数時間ごとに変わる戦況ですが、アメリカの国防総省はウクライナの抵抗によって、ロシア軍の勢いが鈍っているとの分析を示しました。
現在のロシア軍による制圧状況を見ていきます。
薄く赤で塗られているのが、ロシアによって制圧されたと言われている地域です。
これはアメリカにある、防衛と外交に関する調査・分析する研究所ISWが分析したデータとなっています。

首都キエフや第二の都市ハリコフの近く、さらには第三の都市オデッサ付近でも赤い制圧状況が伸びているとしています。
しかし、キエフとハリコフ付近に関しては、全体的な制圧はされていない模様です。
戦闘状況に関しては各地で市街戦が勃発。
さらに、ベラルーシのブレストにロシア軍が入ってきているという情報もあります。
中でも首都キエフの攻防戦は激化しています。

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キエフでは、銃撃戦などが多く報じられるようになり、軍事ジャーナリストの井上和彦さんによると、「情勢が何度か変わったことを意味する」といいます。
キエフ陥落間近か、という報道もありますが、ウクライナ軍が想像以上に好戦したからということなのでしょうか。現在の攻防戦について話を聞きました。

軍事力強大も「ロシア軍苦戦」…背景にウクライナ国民の“強い意志”

軍事ジャーナリスト 井上和彦さん:
24日の開戦時には、ロシアが一方的に弾道ミサイルや巡航ミサイルなどで攻撃をかけてきた。それにより、ロシアが優勢な立場に立ったというふうに思われましたが、当然ながら14~15万におよぶウクライナ軍の地上軍は温存されているわけで、これを全部なしにするというのは不可能です

軍事ジャーナリスト 井上和彦さん:
そんな中で、地上戦に引き込まれるロシア軍ですが、頼みとしている戦車部隊を大々的に展開できないんです。
しかも、ウクライナ軍は当然ながらどの地域にどういう川があって、どういう土地になっているかというのを全部わかっています。
地図を見ながら作戦を進めるロシア軍と、地図を見なくても頭の中に入っているウクライナ軍とでは当然ながら戦い方が違います。
生まれ故郷と生まれ故郷でない異郷の地である戦いとでは、大きく変わってきます。
ウクライナ軍は、ロシア軍がどのような形で入ってくるのかということを予想して、特に首都キエフというのは国境から90キロぐらいのところですから、どれぐらいのスピードで来るのかというのは予想していた。
ロシアにとっては一番の障害であったドニエプル川というのが真ん中に流れていますけど、東側から入っても、ドニエプル川を越えることができない。だからロシア軍は、北から入って首都キエフを包囲する。
要するに、兵糧攻めのような形で首都キエフを包囲して戦いに臨もうとしている。
しかし、市街戦というのは地上の大平原での戦いとは違います。
けさ新しい情報が入りまして、難民もポーランドの国境へ向かっているんですが、ポーランド在住のウクライナ人もポーランドの国境を越えて志願兵としてウクライナに入っている。徹底抗戦で自分たちも戦うという意志の共鳴で入っている。
さらに、銃をもらうために住民が列をなしている。
こういった状況でウクライナ人が「どんなことがあっても国を占領されない」意志があります。
さらには、ロシアがチェチェン共和国で対策に当たっていた対テロ特殊部隊をどうやらウクライナに投入していると。
つまり、それだけロシアが苦戦しているという現れです

首都キエフが陥落しても…

軍事ジャーナリスト 井上和彦さん:
キエフという首都が陥落する、ロシア軍に占領されることが例え起こったとしても、これは象徴的な意味でしかないです。
例えば、東西に分かれて大規模な世界戦争のような形になって首都が落ちるというのは、確かに象徴的な部分はありますが、結論から申し上げてゼレンスキー大統領がウクライナの降伏を宣言しないかぎり、戦いは終わらない。
ウクライナ人の方々の祖国を守るという決意が残り続けるかぎり、ウクライナは降伏をしない。つまり、この戦いは終わらないと。
しかもそのバックには、NATO諸国がウクライナを支援している。
もっと言えば、世界中を味方につけたウクライナの戦い方というのは、できるだけ早く終息をさせたいロシアとは、かなり精神的にも違ってくると思います

(「めざまし8」 2月28日放送)