戦をとるのではないかと思います。
結局、電撃戦は失敗したので、戦争はだんだん長期化する見込みで、それにプーチン大統領が非常に怒っているのではないかなと思います。核の脅しも含めてですが、怒りにかられて、彼は地上部隊も含めて大量に軍事力を投入して、都市の制圧にいく可能性は非常に高いと思います。その場合は、大規模市街戦になるので非常に多くの民間の犠牲者が出ることに繋がるので、そうなる前に国際社会はウクライナに対してなるべく強力な自衛手段を与えることと、ロシアに対して最大限の制裁措置をこれからも積極的に実施することが、非常に重要になると思います。

さらに、ウクライナはEUへの加盟申請を正式に署名しました。そのような中、再協議を行うことになりますが影響を与えるのでしょうか。

ウクライナ“EU加盟”申請 プーチン“核ちらつかせ”

フジテレビ報道解説委員 風間晋:
まず、わたしは停戦協議が数日後に行うというのがすぐに情報として出てきたことを、なぜ数日後なのか考えていました。そこに、アメリカ国防総省の戦況の最新分析として確かにロシアの進軍は遅れてはいるんだけれども、あと数日で首都キエフを包囲するという分析が出てきているんですね。そこで「数日後」ということが繋がって、わたしは納得できたんですけれども。つまり、ロシア側は首都キエフを包囲した状況に入ったところで、改めて停戦交渉を行おうと、そういう意図なんだろうと思います。
EUに関してですけれども、ウクライナとしては頼りはアメリカなわけですよね。そこでヨーロッパ、アメリカの一体性というのを更に強めたいと。特にEUですから、ヨーロッパではあるんですけれども。そういう意図があって、ここで加盟申請を行ったのだと思いますけれども。ただ、EUにはきちんとした加盟手続きがあるんですよ。様々な審査や条件があったり、時間がかかる手続きなんですね。それを尚且つEUが特例的に手続きをある意味すっ飛ばして、ウクライナを受け入れるという判断をするのかというところがとても大きなポイントだと思いますね。

そして、プーチン大統領が抑止力として言及している核をめぐる動きについてもみていきます。ベラルーシの動きです。

ベラルーシに対して「ロシアを支援するためウクライナへの派兵を準備している」とワシントン・ポスト紙が報じています。さらに、国民投票によって憲法の改正が承認され、「核兵器を持たず中立を保つ」という条項が削除されました。つまり、ロシアの核兵器が配備されることが憲法上認められたことになります。

そのような中で、ロシアの核弾頭数をみていくと、6255。これは全世界の核兵器のうち約48%、およそ半数の核を持っています。

さらに、プーチン大統領は「核を含む抑止力部隊の特別任務への引き上げを命令」しました。さらに、この核戦力部隊というのが戦闘態勢に入ったということで、何度も核をちらつかせているところが見えてくるわけです。

ベラルーシの憲法改正や、プーチン大統領の動きについて軍事ジャーナリストの井上和彦さんに話を聞きました。

“ロシアに引きずられている” ベラルーシが派兵を準備

軍事ジャーナリスト 井上和彦さん:
まず、前提としてプーチン大統領が何度も核兵器をちらつかせる。普通は軍事的に劣勢になった時に、「我々は核兵器を持っているから、もし攻撃を受けたらこの核兵器で反撃するぞ」と、そういう抑止力として使うものです。ところが、ウクライナが大軍をもってロシアに攻めるわけでもない、NATO軍がウクライナに併合して加勢するわけでもないのに、核をちらつかせると。これ異常なことですよね。いまで言えば経済制裁に対して核を持って対抗するという姿勢な訳です。

ベラルーシはロシアの核を配備しなければならないような状況をかと言えば、決してそうではありません。ある意味ロシアに引きずられているというような形ということは見え見えな訳ですよね。実はこの憲法改正の時に、ルカシェンコ大統領が1994年に大統領になってから5期目をむかえて、今回の憲法改正でさらに2035年まで大統領になれるという体制を維持する。そうなってくると41年間も大統領になるというのはある意味皇帝ですよね。これは民主国家とは言いがたい。
だけれども、この立場を維持するのに、やはり後ろ盾にロシアの力というものが彼にとっては必要であるということもあり、ロシアの核を受け入れると。ロシアにとっては西側に対する牽制であるけれども、この問題がルカシェンコ大統領とプーチン大統領の2トップでの決定であって、私が入手している情報では、ウクライナの国民は「こんなの何の為の戦争なんだ」と。ましてやベラルーシ軍がウクライナに侵攻すると。ベラルーシの中にウクライナやポーランドの人々が沢山住んでいて元々は1つの国家であったところで、「何の大義を持って戦闘しなければならないのか」という意識を持っておられると。むしろ経済制裁の対象の国になってしまうということ。ある意味では政権側と民衆側の気持ちがものすごく離れていくということになりますよね。政権が危なくなってきますよね。

「めざまし8 3月1日放送」